[オオセンザンコウ] 後ろ姿が見えたトンネル ─後編─ <長>








 来た時は見当たらなかった。

夕暮れ時に帰ると何故かトンネル。近道・・・?


 先には出会っちゃダメなモノがいた。

 多分行ってはいけない場所もあった。


  ・・・夕暮れ時に、繋がる......?

 何か思い当たるものがあるような。



 夕焼けでオレンジの光が差していた。

内部で光が途切れた時、酷い頭痛がしました。

多分、その時に別の空間に入ったようですね。



 今になって思い出しました。

先の出口、何故かオレンジではなかった。

紫色の光が見えていた・・・違和感の正体。

元の場所ではない。



 前方と、多分後ろにもいる "アレ" 。

今のところ私たちの動きを真似ているだけ。

見ちゃダメなだけでこちらに干渉することはきっとない・・・。


 そう、思うしかない。


 目隠しで見ないようにする。

見たアルマーさんは、様子がおかしい。

何も見えない中、アルマーさんの左手を引く。

戻ることにした。



 分からない、何でこんなことに。

どうして私たちを不幸にするのです・・・!



    ┈─


  ...ィィィ───ィィィ......



 目隠しで感覚が冴えて・・・

 中で響く耳鳴りがうるさい......。


   ──はぁ..はぁ......


「..ェンちゃん、前..大丈夫?怖くない..?」


  ──ズザ... ジャリ......

   ──スタ.... ザリ......



 アルマーさんをリードする私の耳に、彼女の掠れた声が聞こえる。


 怖いに、決まってるじゃないですか・・・!

目を塞いでトンネルを歩く?恐ろしくて・・・!!

 何かにずーっと視られている感覚も・・・!



   ──チャポン......

     ──ピチョン......



 ついに私も、情けない言葉を吐く。


「はぁ..ぁぁ....!! アルマーさん。

お願い...あります。 私と話し続けて・・・。

心細い、どうにかなっちゃいそうで...!」


「うん..!分かった、あり..がとうね..!!」


 こちらこそ・・・!



   ──フォォ.......──...


  ──キィィ──ン......


 肌寒い風が吹いてくる、怖い・・・!

一人ならこんなの絶対無理、何でも屋をしてても。

 パートナーに感謝です・・・──



  ──ゴズッ!


「ぐぁっ た...!」


「・・・!!センちゃん..大丈夫!?」



 鈍い音。どうやら、石壁に頭ぶつけた・・・。

帽子を付けて、だいぶマシだけど・・・常に身構えておかないと。



「ごめんね、私がここ通ろうと考えなければ・・・」



 アルマーさんはまだ謝ってくる。はぁ・・・


「そう思うのなら、もう謝らないで大丈夫。私も怪我させてしまったんですし。


 おあいこ、私こそごめんなさい・・・。」



  ──ジャリ...ジャリ.... ザッ...

   ──ジャリ...ザリ.... ザリ....

  ──ザリ...ジャリ.... ガァ....



 前後から同じ周期で響く足音・・・反響?

 いや、多分ちがう・・・!



  ──私たちの足音ではない・・・!!


 地面の様子が違うから足音も違う、私たちの動きに合わせてついて来ている・・・ようだ。


 ・・・止まれば、あちらも止まる。

動けば・・・うん、違いなくあちらも動く。



「えっと・・・センちゃん..主人公の

"ギロギロ" だったよね..。漫画を描いてる..フレンズって、どんな..娘なの?」


 きっと、彼女にも足音は聞こえている。

それでも不安にさせないため話しかけてくれた。



「一言で言うと、やりたいことに正直な娘。

描くのが好きで、怖い物もきっと好き。

・・・こういう場所も笑って歩けるかも。」


 漫画の作者は、私の旧友。

 元気にしてますかね・・・。


  ──パシ..... パシ.......


 左手が石壁に触った、カーブに沿って歩く。



「そっか..、じゃあ次は3人で..こんな感じの所..探そうか!なんちゃって...♪」


  ──ズザ.... ズザ.....

   ───スタ...スタ.... スタ...



  ・・・?

足音がずれていた気がする。


「・・・ゴメンですね、安全な位置で怖い目に遭いたいです。」


「うっわ~..センちゃんもなかなか..大概だね..!その娘と..気が合──」


  ん・・・?アルマーさん?



  ──ゾヒュウウゥゥ!!!


  !!

 見えない壁・・・いや、突風!?

