( 'ω'o[アミメキリン] 私が本当に怖いモノ (後日譚) <中>
前に13階段の話を聞いた。
それをすっかり忘れたころ、ロッジ3階の物置が別次元になってたの。
オオカミ先生がそこで、自分のベロを噛みちぎろうとしてた。
髪の毛で作られた鳥の巣、黒い卵
ごめんなさい、私も自分で何言ってるかワケが分からないわ・・・。
┈┈──
┈┈── " くぅ....はっ!!? "
あれから飛び起きる形で目が覚めた。
普段の部屋にベッド、雨は止み明るい日差し。右隣のベッドにはオオカミ先生が眠っている。
前方の机には突っ伏する・・・アリツさんだ。
アリツさんがいる地点で、夜中のことが夢ではないと分かった。
┈┈ズキッ 「イッ...!」
両指の激痛で思わず声が出る。
それでアリツさんが目を覚ました・・・。
「お目覚めですか..!?よかったです~!!」
私たちを看病してくれたみたい。
指も真っ赤な包帯で手当されている。アリツさんの顔には疲れが見え、目にある傷が痛々しい。
・・・唇にも切り傷が。
「あ、大丈夫ですよ。吹き付けたときに切れただけです~」
話を聞くに、あの時アリツさんは私と先生、二人をまとめて抱え引き返して来たという。確かあのヘラジカも持ち上げてたのよね、素晴らしいわ・・・。
"ベリベリ" は黒い卵が
先生の手から剥がれた音 だそう、
手の皮膚ごと。
って言ってもヒトで言う手袋の部分だから傷にはならないみたい、よかった。
そういえばアリツさんは的確に動いていた。
お疲れで申し訳ないけどワケを聞くと・・・
"塩水を吹き付けた" と言うアリツさん。
・・・聞きたいのはそこではない。
何で対策が分かったのか。さらに聞くと、アリツさんは申し訳無さそうに打ち明けてくれた。
"ホラー探偵ギロギロ" の完成品を先に読ませてもらったという。だから方法が分かったらしい。
先生はアリツさんのチェックを経て、良い形の漫画を私に見せたかったそうで、アリツさんも先を越したわけではないと気を遣ってくれた。優しい。あえてギロギロの結末は聞かない。
今日見せる予定だった、その前にアレ。
対策は先生が漫画を描く上で調べた方法。重ねて感謝しないといけない二人には。
ただ、アリツさんは言う。
「本当は、危なかったです。黒い卵を見たとき、一瞬全てがどうでもよくなりました・・・」
魅入られかけていたんだ。
無茶して助けに来て・・・大した娘、本当に失敗したら三人で『あっち』だった
ただ、駆け付けたとき驚いた理由・・・
魅入られたからでも、黒い卵を見たからでもないらしい。
信じられなかった。卵の穴から
"茶と黄の網目模様が付いた白い両腕" が
・・・つまり
"私の両腕" が卵から伸びていたと言う。
ワケ分からなかった。私自身は見えなかったけど腕が4本、ベロを引っ張ったり、噛み千切らせようとしたり、方やそれを阻止してたってことになる。私の腕が・・・。
だから "お帰りください" も、私が言わないといけなかったらしい。
・・・まさかと思った。
何でこう、普段は冴えないのにこういう時に限って分かっちゃうんだろう私は。
「んうぅ....」
ある心当たりを見つけたところで、先生から寝起きの声。無事なのだろうか・・・アリツさんは小声で私に言う。
( 黒い卵は赤い光の先へ行きました。大丈夫だと思います・・・ )
確認できなかったけど、帰ったよう。
そういえば "ベリベリ" で聞いたっけ・・・
噛まれた両指を布団に潜らせ、私とアリツさんは声を掛ける。
「先生おはようございます、いい朝ですね」
「おはようございます、気分はいかがです?」
「んぅ.. キリンに、アリツさんもいるね」
夜中の記憶が無ければ好都合、
助けてくれたアリツさんには悪いけど・・・。
先生はいつも自分のせいで怪奇現象が起こると思っていた。作家を辞めるなんて言わないで欲しいから。
「・・・二人ともその様子だと私を助けてくれたんだね、また本当にごめん」
だめだった。破れた手の皮を見てたけど、あの様子だと分かっている。
・・・けどどこか引っかかる。ここから先生もあの時のことを話してくれた。
夜中、私よりも早く目が覚めたという。
この時は変な予感とかせず、ゆっくりと夜中のロッジを散歩しようと思い立ったらしい。
今思うと、金縛りの中でものんびりしてた私はどうかしてるわね・・・。
誰もいない、雨が降り暗いロッジの廊下。
歩いているうちにアリツさんが視線を感じる内容を思い出し、その手掛かりを探そうと考えたらしい。
フロントにはアリツさんが居なかったよう。
が、ここでアリツさんは驚いて声を上げる。
「え!?恥ずかしながら私、あの時はフロントで居眠りしてました・・・お二方の所へ向かうまで」
・・・二人の言葉がかみ合わない。
前にもこんな事あった気がする。アリツさんのお休み場所が気になって私も向かったけど、その時も居なかった。本当は居たらしい。
そういえば雨音が遠かったけど、もしかして
「うん、もう私らの"場所" が違ってたんだ」
先生が現実的ではない推理をする。
今ならもう何を言われても驚かないけど・・・。
