( 'ω'o[ワシミミズク] クラスター <短>
──"房” とか"集合体"
複数を指す意味らしいですね。
今そんなこと問題ではないですが。
ようこそ。そんな身構えなくていいですよ?
安心してください、私は怖さに鈍い。故に、怖い話は出来ませんので。
"ワシミミズク"と申します。
助手と呼んで欲しいのです。
普段は、博士と "としょかん" におります。
博士の種族名は"アフリカオオコノハズク" と言います。さて・・・この博士、ある時から様子がおかしい。
普段私らが使っている寝室へ、怯えているのか入りたがらないのです。
かばんたちのログハウスへ、ここに来ていたダチョウと一緒に出向き、帰って来てからでしょうか。
因みに、"としょかん" を空っぽにするわけには行かないので私はここに残っておりました。
聞くに、寝室ではそこかしこで何かを引っ掻く音や当たりまわる音、果ては多方から視線を感じて仕方ないとのこと。
「助手には、聞こえないのですか・・・?もう怖くて仕方ないのですっ・・・!」
この私、どういうわけかその類のものが全く聞こえない。
つまり私に霊感と言うのがないからか、あるいは恐怖からくる幻聴かとさえ思っていたり。
だけど、あれからかばんもダチョウも何かを探して走り回っているとのことで、どうにも心配の種が増えて仕方ないのです。
博士までこの状態だと私も過労で原種に戻りかねない。
今の生活から抜けるのは具合は悪い、充実はしてるので。
長である博士を支える立場にいる以上、元を取り除いてどうにかしないといけない、由々しき事態。
そこで、ダチョウも言ってましたが "霊" について調べてみたのです。
そしたら非常に興味深いことが。
目で見えない、電流のような存在だと言うじゃないですか。アルパカのところにもある充電器にたくさん集まってそう・・・な?
さらに、解決に繋げられるであろう道具の情報も掴みました。これならばどうにか出来そう。
──自分で言うのも何だが、賢い私は!
調べ終えた時にはもう夜になっており、すぐに出発してもよかったのですが、夜更かしをしては身体が持ちそうもない。
食事を終え、今日は嫌がる博士と共に寝室にて床に就いてみたのですが、当然私は何も周囲から感じません。
部屋がそんなにだめなら博士は外へ行けばいいのにと、敢えて言うも
「一人にしないでほしいのです!!」とのこと。
ふふっ・・・
博士は・・・同じベッドで私の懐に潜り込んでいる。
「やはりこの部屋は怖いのです──ひぎっく!
外で一緒に眠るべきだったのです......」
変わらず、周囲から奇妙なパチパチ音や擦れる音が消えないとのこと。
にわかに信じられないですね。
博士が引っ付いていたので、ぽっかぽかでよく眠れましたね私は。
博士はとても働ける状態ではないので今日ばかりは "としょかん" はおやすみです。
「いい朝ですね。博士の恐れるソレ、私が解決に繋がる機材を持ってきます。ここで期待して待っててもらえます?」
だけど博士は上目遣いをしつつ無言で私の左手を引っ張る。
「・・・やはり私を置いて何処かへ行くつもりですね!?そんなの許さないのです・・・!
是非くっ付いて行かせるのです!!」
すっかり臆病になってしまっている様子。
頼られている意味で感覚的に悪くないですしいいでしょう。
──バサッバサッ......
少しして到着。来た場所は・・・
古びた団地。くすんだ色になってますね。
横長に連なっており、4階建て・・・です。
前にヒトが居た時の住居らしいですが、これがパーク内にあるとは。最上階右端、ベランダと呼ばれるところに博士と足を据える。
そして目の前にあるガラス張りのドアを・・・
──ガァンッ!!
少し勢いを込めて横に叩いたら簡単に開いた。
「少しって言うには、やりすぎでは・・・」
博士にとっては強く見えたのでしょう。
入ったところ、薄暗い雰囲気があり管理もされていない様子。
物も乱雑に置き去られている。此処を出ていく準備もできなかったのでしょうか。
「助手・・・ここへ入って何をするのですか?」
びくびくしながら博士が訪ねる。
「さっきも言ったじゃないですか。解決に結ぶ物を"ギ"っていきます」
博士の狼狽する姿を見て、 "ちょいする"なんて可愛げな言葉を使う気にならなかった。何となく得意げになっていたのかも。
上の階から順にドアを開いて部屋内部を、まぁ物色しました。
──この部屋にはない。次行きますか。
──博士、いつまでも引っ付いてないでそちらお願いします。
──ガサゴソガサゴソ......ガラクタですね。
一通り最上階の全ての部屋を物色し終え、一度玄関を出た先の廊下で博士と立ち会う。
「博士も見つけてくれた物の中には、お目当ては無かったですね」
手早く見つかればよかったのですが、この階にはない様子。
「ボロボロで、何とも薄気味悪いの──」
博士がポツリと言うが、ならば次は下の階へ行くまで。密集地帯なのできっとどこかにはあるでしょう例の物は。
・・・この時、博士の言葉が途中で止まっていたことに私は気づいていなかった。
少し行った先に、右手に下へ続く階段がありました。博士の方を見ず私が先導して向かう。
らせん状に視界下へ続いているのと、天井の電気がついていないからか暗い雰囲気が一層に強いです。
──ん?