.一瞬、彼女の手を放してしまったが、何とか掴みなおす。


 強い風が吹くならば、出口も近い?

どうなるかと思ったけど、もう出られるはず!


「アルマーさん、少し驚──」──



  ──ピチョン... ピチャン.....

   ──ピチョン....  ポツッ....



  寒気で全身が強ばる・・・様子がおかしい。


 彼女の言葉が途切れたまま、返ってこない。

 それと、見えないが分かってしまった。


   分かっちゃったァ。




 ──今握ってる彼女の手 

   腕先に重みを感じない


  腕じゃない何かを握っている


 ──あ..はっ...ハッ....はぁ...ぁぁ......


 「ぁぅ...アルマー..さん返事して・・・?」


 返事はない。息は荒く、涙があふれてくる。

もう分かってる。今握ってるのは、彼女ではない何か。


「はは・・・アルマーさん返事して!?

 さっき話し続けるって約束しましたよね!

 心細いって言いましたよね私!ねぇ!!」


 声が反響する、もう何も考えたくない。

だってありえない、ソレ振り回してるし私!


 ──目隠し取らないとイけない。


 狂っちゃえば楽なのに。

根本は冷静なのか、どうすべきか判断している。



 多分アレらを見ることになる。

 そうしたらどうなる?


 あれ?見ないでこのまま前に走れば私は助かるかも。

 一人で ふふ 逃げちゃう・・・?


 一人ぼっちになるかもしれないのに?



 はは、行動で以て示すとか言ったけど死ねば終わりですよ・・・?

安全第一です、ですよね ふふふふ......。 



 ふふ、ゔゔぅぁ!!...はぁ.. ──違う。


 それだと、 "別の自分" 以下だ私は。

 またパートナーを見殺そうとしてる、私。



 いい。投げやりじゃない、覚悟しました。

 まず右手を緩め、彼女の左手?を離す。




  ──ドチャッ! ゴト......



 重い液体が落ちるような音がした。

 変な生臭い匂いも感じる。


  ──いひっ......イ.ッ.イ.ア゛アぅ!!


 冷たい電流が背中に走った。

一瞬、何かがとても狂いそうになる。



 けど今度はアルマーさんのネクタイ、目隠しを少しずらし右目を出して背後を・・・


 ───見てやるっ!!


 ┈──

 ┈┈──


 ─────っ!!


 半分視界が回復し、驚愕した。

すぐ後ろにいた、私のネクタイで目隠しをしたアルマーさん。 が・・・


 「───!!」


 両手を必死に伸ばしつつもがき、立ったまま何かに引きずられている!!


  ──ミィィィィーー!!

 ......キィィィ──ィィ...!!!



 耳鳴りが一層ひどい・・・!!


 彼女の背後に・・・

先の漫画での主人公によく似た存在──


   "別の私" か・・・!?



 アルマーさんの口と両足を押えつけている・・・!

さらに背後で目隠しをしていないアルマーさんの姿をしたモノが、目隠しをしたアルマーさんの腰に右手だけ引っ掛け、逆方向へ引きずっている!!


 ソレの左腕・・・千切れている!

もしや私がさっき握ってたのはアレの・・・?


 ──それより!


 ・・・私もドッペルゲンガーを見てしまった。

瞬間、激痛と共に右目の視界が波打ち・・・赤ァくなってきた。

 ッハアハ...その前に──



「..ぅアルマーさんを離ひなさい..ィィィ!!」


  ──ガバッ! ザッ......


 前が真っ赤になる前に、手甲の刃を逆立て斬りつけて無理やり引き離す!!

 力はなく、意外とすぐ離れた・・・?



  何故か焦げ臭い・・・!

  でもアルマーさんは取り戻せた!!


「ゲホッ...けぇ・・・セン..ちゃんっ!?」



  ──ブジャッ!......


「痛ッ!!ぅぁ..右目・・・ぁぁァ!!!」


 私の右目から変な音がした。

けど傷みに耐え、ズレた目隠しを戻しつつ元来た道へと引き返す。手を引くとまたすり替わる!

 "野生解放" させ、すかさず彼女を前に抱っこする形で走る!!


 ──ダッダッ ダッ ダッ ダッ...

  ──ダッ ダッダッ ダッ ダッ...



「あっあ..!ぁぁヤァァ!センちゃん!!

