第8話 元引きこもりはスキルの能力をしっかり理解し行使する

 困っている。三雲さんが見つからない。

 三雲さんが居ないことに気づいてすぐに僕達は来た道を急いで戻ったのに、三雲さんはそこに居なかった。

 争った形跡が無いことから、恐らく三雲さんは生きている。


「三雲さんどうしてるかなぁ……」


 すでに三雲さんとはぐれて一日経ってしまった。

 時間が立つほど三雲さんの生存確率は下がってしまう。

 一刻も早く見つけなくては……。


 ――生きててくれ。


 僕は何度も心の中で願いながら、眠りに落ちた――。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 迷宮ダンジョンで迷った私、三雲茉莉みくもまつり迷宮ダンジョンの中で二日目の朝を迎えた。


「ん〜〜〜〜〜っ、はぁ〜〜〜〜〜……よく寝たぁ」


 私の体内時計が朝の6時ごろだと教えてくれた。

 錬成で作成した小部屋から出る。結構快適だった。

 そして、更にわかったことがある。

 なんと、炎熱操作は自分の周りの温度の調節ができたのだ。


 錬成で作成した小部屋を土に戻し、迷宮の湧き水で顔を洗う。

 顔を洗い終えた私は、魔人肉を取り出し、それを食べる。調味料が欲しい……。味がワンパターンで流石に飽きそう……。


 今日からは迷宮の攻略を主に行いたいと思っている。

 武器(攻撃手段)と食料は確保できたし、大丈夫なはず。

 下の階に続く階段を見つけて下る、それを繰り返せば攻略できると思っている。できなければ他の方法を探すしか無いが……。


 探すのが面倒だった私は、錬成を使用し、地面に穴を開けようとした。

 ズルをして迷宮攻略をさっさと終わらせようとしたのだ。

 しかし、さすがは作成者。そんな姑息なズルができないように、少しでも土を移動させると、そのそばから土が戻ってしまうようだった。

 

「うぅ……しっかり攻略しろってことなのね……はぁ」


 仕方無い、しっかり階段を探して下りるしか方法がないようだ。

 抜け道はないのかぁ……ん?まてよ?

 

 私はどうやってここに来たんだっけ?

 そう、トラップだ。それも転移のやつ。

 明らかに怪しいボタンを押したら、いきなり光りに包まれてここに飛ばされたんだ。

 それまでの他のトラップは全部ボタンじゃなかった。

 つまりボタンを片っ端から推していけば――いやだめだ。もし全部が転移のトラップでなければ私は死んでしまう可能性がある。そんな危ない橋は渡ることはできない。(じゃあ何故ボタンを押したんだ、みたいな質問は受け付けません)

 ということでトラップに自ら掛かりに行く案は却下。命を失っちゃったら意味がないからね。


 とはいえ、魔人と戦闘するのは極力避けたい。今までに何人もやってきたけど、そのたびに吐き気がすごかった。間接的にやるのならまだ大丈夫だけど、短剣で直接グサッとやるのは嫌だ。思い出しただけで吐きそう……。

 となるとスキルを使わなきゃいけない。まだ私は魔法は使えないためこうするしか無いのだ。

 魔力操作で魔力を一箇所に集め、少しずつ勢いをつけて飛ばす。ガトリングをイメージしながら。

 こんな感じでいいのか。殺傷能力も高そうだし……。

 

 突然、私の集めた魔力が少し揺れた。


【ユニークスキル、魔力感知を獲得しました】


 これは……多分そのままの意味だろう。

 さっそく使用してみる。魔力操作で魔力を操作し、あちこちにゆっくり飛ばしていく。すると、迷宮内の構造や位置などが、ゲームに表示されるような簡単な情報となって私の頭に流れ込んでくる。

 どうやら、魔力はゆっくり飛ばせば、ある程度進み、何度か反射できるらしい。

 そして魔力が揺れた理由がわかった。


 魔人族だ。それも二人。

 一人は羽が生えている、もう一人は腕が四本ある。

 向こうはまだこちらに気づいていない。

 ――先に仕掛けよう。

 逃げるという考えはなかった。同じ迷宮に居る以上、絶対に対峙するはずだから。


 私は影から、魔力操作で周辺の魔力を集め、それを圧縮していく。それと同時に光がどんどん増していく。

 魔人族の一人がこちらに気づいてしまった。羽の生えている方だ。


 魔人族(羽)が何か(恐らく魔法)の詠唱を初めた。そして隣のもう一人の魔人族も私に気づく。


 私は魔人族(羽)の詠唱が終わる直前で魔力の塊を勢い良く飛ばした。イメージはピストル

 魔力の塊は魔人族(羽)にしっかりと命中した。着弾時、魔力の塊は、もう一人の魔人族までをも巻き込み、爆発した。

 圧縮に時間がかかるとはいえ、威力は申し分ないようだ。

 魔人族二人は、悲鳴を上げることすら許されず爆発に飲み込まれた。

 

 血が吹き飛ばなかったところを見ると、完全に消滅したようだ。

 魔力感知で周りの魔力を確認してみる。


 私の周囲の魔力が減っていた。

 当然といえば当然だが、魔力操作で集められた魔力は、爆発に使用され消えたと見るのが妥当だろう。

 となるとこの技はあまり使えないということなのだろうか。

 対策を考えなければ……。


 智慧者を使用しつつ数秒考えてみる。そして思いついた。

 

 ――自分の魔力を使えばいい。

 早速やってみる。

 魔力操作で自分の体内から魔力を放出しつつ、それを制御、そして圧縮。

 

 ――できる。


 わたしの魔力はすでに、無限と言っていいほどにまで増えている。日頃の訓練の賜物だ。


 私は、魔力操作で自分の魔力を放出しつつ、魔力感知で周辺を探って下に下る階段を発見した。

 階段を発見するまでに何人もの魔人族を殺した。

 すべて羽の魔人と腕が四本の魔人だ。

 向こうが私に気づく前に先に仕留めた。

 この階層の魔人族はあまり強くなかったが、次の階からいきなり強くなる可能性もある。気を引き締めなければ。


「――私は絶対に強くなる」


 そうつぶやき、私は次の階層へと足を踏み出した――。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 三雲茉莉みくもまつり


 ユニークスキル:【智慧者】【忍耐力】【持続力】【士気高揚】【孤独者】【魔力操作】【炎熱操作】【魔力感知】


 ノーマルスキル:【錬成】


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る