就寝前の雑多な数百文字
@rudia
1枚目:柔らかな真実
《Aさんの場合》
メッセージ送信ボタンを押す手が小さく震えはじめる。
これを押せば今のダラダラとした関係性は解消でき、自分の心を押し殺しながらの日々は終わり、次の一歩に踏み出せるはずだ。
しかし、、、、
いやはや、どうしたものか。。。
「やっぱり私たち別れましょう。会いたいのは私も一緒。でも今、会ってしまうときっと恋しくなって別れることができないもの。。。こんなメッセージでのお別れは嫌だったんだけど、やっぱりこれが一番の選択だと思うの。」
※※※※本メッセージはTrana解析対象メッセージになりました。メッセージを解析中です、しばらくお待ちください。。。。。
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<Trana解析結果:「会いたい」「恋しくなって別れることができない」は97%の確率で嘘です>
<Trana解析結果から推測される本心を追加いたします>
「もう、会う気はありません、ほかに好きな人ができたから。お願い、もう別れてください」
さすがに、このメッセージを送るには気がひける。
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ここ数十年のテクノロジーの進化は目まぐるしく、SNSやメッセージを通じた民間サービスの授受、各種手続き、役所の手続き、裁判での証言など、あらゆることがどこにいながらでもできるようになってきた。
また、ネット上で、かねてから問題になっていた電磁的記録の虚偽、これを見分けるAIの発展も凄まじく、重要な局面と判断されたメッセージには送信前に己の本心が追記されることが義務付けられた。解析は、入力スピード、環境、ライフサインや、表情の読み取りなどを総合して行われ、解析と同時に結果は直ちに本人の手の届かぬ管理下に置かれれ事実上改変は不可能となり、これを改変して送信することは罪に問われてしまうことになる。
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送信ボタンを押せないまま、メッセージを消し、入力を繰り返す日々が続く。もういっそこのまま放置で関係を消滅させるでもいいのかなと、思い始めてもいる。でも、彼からの日々のメッセージが届くたびに私が好きなのは彼ではないことは確信に変わっていっている。そのあたり何か勘付いているのか、メッセージも悲痛なものに変わりつつある。
まだ間に合う。このまま無駄なメッセージを続けるよりは直接会って別れを告げよう。
対面での真実は文字よりもはるかに柔らかく、全てを伝えるはずだ。
そう思った。
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