 ごめんね..ぁぁごめんな゛ざいぃ...」



 アルマーさんの悲痛な声が胸に当たる。

彼女は見えてないけど耳から察したようだ。

 目隠ししながら助けるなんて出来ないから・・・。

 

「もういい..ですって..それより、背中で防御..!必死に走るんで..壁ぶつかりますよ!」



「うっぐぅ...ぃ平気、任せて..!」



 それと、思い出したことがあった。


「ハァッ...ハァッ...少し..確認します!

 左手..親指に "アレ" ..ありますか..!?」



「え・・・?──あっ..!そう..か!!」


 アルマーさんも察したようだ。



「ある..よ!センちゃんも..ぁるよね、お互い確認しよう!」


 ──ピタッ...



 言いますね、アレとは "切り傷 "のこと。


 私らは傷を負い・・・いや、わざと付けていた。と言うのも、ある絵に血でサインするために。闇で走りつつお互いの親指を付け合せ確認する。


 オリジナルである事の証明になる。




 ──ダッ ダッ ダッ...!!

  ──ハァッ ハァッ...ハァッ...!



 ──ドッ.. ベシャ...!!



 「くっ・・・!?」

 アルマーさんの背が何かにぶつかった!

体制を立て直しつつ走るがこの音と感触──



 ・・・コレ、石壁ではない!

それに、また。何ですこの焦げ臭いの!



「くっ..センちゃん、多分..後ろにもいた "アレ" にぶつかった。追い抜いた..みたい!」


 となると、もう少し・・・もう少しです!

 焦げ臭いのなんて気にしてられない。


 目隠しを取れるかも、そう思ったが・・・。

それを忘れるくらいの恐怖がまだついて来ていた。



  ───....ェンちゃーん。


 ・・・?


『センちゃーんそっち、道間違えてるよ。』

『センちゃん、ほらそこ左だよォぉ。』



  ──え?



『アルマーさーん、

 かくれんボですか?もうイイかーい』


『降りてごはん一緒に食べません?

 アルマーさぁん』


 なっ・・・?

私らと同じ、でも別の声が響いている!?

発生源は胸元のアルマーさんじゃない、ましてや私も喋っていない。



 私らは視覚を封じている。

他の感が鋭く、2人で寄り固まってすぐ分か──


  ──ズルッ!! ズザッ.....


「ぅ・・・しまっ...!!」「ぉ....わぁ!?」


 足を・・・つまづいてしまった!

考えてもみると、足元も見えないのにここまで転ばなかったのは幸運でしかなかった。

 彼女を離さなかったけど、ヤバい!



『ほーら おにさんこしら、てのな──』



「てて....私らの声で..話しかけるなァ!!

センちゃん..慌てないで、大丈夫。交代..私が走るよ!」


 なんと、偽物を意に介してない・・・吹っ切れた? でも大丈夫なのだろうか。

 私も息が上がってもうダメと思い、入れ替わり今度は私が抱っこされ丸まる。

 ・・・彼女のお腹、暖かい。


 左手の親指を合わせる。

・・・傷口の凹凸、ヒリヒリ。よし、お互い本物。

幸い "アレ" をもう追い抜いてるので声の聞こえる方向こそ向かってはならない先、帰る先も判断できた。



「抱っこできた!よいしょ、行くよ!」


 ・・・

 ・・・・

 ・・・・・・


 ──ダッ ダッ ダッ....ドガッ..ガッ..

  ──ダッ ダッ ダッ.... ドゴッ..



 彼女もふら付き、石壁にぶつかるようになってきた。


「センちゃん..ハァ..さっきからごめ..「謝らないで..いいでっ..!」


 何てことない、背中の鎧皮で止めてやる。



 ただ、何か妙だ。

だいぶ走ったはず。距離感がおかしい。


  ん・・・?


 ──カタン.. カタン.. カタン.. カタン .....


──ガタン.. ガタン.. ガタン.. ガタン......



 ・・・ 何かが聞こえる!?

後ろから、乗り物が走ってくるような音?・・・バス?電車!?近づいてくる!!


 ── ファ───ン!!


 アアァァ...──ァァ゛アアァァー!!

 ウ─...ウゥゥアアァァ....ア゛アァ─!!


 同時に、背後から唸り声。私らの別の声!

 もう自分の足を使わないとだめだ。きっと後悔する!


「っ..降り..ます!絶対..離さないから一緒に..行きましょう!!」


「ハァハァ...う、うん!」


 ──ガタン ガタン ガタン ガタン...!!

  ──ガァァァァァァ──!!


 金属から立つ音が、私らの足より猛スピードで迫っているようだ!