それから先生は地下と2階へ続く階段まで来て、ふと13階段のことを思い出したと言う。
「それと同時に地下へ降りる影が見えた」
アリツさんかと思い追いかけたが、先は行き止まり。誰もいなかったらしい。物はあるけど全部角に寄せて置かれているから見通しはいい。死角もない。
不吉さを感じて引き返そうと振り返ると、球のような赤い光が見えてそこから記憶がないという。
・・・おかしい部分が分かった。
今ので終わりだとしたら、先生が起きたとき
"夜中にこんな事が~" から始まるはず。
「先生さっき "私を助けてくれた" って言いましたよね。それだと、現象に巻き込まれるまでの事を覚えてないとおかしいですよ?」
ちなみに後で分かったんだけど
赤い光は "負の象徴" らしい、4階でも見た。
"写真" に映りこむと危ないわよ。
「キリン、ため息が出るね。流石だよ」
先生の話はやっぱりここで終わりではなく、気がつくと開いた赤扉の前に居たと言う。中には例の黒階段。
「オオカミさん、もう憑かれてたのですね」
アリツさんが言うように
先生は "段数え" も言わされてたってこと。
と思う中、先生は別の意味で恐ろしいことを口にする。
「仮にそうだとしても、私の話が誰かを不幸にするのならもう何処かへ去った方がいいと思った。
今回は話通りなら、誰かの願いが叶うだろうしね・・・私は犯されるけど」
つまり、自分から呪われに行ったと。
それこそ憑かれての行動、恐ろしい。けど──
先生はさらに言う。
「怖い話を作ることが "断罪" の理由かも・・・。
やっぱり私は独りぼっちこそ怖い。作家を続けたかったけど もう、やめるべきなのかな・・・」
先生が作家をやめるって言うのが私にとってはすごく恐ろしかった。
でも違うの、本当に恐ろしいのは──
「先生ごめんなさい、違うんです。・・・
私なんです、私が悪いんです」
この時二人の驚いた顔を今も忘れられない。
さっきの "思い当たる部分" 教えてあげる。
「先ほどアリツさんから聞きました。
私の腕が『モノ』から出ていたそうです。」
『モノ』って言うのは黒い卵のこと。
このまま話を続ける。
「私は悪い娘なんです、先生が悩んだり苦しむ姿を何処かで願っていたんです。
その証拠に、先生がモノに犯されてるところを見て変な、ゾクゾクした気持ちになった」
アリツさんの話で思い当たったのはコレ。
私が黒い卵を、見たり触ったりしても影響はなかった。私の両手が卵から出ていたのは、あの怪奇現象が先生を呪って私の願いを叶えようとしていたことになる。
私が最初 "自分が何者か" って聞いたわね。
この時ほど、自分の得体が知れないって思ったことはないかもしれない。
でもアリツさんは言う。
「そんなの、キリンさんの本心ではないです。
霊の歪んだ形での再現です!」
先生も言う。
「多分、誰だって困ってる人には優越感みたいなのはあると思う。
確かにキリンも、日常で私の苦しむ様子を見てどこかで嬉しく思ったりもしたんだろう。
けどキミの場合は "自分が役に立てる" って思うから嬉しくなったんだと私は思うよ」
アリツさんも先生も全く私を責めなかった。
「それより、私こそ誰かを不幸にし続けないか心配で仕方ない」
オオカミ先生に至っては、悩みながら私を励ますんだからもう頭も上がらない。そんな先生にアリツさんも言う。
「大丈夫です、フレンズの行うことで他の娘を不幸にすることなんてあり得ません」
何でだろう。
この時に私はある事を思い出した。
先生が借りてきた本を見た・・・その内容
「先生、一つ聞いてください。
怖いとか恐れって、実際に形として錯覚で見えちゃったり、 "見えない存在" が『それ』に化けやすくなると聞きました。
これを避けるには、正直に怖がり、場所ならば近づかないようにすること。
だから先生は、これからも怖いお話を描いて怖がらせて、近づかないようお話で教え続けてください。
・・・お願いですから」
何で今思い出したのかは分からない。
けど、そんな願いを叶えてくれたのだとしたらその霊さんに感謝しないといけないわね・・・。
それから話し合い、先生も分かってくれた。
起こった出来事は良いとは思わないけど、結果的に安心出来てよかったと思う。
思い出したようにアリツさんは言う。
「それから、これは良さげなお話ですが・・・」
夜中の件から視線は感じないらしい。
今回の件はソレが引き起こしたのかは分からないけど。でも、何故私のほうへ来たんだろう。
「私が参加者になるとは皮肉なものだよ。
キリン、両手を見せて。そんなひどい怪我をしても私を責めないキミも大したものだよ」
と、最終的には先生も笑って私を褒めてくれた。
もっと褒めて褒めて。
この先も皆に "怖い" を教えて欲しい。
これが私の願い。
色々と伝えたいことがあるけど、
最後に恐ろしいのは自分自身かもしれないわね。錯覚やワケ分からない考えを引き起こすのも自分が原因であって。
お話はこれで終わるけど、
もう少し一緒に自分って何か考えてみない?
それじゃ、バイバイまたね。
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