▲▲つ59っ! また、あえたね!やくそく、はたせたね!

 そんなある日、俺はアビーと一緒に出掛けていた。

 いつもの、突拍子もない決断で、スフィア狩りに行きたいと言って。

 「……。うん、そうだな。」

 いつも予定のない俺は、軽く頷いて同意、アビーと一緒に出掛けた。

 前のように、皆と行くのかと思ったが、どうやら集まらなかったらしい。

 なんでも、いきなりだからこればっかりは、とのことで。

 アビーの突拍子のない判断は、今回は災いになったのかもね。

 マフィンなんて、思いっきり呆れていたし。

 「ははは……。」

 俺は乾いた笑いを浮かべてしまい。

 「しょーがないや。じゃ、二人でいこっ!えへへっ!」

 「……だね。」

 アビーは何も気にしていない様子で、いつもの笑顔を向けて。

 俺は、乾いた笑みから、らしい笑みにして、答えた。


 その、スフィア狩りをする場所だが、最初俺が行った場所とは違う場所のようで。

 村から、真っ直ぐ北上、森を抜けた先らしい。

 二人、いつもの荷物を持ち、向かうならば。

 「よしっ!いっつも以上にがんばるぞー!」

 アビーが先頭に立ち、駆け出したなら、気合一声、森の木に駆け寄っては、跳躍。

 その木々を蹴り、大きく跳躍して、森を駆け抜けていく。 

 その速度は、走る速度を越えていて。

 「?!は、はやっ!」

 俺は、その光景に、つい声を漏らしてしまう。

 「……。」

 このままでは、見失うかもしれない。ならば、と俺もまた、跳躍する。

 アビーのように、森の木々に駆け寄っては跳躍し。

 それから、木々の間を素早く飛び跳ねていく。

 「!おー!」

 どうやら俺のこと、見ていたらしい、先からアビーが感心した声を上げていて。

 「大和ちゃん!もっと上手になったねぇー!!えへへっ!」

 からの、嬉しそうな声。遠くながら、笑顔も見えた。

 そこまで、成長していたのか、俺は。つい、驚いてしまう。

 木々の間跳躍し、そうしている内に、アビーに追い付く。

 追いついたならで、アビーは大きな枝に腰掛けていて。

 俺も、近くに止まり、様子を見ると。

 俺が追い付いたと笑顔を見せたら、そっと耳を澄ましている。

 鼻も動かしてもいて。

 「……?」

 同じように俺も、耳を澄まして、鼻を動かしたなら。

 感じたのは、波の音と、磯の香り。

 ……海が近い?

 「……海?」

 「うん!そうだよ!」

 「……何でまた?戦場とかじゃないんだ……。」

 海のようだが、この前みたいに、戦場じゃないのはなぜだろう。 

 俺は聞いてみると。

 アビーは、いつものように笑顔を向けて。

 「そろそろね!海の方から、色々な物が流れて来るかなって。海岸に行ったら、色んな物が、流れ着いていることだあるの!今日はそこ!」

 「……へぇ。」

 何か、流れ着いていることもあるらしく。俺は、感心した。

 一休みしたなら、アビーは木を降りて、歩き。

 俺もまた追従したならば、森を抜けて、海原が見えて。

 岸壁の高い所のよう。

 「……。」

 俺はその光景に、デジャヴを覚えて。

 俺が、投身自殺をしようとした場所に、近い気がするな。

 そう感じたなら、あの、前世の自分を思い出し。

 物悲しさと、鬱屈をつい顔に表してしまった。

 「?どうしたの、大和ちゃん。」

 「!」 

 俺が、暗い表情をしていると感じ取ったアビーは、顔を覗き込んできた。

 俺ははっとなり。

 「……いや、何でもない。ちょっとね、昔のこと、前世のこと思い出して。」

 「ふぅん。……何だか、悲しそうだったよ?」

 「……まあ、辛いことがあったからね。けど、いいや。俺は今、皆が頼りにする、ウィザードの大和なんだからな。」

 「……えへへっ。」

 まだ悲しい。けれども俺は、それを拭い捨てるように、笑顔を向けて。

 見たアビーもまた、心配な表情をやめ、いつもの屈託ない笑顔のアビーになって。

 「それじゃ、いこっ!」

 気を取り直したと感じ、俺を手招いて先導する。

 頷き、またその後ろを追った。


 「ほら!あれ!!」

 「!」

 進むことには、砂浜見える場所に立ち止まり、アビーは指さして示すことには。

 見ると、残骸、それもマキナの残骸が多数、浜辺に打ち上げられていて。

 なるほどと、思ってしまう。

 確かに、これならスフィア狩りもできるな。

 そう思っていたのもつかの間、もうアビーは駆け出していて。

 「!……。」

 俺も俺で、見失わないよう駆け出した。

 アビーらしいや、思いながら。

 砂浜辿り着くと、残骸が多数転がっていて。

 かつ、向こうにはさっきまで俺たちがいた、岸壁も見え。

 改めてみると、岸壁は高く。 

 その岸壁はさておいてと、視線を戻して。

 転がっている残骸は、海水や潮風に晒されていてか、どれもこれも錆だらけ。

 使えそうな物はなさそうである。スフィアぐらいか、……使えそうなものは。

 アビーが、両手を上げて、はしゃぎ、残骸へ突進していく傍ら。

 俺はまた岸壁に目をやり。

 ふと、感傷に更けてしまう。

 その岸壁の上に、前世の自分を思い描いてみては、口を動かして。

 「……人生に絶望した俺は、猫耳少年に転生して、世界を救っちゃいました……。なあ、俺は、魂は救われたよな?」

 こう、転生して、新しい生を得て、生活していく。

 あの時消えた、前世の自分、……その冥福を祈るかのように。

 ふと、前世の自分は、羨ましそうに見て。

 「!」

 やがて、その瞳に光が宿るなら、さも今も生きているかのよう。

 求めるように、俺に手を伸ばしてきた。

 なぜか。理由は分からない。けれど俺は、応じるように手を伸ばして。

 その時、前世と現世の手が、視界にて重なり合う。

 俺がそう思い描いたからか?