 逃げても、このままだとソレに轢かれる。


  あはは なら、それもいいか・・・。

  一人じゃないし。 と思ったとき──



  ┈┈ こっち・・・! ...ガシッ!



「うあっ!?」


 左腕が何かに掴まれた!?

「いっ!なんだ!?」 アルマーさんの声も!



『大丈夫だよ、ボクが君たちの腕を掴んだの。目の覆いはまだ取らないで!

安全な所に行くからそのまま走って!!』



 聞いたことのない声だ。

少し低い声、何か・・・口から出ている声ではない気がする。


「・・・センちゃん!」「いいです、行きましょう!」


 どうやらアルマーさんも右腕を掴まれているらしい。暖かい感触・・・従っていい気がした。


 ・・・と言うより従うしかないのですが!



 ──ファァァァァアアア ──ン!!!



「ぐぅっ!?」「おわぁっ!!?」


 少し走った後、急に足が止まった!

ブレーキ・・・かと思うと今度は右側を向き、頭から飛び込んだ!?

 私ら二人を持って跳ぶとは・・・!




 ──ギァァァアアアァァ───ン...!!!

  ガタンガタン.... ガタン...  ガタン..


 音の響き方から横穴に飛び込んだ・・・らしい。

大きな音と共に、背後から突風がぶつかり・・・通り過ぎて行ったようだ。



  ──ハァ.. ハァ... ハァ....

 ──ハァ... ハァ....ハァ.... うっ・・・ぺへ...


『二人とも大丈夫かい・・・?

片目やられたか、でもよく頑張ったね。』


 良く分からないけど、頭に感じるような声でその人物は言葉を続ける。


『また言うけど心配しないで。これから元の入り口まで歩く、着いたらお話しよう。』



 それから私たちは目隠しのまま少し歩き続けた。

その人物のことも聞きたかったけど、まずは言う通りにする。


 ──ミィーン ミン...

  ──ミーン ミン ミン...


 そのうちセミの鳴き声が聞こえ、目隠し越しでも夕焼けの光を感じる。


 今度こそ助かった!




 ・・・そう思ったのも束の間だった。




  ──シャギッ... シャギン.....

     シャギッ....


『ここならもういいね・・・フゥ。』



 ・・・刃物と刃物を擦るような音が聞こえる。

大きなはさみのような?いい音ではない、冷や汗が出てきた。



「...なにしてるのさ..その音!!」


 アルマーさんも怯えているようだ・・・。

嫌な感じがする。目隠しを取るしかない!


 ──ベタァ....


 ぃ!?貼り付いて取れない!!



『・・・あ、見えなくて怖いよね。

大丈夫、切り取ってあげるから!した──』


「舌を切るつもりですか!?」

「いいぃっ!!」



 考えるより口が先に動いてしまった。

その人物は "しまった" と言いそうな抜けた声で言う。


『あちゃ・・・ごめん。その "目隠しを" 切ってあげるから "下" 向いて、いい子だから。』


 するとほっぺたに感覚が。

手のひらを当てられているようだ。


 不思議と抵抗しなくていいと感じた。



  ──チョキッ...ペリペリ....


 下を向いた私から目隠しを切る音。

 そして次はアルマーさんからも聞こえた。


「おあっ眩しいっ怖かったよぉ!!

 ...ぁセンちゃんやっぱ、目...」


 アルマーさんの元気な声が聞こえ、同時に被さってきた。

 けど、左目は瞑ったままで血だまりが・・・。私の右目も、か。恨みっこは無しです。


 今度こそ助かった・・・のでしょうか。山の入り口だ。・・・?

 あることを疑問に思ったが、助けてくれた人物を確認し、お礼をすることにした。


 ・・・おや?


