ここ神社

@kuro07rin

第1話

「先輩っ!」

チリンチリンと鈴の音を鳴らしながら、巫女装束を纏った娘が一人駆けて来る。彼女は、境内を掃き掃除している巫女の裾をくんっと引いて、満面の笑みを浮かべた。

「凛先輩! 結婚しましょう!!」

裾を引かれた巫女がゆっくりと振り返る。

「…相変わらず脈絡が無いわね。お断りするわ。」

「ええ〜!?」

「此方の台詞なんだけど。あなた、お仕事はどうしたの?」

「え、…えっとぉ、あはは」

はぐらかす為のぎこちない笑顔に、先輩巫女の凛は小さく溜息を吐いた。白い面布で覆われた彼女の瞳は今、恐らく呆れの色を映している。

「仕事に戻りなさい、亜留。」

「はぁい。」

「全く…口だけはお利口さんなんだから」

その一言を受けて、踵を返し掛けていた亜留が勢い良く振り向いた。

「何を仰いますか! 私はいつだって良い子です先輩!」

「仕事中に口説いてくる子を、良い子とは呼びません」

「じゃあ仕事後なら良いのですね!?」

「答えは変わらないけどね」

「はうっ!?」

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