第21話 元引きこもりはボーナスステージへ

 朝になった。

 私、三雲茉莉みくもまつり巨大蚯蚓ジャイアントワームを倒し、眠った。その間、モントたちが、次の階層への階段を探してくれていたようだ。その証拠に、今私達は、次の階層への階段の前で、休憩していたのだから。


 私は目を覚ました。

 モント達はもう起きている。どうやら、私の代わりに朝食の準備をしてくれていたようだ。

 今日もいつもと同じ肉。魔人の肉だ。最初の頃は、美味しくないとブツブツ文句を言いながら食べていたのだが、モントが調味料になる草を見つけてきたりして、今では美味しく食べることができている。と言っても、普段作ってるのは私なんだけどね。


 私は身体を起こし、モント達の方へ向かう。

 モントが私に気づいた。


「おはよう茉莉、ぐっすり眠っていましたね。体力は回復しましたか?」


「もちろん! ありがとう、モント」


 モントは「どういたしまして」と言って、朝食作りを再開する。


 


 10分ほど経つと、モントが野菜炒め(のようなもの)を私のところへ運んできてくれた。……うん、美味しそう。


「いただきます」


 私は野菜炒めを口に運んだ。

 私はレポーターじゃないから味がどうとかはよくわからないけど、これだけは言える。


「――美味しい……」


「本当ですか茉莉。口にあってよかったです」


 それに、なんだか懐かしい味がする……これは……日本で食べたことがあるような味だ。うん、絶対そうだ。よく食べてたもん。モントってば凄いなぁ本当に……。ハイスペックすぎるよ。本当に私と旅なんてしてていいのかなぁ……。

 私はすごい勢いで野菜炒めを完食した。


「――ごちそうさまでした!」


 ふう――――。食べた食べた……。


 モント達はすでに準備を終えているようだ。


「ごめんね、またせちゃって……」


「いいよ、茉莉! 行こうよ!」


「ありがとう、じゃあ行こうか!」


 私達は次の階層へと足を踏み入れた。



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 やぁ、久しぶり。僕だよ、アラン・フォードだよ。

 僕はね、今、聖教学園で英雄になるために勉強してるんだ。

 正直に言うとね、僕は英雄よりも『勇者』になりたかったんだ。英雄も勇者も変わらないとは思うんだけどね……。

 勇者になりたい理由は、僕が転移してくるときに取得したユニークスキルが、【勇者】だったんだ。まぁ今はその【勇者】も進化してエクストラスキル【聖騎士パラディンナイト】になったんだけどね。これはスキルと言うよりは称号だと僕は考えているよ。

 こっちに来たときは魔力保有量が0に等しかったんだけど、この学園でしっかりと実技をこなしていたらいつの間にか一般人を軽く上回るレベルにまで増えていた。

 

 さて、そんな僕が今考えているのは、約一ヶ月前にこの世界にやってきた僕と同じくらいの歳の女の子。

 彼女(※sheの方です)は、少し前に、実技の授業でクラスのみんなと、迷宮ダンジョンに行ったんだ。

 

 ――そこで事件が起きた。


 彼女がはぐれてしまったんだ。

 僕が知っている限り、彼女はいつも一人でいたけれど、影で人一倍努力しているような、真面目な普通の女の子だった。


 なのに、はぐれてしまった。


 僕は何度も一人で迷宮に彼女を探しに行った。


 しかし、彼女は見つからなかった。


 そんな僕の無茶な探索のお陰で僕はどんどん強くなった。


 いや、そんなことはどうでもいい。


 はぐれてからもう3週間になろうとしている。


 聖教教会の人たちは彼女を『事故死』として処理した。


「クリフさん、何考えてるんですか……」


 僕を召喚したクリフに言いたいことは山ほどある。


 僕にはもうこれ以上何もできない。


 迷宮に行こうとすると、聖教教会の人が何かしたのか、「学園の人間は入れません」といって入れてくれなくなった。

 以前は、学園から出ることも無許可でできたのに、彼女がいなくなってしまってからは許可を取らなくちゃいけなくなった。寮? 残念ながら、学園の敷地内にあるんだ。

 外の情報もほとんど入ってこなくなった。「魔人族との戦争は今の所休戦だ」って言われてるけど、本当かどうかもわからない。


 僕はこの状況をなんとかしたい。彼女を見つけたい。だから僕は彼女が死んでしまったなんて考えたことは一度もない。


 だから僕は今日も祈り続ける。


 ――どうか彼女が生きていますように……戻ってきてくれますように……。





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 私が新たに足を踏み入れた階層は……なんと言うか……。


 ――ボーナスステージだった。


 魔人や魔物は無限かと思えるほどに湧いてくるし、そのくせ弱い。数が多いからこうなってるのかもしれないんだけどね。


 ということで、私は、この階層で、魔法を練習した。


「――氷の精霊、風の精霊よ、凍てつく刃と暴風にて、我が道を妨げるものを退けん――」


「『豪雪暴風』」


 私の周囲を囲っていた魔人たちが一斉に暴風に当てられ吹き飛んでゆく。

 あるものは勢い良く地面に墜落し死に、あるものは暴風のあとに残った寒さで凍死。




 中級魔法、【豪雪暴風】。立ちはだかるもの全てを暴風に手吹き飛ばしてくれる魔法。氷の精霊必要ないじゃんだって? 残念だなぁ、それが大ありなんだよ。大ありって言い切っていいのかはわからないけども……。

 使い方としては、攻撃になるのかな。

 豪雪を生成して、暴風で撒き散らし、兎に角暴れまわる。

 それだけさ。シンプルでいいでしょ? これ気に入ったんだよね。



「――雷の精霊、風の精霊、破壊の精霊よ、轟く雷風を纏い、破壊の限りを尽くし、我の力と成れ――」


「『雷風滅破』」


 私の周りを鮮やかな黄色の雷が球体を包むかのようにして覆う。暴風によって、雷の球体の中へ魔人族が吸い寄せられるかのように流される。

 そして、球体に衝突すると同時に魔人族の身体が焼け焦げ、塵となる。

 この中級魔法は雷だけを発動させたり、暴風のみを発動させたりすることができる。


 中級魔法、【雷風滅破】。

 逃げようとする敵をこちらへと引き寄せ、雷によって焼き殺される。もし仮に耐えられたとしても、破壊の精霊が其の身体を切り刻んでしまう。

 これは、重力魔法の基礎となる魔法らしい。モントが言ってた。私もいつか重力魔法が使えるようになるのかな……?

 


 他にもたくさん覚えたんだけど、他のはあとの楽しみとして残しておくよ。

 私はこの階層でこの2つを兎に角必死で練習した。

 

 




 私は三日間この階層で練習し続けた。

 ゲームなんかに出てくる熟練度が見えるようになったら、MAXになってもおかしくないくらいに繰り返した。


 あるときには巨大蚯蚓ジャイアントワームが、またあるときには機械人形ゴーレムが、私達の前にノコノコ出てきて殺られていた。

 蚯蚓殲滅ワームキラー殲滅者せんめつしゃのお陰で、あの巨大蚯蚓の鱗にも、魔法が通った。


 倒しては移動、倒しては移動……と繰り返しているうちに、次の階への階段を見つけた。

  

「行こうか」


 私が三人に言う。


「そうですね」


「……うん」


「うん!」


 モント、胡桃ちゃん、雪姫の順番に三人が返事をした。


 新たな魔法を習得して、私達は新たな階層へと進んだ。



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 new :中級魔法:【豪雪暴風】【雷風滅破】

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