「まず、ありがとうございました。

 ・・・貴方、もしかしてヒトですか?」


 見ると、動物としての特徴が少ない存在が。


・白い帽子に、先端が青い羽

・青いショルダーバッグ

・青いベストジャケット...でしたっけ

・黒いシャツ

・灰色の長ズボン


 バッグには "スケッチブック" 。

私らより背が高い。それと・・・何て言うか、虚ろな様子。



「あれ?..元の場所だよね・・・?トンネル..なくなっている・・・」


 私も最初に思ったことですね。


『君たち、この時間に来るとは・・・でも助けられて本当によかった。』


 その人物は、夕焼けの中説明をしてくれました。


 夕方、 "あっち" と繋がることが。逢魔が時おうまがときと言うそう。

 楽しそうにしてる私らを見てひがんだらしい。彼はそうではなさそうだが。


「一応聞きますが、何故私たちは目をケガしたのですか?」


 傍から聞くとおかしな質問です・・・。


『 "別の自分" に会って、知るとそうなるみたい。恨んだりひがむ霊が成り替わろうと惑わせて。あそこはだいぶ近い世界だから。


 それに君たち、あれに攻撃したりぶつかったりしたでしょ?トゲトゲの君は手甲、ガードを付けてる君は背中と腰。

 干渉するとそこは生気を取られる・・・。』


 やはり "ドッペルゲンガー" か。

私の手甲は焼け焦げ、見るとアルマーさんも──


「ぎゃー腰と背中が!焦げ臭いのはこれだったのか!」


 でも、一つ疑問に思った。


「私、ソレの腕握ってましたよ?でも手は燃えていないですが。」


「アレでセンちゃんも目が・・・うぅ──」

 もう謝らないで良いですからね。


『 握ってたのは "君とは違う別の自分" だからかな。

それかパートナーの切れた腕だと思っ──』


「やめてよ怖い!」


 つまり、 "別の私の腕を握った" 

 と、理解したら無事ではなかったと。


 それからもう少し話をしました。

私らの傷は、生気を奪われたことによるもの。しっかり栄養を付ければ目であろうと必ず治ること。


 この人物も、すでにヒトではないらしい。名前も覚えていないそう。

 随分前に生き終えたけど、思い出あるパークにまた来たとのこと。


『生きてないって言っても、驚かないね。』


 あんな状況になればもう驚きませんよ・・・。


 でも──


「ねえ貴方、イエイヌって分かる?この先の家にいるフレンズなんだけど」


 アルマーさんが訪ね、その人物も答える。


『両目で色の違う娘かな。懐かしい、覚えているよ。』


 もしかして彼が探し人では?そう思い──


「助けてもらっておこがましいですが・・・彼女と会ってもらえませんか!?」


 お願いした。でも、間違っていないはず。


『いい勘だ、でもごめんね。ボクはもうその立場じゃない。

代わりに・・・一つ思い出したことがある。』


 詳しく教えてくれなかったが、自分と似た格好の人がいたらその子を連れて欲しいと言った。もしや、目の前の彼も "ドッペルゲンガー" ?

と思い意を決して聞くが・・・


『君らと同じ立場だよ、生きてないけど。

でもボクに似た子は "必ず" いて、その子も "別の自分" ではない。

 さぁ時間だ、ボクはもう行くよ。思い出のあるパークにまた来て役に立てて本当によかった。』


 ──スゥゥー......


 足早に彼は此処を後にした。

最後に見えたのは文字通り、山の中身へ入っていく姿だった。


┈┈

┈──


 ──...二人と..も ..ぃっかりしてください!



 誰かに声を掛けられている。

見ると、真っ青な顔をして私らを揺すっているイエイヌ。

 どうやら気が抜けたのか、山の入り口でアルマーさんと眠ってしまったらしい。

 後でイエイヌから聞いたのですが、やはりこの辺りは夕方に別の場所へ繋がる道が現れるそう。


「出発するときに声を掛けたのですが・・・本当にごめんなさい!」


「こちらこそ聞き返すべきだったよ・・・」


 でもアルマーさんと一緒で本当によかった。

もし1人だったら私は発狂してそれきりだった。


 それから次の日に改めて出発。

トンネルの、あの人物を参考にキュルルさんを探し当てました。つまり・・・

 あの人がキュルルさんと酷似してたんです。

 でもキュルルさんは霊ではない。


 "ドッペルゲンガー" を見た私らはもうさほど驚きませんが、あの人物がオリジナルなら・・・

 一つ思ったんです。


 コピーして再現するセルリアン。

確かそれで生まれたフレンズもいたはず。キュルルさんかあの人物、どちらか似たようなことがあったのかもしれません。


 もう、それは大した問題ではないですが。

強引に捜査して、申し訳ございませんでした。


 ┈┈┈┈┈


 ここまでが私たちの体験談ですね。

あの時負った傷は、捜査の間に完治して不自由もなくなりました。

 今は依頼を遂行し終え、もう一波乱ありましたがこれから旧友の所へ会いに行こうとしております。

 彼女、いい顔して待ってるでしょうか。



「センちゃーん早く行こう、船来ちゃうよ!」


「分かりましたオルマー、今行きます!」



 パートナーが呼んでますね。

 ではこの辺で・・・。

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