第15話 元引きこもりは魔法を覚える
「凄いですね、茉莉」
聞き覚えの有る声。そして私は気づく。
「モント!!」
思わず涙が。感動の再開……!!
「ええ茉莉、わたし、モントですよ」
そして私は魔力切れで気を失った。
数時間後。
私の体の魔力が回復し、私の気も戻った。
まさか初級魔法、『爆炎・一式』を一度使っただけで気を失ってしまうとは……。
「茉莉ー、大丈夫〜?」
あれ、モントは……?
「ここですよ、茉莉」
なるほどこれはモントの膝だったのか。
「大丈夫だよ雪姫、ちょっと気を失ってただけだから」
「ほんとに大丈夫? ワンフロア消し去っちゃうくらい強い魔法使ってたのに?」
うっわ、私そんな魔法使ってたの……?
「無理は、だめっ」
「大丈夫だってば、心配してくれてありがとう」
魔力も体力も全回復してる。
迷宮攻略のために私は起き上がる。
「モントは雪姫と胡桃ちゃんと自己紹介したの?」
「当たり前じゃん、茉莉! モントは先輩なんだからね!」
そっか先輩か、まぁモントは何年も精霊やってるって言ってたしねぇ……。
「茉莉、ここから出ないの……?」
「わかってるよ胡桃ちゃん、それじゃみんな、迷惑かけてごめんね! 行こうか」
「「おー!!」」
私達は迷宮攻略を再開した。
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今現在私、
この階層も魔人や魔物がたくさん出てくる。そのため私は魔法を使用するための杖、『夕焼け』を構えている。そういえば赤坂さんが魔物ってだいたい奴隷だとかなんとか言ってた気がするけどあの設定(笑)はどうなったんだろ。モントに聞いてみよう。
「ねぇモント、魔物が魔人の奴隷なのって本当なの?」
モントが驚いたような顔で私を見る。
「よく知ってますね、茉莉。 そうですよ、戦っていてもそうには見えないかもしれませんが魔物は魔人族の方々の奴隷なんですよ」
いやガチで奴隷なんですね魔物さん達……。
私を召喚したのが教会の人間でよかった。それ以外だったら言語理解もできずに奴隷として契約させられてたかもしれないわけで――考えるだけで恐ろしいよ。
「グルルルルゥゥッ!!」
んー……この鳴き声は……犬の魔物!
魔物の居ると思われる場所を魔力感知で魔力を揺らし、大まかな姿を確かめる。
やっぱり犬の魔物だった。
正体がわかると同時に犬の魔物が私達の前に飛び出す。それと同時に雪姫と胡桃ちゃんが私を守るように前に出る。ちなみに雪姫が大剣『
この魔物も魔人の奴隷かぁ……可愛そうだなぁ〜……。
と思いながら魔物を観察していた私は犬の魔物の首に、首輪がはめてあるのに気がつく。
ガチの奴隷じゃん……。
可愛そうだなぁ。と思った私は、雪姫に攻撃しないように攻撃しないように
――パリンッッ!
