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 なんの行動もとることができなくなって、固まっている小唄を見て、その女の人はくすっと笑った。女の人が笑うと、ただそれだけで世界に光が灯された。魔法が解けたようだった。いや、もしかしたらこの瞬間に魔法にかかったのかもしれなかった。とにかく小唄の体はその瞬間、金縛りから解放されて、意思と熱を取り戻し、その結果、やがて自分の顔が熱くほてり、色が赤くなることを小唄は感じた。

 女の人は小唄の目をじっと見つめた。小唄もその女の人の顔をじっと見つめ返した。失礼だとは思ったのだけど、どうしても目をそらすことができなかった。女の人は小唄の言葉を待っているように見えた。だけど小唄は言葉を話せなかった。

 客車の天井にある小さなランプの明かりが点滅した。その光に女の人の白い顔が照らされていた。女の人の足が一歩、前に出た。それからもう一歩、もう一歩。女の人は小唄の目の前まで移動した。小唄はなにもすることができなかった。その女の人から逃れることができなかった。心臓がとてもどきどきしていた。

「あなたはどこから来たの?」と女の人が言った。小唄は女の人になにも言葉を返すことができなかった。緊張している小唄を見て女の人はくすっと小さく笑った。

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