少し違和感を感じた。
廊下には窓があり、陽は差し込んでいる。その割に下の階から殆ど光がみえないような・・・?
さらに、この建物には私と博士の二人きりのはず。
どういうわけだろう、もう一つ気配を感じる。
下の階からのようですね。
ただ──
息遣いとかは感じない。
多分霊感がない私でさえも──何ですこの汗、暑さからではない。
博士の方へ向き、確認を取ろうと振り向く──
博士は先程の場所から動かず、
震えて歯をガチガチと音をたてて
左目から涙を流しつつ毛を逆立てている。
つまり、シュッと細くなる状態を越えている。
「(・・・一応確認しますが、この先はダメですね?)」
体制をそのままに、私は目の動きと、左右の人差し指でバッテンを作りつつ確認を取る。
博士が引きつった顔をしつつ頷きました。
足音を立てないようにバック移動、つまり階段の通路から目を離さずホバリングで最初の部屋にあるベランダまで後退。そして外へ飛びあがる。
一度建物から距離を取り、博士と話し合う。
「ハァ、ハァ・・・嫌な予感から完全に硬直してました。助手も、私が普段感じている感覚が少し分かったのではないですか?」
博士の息遣いが荒い。
ただこの時の私は、恐怖よりもどういうわけか素直に博士を褒めたくて仕方なかった。
と言うのも、自分自身が "怖い" に鈍感だったことと──
「博士は危機への感覚が敏感ですね!素晴らしいことです!」
先ほどの怯える博士を見て、尊敬の目を向けるのもなかなかおかしな話ですが。
──その後、3階はもちろんのこと2階も危ないと思い、ならばと1階から探索することに。
2人で、特にヤバいと感じない部屋から探索。
当然博士は嫌そうにしてましたが。
私も愚かなもので、まだ大丈夫だと高を括っていたのでしょう。
1階には管理者の部屋があったらしく、そこですんなりとお目当てを見つけることが出来ました。
流石に鈍い私でも長居はしたくないと感じ、さっさと現場を後にしました。
──特に何か起こる様子もなく "としょかん" に到着。時はすでに夕刻ですね。
持ってきたものの内容としては、
・黒くて四角く小さいが、少し重量のある装置
・上部が横に広く穴が空いている
・その穴の下部に電源ボタン?など
と言った感じでしょうか。
幸い此処にも寝室に電気が通っているらしく使えそうです。
「助手、結局のところ・・・この装置はなんなのです......?」
博士がくたくたになりつつ私に聞きますが、
「今日の夜、効果が出れば教えます。
これが除霊に効果があると踏んでいるので」
──とだけ答えておきました。
結果として、きちんと動きました。
低い音が気になりましたが問題なく寝付けましたし。
──ゴウンゴウンゴウン......
肝心の博士は・・・
「本当にあれから何も感じなくなったのです!
助手、お前は大したものですよ!!」
・・・思った通りの結果が出たようですね。
当然と思いつつ少しむず痒い感覚でしたが。
さて、答えを言いますが持ってきた物──
"プラズマクラスター"
と言う、空気清浄機──読んで字のごとくですが空気を綺麗にする機械だそうですね。
で、霊ってのは ・・・
"プラズマ" って言う電気みたいな物から出来てるそうで。
早い話が、それで綺麗に出来るのではと考えたわけです。賢い発想ですよね、わたしは。
ただ、後でダチョウに聞いたのですが──
「私が検証したわけではないから断言は出来ませんが、除霊は出来ませんよ。多分。
それに、そんなんで除霊できちゃうのなら私たちは苦労しません!」
何とも鋭い返答を貰ってしまいました。
"あの時" 立ち会っていた一人だからか、少し怒っているようにも・・・。
ダチョウは、さらに続けます。
「博士さんの件は、彼女もまた
"これで解決する!" と自信を持ったからでしょう。
助手さんの予想していた通り、今までのは怖がっていたことからの幻聴だと思います。
これは貴方が怖いもの知らずだったおかげでしょうね。それは認めさせていただきます」
とのことでした。
これを "プラセボ効果" と言うそうで、うむ。
確かに、こんな事で解決しちゃえば苦労はしないですよね。当初の私はほんと怖いもの知らずで
無知でした。
寝室のベッドに腰を掛け、運転している
"プラズマも清浄しそうな機械" を見つめる。
少し機械の周りで埃が光の加減からかチカチカしている。何かが訴えているのでしょうか。
これで元通りにサーバルも帰ってきてくれれば苦労なんてしなかったのに。私は、ため息を一つ。
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