ガラスの割れるような音が響く。
割れたのは首輪ではなく首輪を守っていた結界。
「結界まで貼られてるってどういうことよ……。どんだけよ魔人族……」
魔人族全員へ半ば呆れながら私は呟く。
「首輪に結界つけるとかアホなんじゃない? アホなんじゃない? 馬鹿なの?」
雪姫が煽りだした。
何故煽る……。
すると……。
「誰がアホじゃ誰が!!」
そう言って怒りのオーラを撒き散らしながら、明らかにアホそうな魔人族の男が岩陰から姿を表した。
「茉莉、雪姫の作戦、成功した」
胡桃ちゃんが言った。
なるほど、雪姫は最初からアホ魔人族のことに気づいてたのか。
「雪姫ナイス!!」
アホ魔人族の男は犬の魔物に何やら命令をしている。
どうせアホ魔人族のことだし、『突っ込め!』とか『殺れ!』みたいな単純な命令でしょ――。
違った。犬の魔物が魔力を集め始めた。
やがて魔力は塊となり、その大きさはバスケットボールを超えた。
雪姫や胡桃ちゃんはオロオロしている。
しかし私は慌てない。クールな女はかっこいいのだ。普段? 知りませんよ。
私は夕焼けをアホ魔人族に見せつけるように構えた。構えただけでまだ何もしない。まだね。
アホの魔人族の男は私が杖を構えたことに慌てたように犬の魔物にもっと急げと命令しているようだ。
犬の魔物は未だに魔力を集めている。しかしまだ足りないらしい。ワクワクするねぇ。
まだまだ時間がかかりそうだし、新しくモントに教えてもらった魔法のことを説明しようと思う。
まずは『
絶対に攻撃ができないわけではなく、相手の足元に出現させたりすれば間接的に攻撃できる。
次に中級魔法、『炎弾・一式』。これは私のよく使っていた魔力での連続射撃の火属性バージョンね。ちなみにこの魔法は、『二式』、『三式』と上位互換が有るらしい。発動時の炎の演出はどれも同じだが、威力で一式かそれ以上かが決まるらしい。
ちょうど犬の魔物が魔力を集め終えたようだ。まだあと何個か有るんだけどまたの機会でいいかな。
私は夕焼けを構え直し、『魔力操作』を使い、犬の魔物が集めた魔力のコントロールを奪った。
アホの魔人族の男の顔が青ざめていく。私が犬の魔物が集めた魔力を奪ったことに気づいたようだ。
ついには腰を抜かして地面にへたり込んでしまった。
「可愛そうだし終わらせてあげる」
私はそう一言アホの魔人族に伝える。作戦は良かったんだけど、相手が私ならしょうがない。アホの魔人族の男の運が無かっただけだ。
「――炎の精霊よ、我が魔力を糧として、全てを焼き払う力をここに
さっき説明していない、新たに習得した魔法だ。ちなみに中級魔法だ。
「『聖属性・爆炎・一式』!!!」
私は叫ぶ。喉がちぎれるくらいに叫ぶ。そうしないと私はまだ発動できない。
何故こんな強い魔法を使うのかって? 危険だと思ったからだよ。犬の魔物がね。正直、アホの魔人族の男はそうでもなかった。なのに、犬の魔物には脅威を感じた。だって短時間であの量の魔力を集めたんだよ? 危険視しないほうがおかしい。魔力を枯渇させてでも打つべきだと私は判断した。
私の放った『聖属性・爆炎・一式』は真っ直ぐに敵二人めがけてのび、貫くのみで収まるはずもなく、骨すら残さず消滅させた。
聖属性は習得は難しいものの、魔人にたいして、【
「……茉莉、やりすぎ」
「そうだよ茉莉! また階層ごと消しちゃってどうするの」
「茉莉、流石にわたしでもこれはフォローできません……結界で身体を守るのが精一杯です……。」
おっふ……。
三雲茉莉に3000のダメージ。かなり痛い。
「ごめんごめん、ちょっと身の危険を感じてね」
【ユニークスキル、
うん。タイミング……。その声は私にだけ聞こえるようでモント達は笑いあっている。
「平和だなぁ……」
仲間が居るってすっごく幸せなんだなぁ……みたいなことを考えてたら声が漏れ出ちゃった。
「ワンフロア消しといて何いってんの、茉莉ぃ〜」
「――ごめんってぇ〜」
とりあえず謝っとこう。
余談だけど、私はモントと『爆炎』を練習しているときに、意図的にそのときにいた階層に大穴をこじ開けようとしたんだけど、そんなズルはできませんでした。
それから新たに手に入れたユニークスキル【危険予知】。これは任意に発動させられるわけではないらしく、本当に危険なときに、自分がどうなるかが脳に直接映像として送られてくるものだった。
試すために、モントに爆炎を使ってもらったんだけど、すごく怖かった。
慣れていいのかはわかんないけど……。
私達はまた新たな階層の探索を始める――。
「この迷宮深すぎ――!!」
私の叫び声が迷宮に響き渡った――。
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ユニークスキル:【
ノーマルスキル:【
夕焼け(杖):【
モント
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