第4話 やっべぇパーティーだったら


「ほら、二人とも参加してる他の人達を見てごらんなさい」 


 私と由黄ちゃんは婚活パーティー会場を見渡した。色とりどりの覆面をした人達が、私達を含め男女15人ずついて、パーティーの開始を待っている。


 みんな左の胸に白いハート型のバッジを付けていて、男性は青、女性は赤で番号が書いてある。朱理先輩が11、由黄ちゃんが12、私は13番。

 あとで気に入った人の番号を記入するので、相手の番号や特徴をメモするボールペンと紙を胸ポケットに入れている。


 覆面は頭からすっぽりかぶるタイプで、目の周りが、くりぬかれている。口の周りは鼻の下あたりから開いていて、呼吸・食事・会話ができる。

 横から見ると鼻が高く見えるように作られていて、私は仮面舞踏会の仮面に似てると思った。耳の部分は、目立たないが小さな穴がたくさんあって、音が聞こえるようになっている。


 由黄ちゃんのかぶっている覆面のように動物みたいな耳が付いていたり、ツノがついている覆面をかぶっている人もいる。

 覆面レスラー好きの私は、男性ではなく覆面をじっくり見て周りたいと思った。


「みんな覆面してるから銀行強盗みたいに見えるでしょ。その中でもあなたたち二人は本当に、かわいいわ」


「本当ですか? 本当にかわいいですか?」


「藍ちゃん、似合うわよ。ミステリアスで謎めいてるわ」


「それは両方おなじ意味です」


「ほんとに素敵よ。変身した気分にならない? いつもの自分と違うって思っていいのよ。ここだけの話、私達以外の女は全員ブスよ。私達が一番覆面が似合うわ!」


「まじすか」


「ええ、そうよ!」


「先ぱぁい、私はどぅですかぁ?」


「由黄ちゃんの黄色い丸い耳がついた覆面かわいい! 由黄ちゃんの穏やかな性格にピッタリよ! 男性達、緊張してるだろうから癒やされるんじゃないかしら」


「そうですかぁ。ありがとうごぜぇますぅー」由黄ちゃんは素直に喜んだ。


「藍ちゃんも覆面じゃ隠しきれないオーラが、にじみ出てるわ!」


「朱理先輩、オーラって何ですか? 随分とあいまいじゃないですか?」

 オーラって……。もっと他に言う事なかったんですか。


「ええっと、そうねえ……。何も悪い事を企んでない、まっすぐで正直な感じが伝わってくるわ。二人とも、覆面かぶっても脱いでも、すごくかわいいわ。自信持って行きましょ!」


「はぁい。このパーティーってどういう流れなんですかぁ?」


「はじめはケーキを食べながらのフリータイムで、気になった人に自由に声かけていいんですって。

その後は、3分間ずつ男性一人ひとりと順番にお話。

それが終わったら印象がよかった人を3人、第1希望から第3希望まで選ぶ。

お互い選んでいたらカップリング成立。

そのカップル同士だけ、素顔が見られるんですって。」


「カップリングしないと素顔が見られないんですか。カップル成立後に顔が好みじゃなかったらどうするんでしょう。」と私。


「それは仕方ないわよね。」


「でもぉ、明るい雰囲気の婚活パーティーみたいで安心しましたぁ。」


「どんなところだと思ったのよ。」


「『覆面パーティー』としか聞いてなかったので、やっべぇパーティーだったら、どぉしよぉってドキドキしてましたぁ」


「えっ、婚活だって言わなかった?」


「聞いてないですよぅ」


「あら、それでよく来たわね。ちゃんと言ってなくて、ごめんなさいね。

婚活よ、婚活。これから未来の旦那様候補を探すの。

でもね、あせらなくていいの。今日はきっかけを作るだけでいいの。

『私、この人と結婚しなくちゃいけないの?』とか難しいことは考えてなくていいのよ。

なんとなく次も会ってもいいかなと思う人を選べばいいんだから」


「先輩は、あせってそうですが」


「……その通りよ。だって早く結婚して子供がほしいんだもの!」


「男性に怖がれないよぅに、落ち着いてくださいねぇ」


「わかったわ!」

 朱理先輩は深ーく深呼吸した。


 婚活パーティーの司会者がマイクを持って、覆面婚活パーティーの説明と始まりの挨拶をした。



「それじゃあ、私は1人でいい男を探しに行ってくるわ! 3人で固まってたら、男性から声かけづらいでしょうからね。じゃあね! 2人共がんばってね!」


「はーい」「はぁい」


 朱理先輩は、さっさか歩いて行った。もう男性に話しかけている。


「朱理先輩、本気で結婚相手がほしいならこういうパーティーじゃなくて、結婚相談所とかに登録した方がいいんじゃないかな」


「パーティー好きなんですよぉ。きっとぉ」


「そっか! だから、こういう自分から行動しないといけないような婚活パーティーでも苦じゃないし、いっぺんにたくさんの人と会えるから効率がいいんだ。すごいなあ。私、朱理先輩みたいに自分から行くのは苦手なんだよね」


「いつも参加してる時は、どうしてるんですかぁ?」


「朱理先輩が私に合いそうな人を連れてきてくれるの」


「今日も連れてきてくれますかねぇ」


「フリータイムの後に、一人ひとりと話せる時間があるから、今日は連れてこないんじゃないかな」


「そうですかぁ。じゃあ今日は積極的に行きましょうねぇ。私は婚活するの初めてなので、慣れるまで藍さんと一緒にいてもいいですかぁ?」


「うん、大丈夫だよ。とりあえず、ケーキ選ぼう」


「はぁい」


 由黄ちゃんと二人でケーキが並べてあるテーブルに向かった。


「うわあ。ケーキがいっぱいある。プリンやゼリーもあるね。でも随分と小さいんだね。」普通のケーキの3分の1くらいの大きさだ。


「大きいとすぐお腹いっぱいになっちゃいますから、これぐらいの方がいいですよぉ。いろんな種類が食べれますよぉ」


「それもそうだね」


「飲み物もありますよぉ。コーヒー、紅茶、ジュースがありますぅ」


「私、オレンジジュースにしよーっと」


 グラスにオレンジジュースをそそごうとしたら、金色の覆面の男性が近寄ってきた。


「ケーキを食べた後にオレンジジュースを飲んだら、すっぱく感じるだろう。やめたほうがいい」


「えっ」


















 




















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