 いや。

 これは、そう、今もなお、生きているかのよう。

 この世界のどこかに、生きているかのよう。

 生きていて、魂を持つからこそ、求める。

 生きていて、魂を持つからこそ、応じれる。

 意志を、前世の自分の意志を一瞬感じた。

 「?」

 ただ、なぜかとか、不可思議とか。

 疑問に思うものの、だが、それは途端空を切る轟音に消されて。

 突風もあって俺は、目を瞑ってしまい、開けた時には、それら消えていて。

 ……ただの幻想。俺はもう、深く考えないことにする。

 さて、と。先ほどの轟音は何事と空を見れば。

 「!」

 戦闘機が三機編隊で空を進む姿を目にする。共和連邦の、あの。

 また思うことには、あの空母の上で会った、三人組で。

 ……元気にしているかな……。

 「やーまーとちゃん!はーやくっ!」

 「!」

 そんな思い更けるのも、アビーの呼び声で消えて。

 見たら、遠くの方で手招くアビー。

 頷き見せて、俺は駆け寄って。

 「変な大和ちゃんだね?今日は色々考えてて。」

 「……そう?」

 駆け寄ったなら、アビーは顔を覗き込み、首を傾げてきて。

 俺は、そうかなと、同じように首を傾げる。  

 「うーん。もうちょっと休んでからがよかったかなぁ?」

 原因を探っている。

 「……いや、何でもないよ。それより、早速やろうか?」

 話切り替えは、俺がして。それよりも、スフィア狩り、やろうよと。

 「!そうだね!大和ちゃんがいいなら!えへへっ!」

 不思議がる様子は拭い去って、アビーは俺に合わせて、取り掛かる。

 「あ!れーせある?」

 「!もちろん。」

 早速取り掛かるものの、そこで俺に聞いてくることは、レーセのことで。 

 言われたから、俺は取り出し見せた。

 見せたなら、アビーは慈しむように笑みを浮かべて。

 「大和ちゃん、あたしの使ってくれてるんだね?」

 「……うん。だってさ。アビーがくれた物だし……。」

 「……。」

 「?」

 言ってくることは、俺が物を大切に使っているということで。

 俺は、アビーがくれた物だからと、大切にしていると答えたなら。

 向けていた笑みが、さらに華やぎ。

 その様子に俺は疑問覚え、首を傾げてしまう。

 早速取り掛かり。

 なお、スフィアを取り出すのが難しい場所には、俺がレーセをあてがって。

 それら繰り返して、二人ながらもスフィアを沢山取り出していく。

 《注意!アクティブなスフィアを確認。》

 「!」

 そうしている最中に、背中の中にある盾が、何か反応をキャッチしたようだ。

 そう言えば、以前も隠れているマキナがいたよね。まさかと俺は身構えて。

 「ねぇ!!見て見て!!!」

 「?!」

 注意の中、アビーは何か見つけて、指さしていて。

 「!あ、これ……!!!」

 「?」

 俺は覗き見たならば。

 「!!」

 それは、ボロボロになってはいるが。

 あの、帝国の長城にて、巨大なスフィアをオーバーロードさせ。

 帝国を降伏させるきっかけを作った、盾だった。

 あの、博士風の人を投影した、盾だった。

 けれど、疑問一つあって。

 レプリカと言っていたよね、なら、同タイプの、他のでは。

 「……なあ、果たして本当にあの盾か?」

 「?わっかんないや。」

 「……。」

 《スキャンいたします。》

 「!」

 疑問口にするが、アビーは首を傾げるばかりで。代わりに盾が動いてくれた。

 ほんのりと、俺が光に包まれ、そのアビーが指さす盾に手を伸ばしたら。

 光もまた伸びて。

 光に当てられ、例の盾は何か反応しているみたいで、点滅を繰り返して。

 《スキャン完了。個体識別情報より、管理者および、その一同が会した個体で間違いありません。なお、スフィア、記憶素子共に健在ですが、他、フォトンコンデンサ、フリークエンシージェネレーター、AWS・FCS、スフィアリンクシステムが破損、ダメージレベルが高く、使用には向きません。》

 「……盾さんなんだって?よくわっかんないや。」

 「よくわっかんないや。だが、俺たちが会った盾で間違いないみたい。」

 調べた結果を、告げては来てるが。

 だが、よく分からず、俺は首を傾げる。

 「へぇ。」

 アビーは、溜息交じりに、頷くなら。

 「……で、生きている……のか?」

 さてしもの疑問、生きているのかと。

 生きている。

 そう、あの博士が。

 《AIに問題はありません。他、記憶情報にも問題はありません。つまり、生きています。再度使用する場合は、修理が必要ですが。》

 「……分かった。」

 何か、チェックしたならば、間違いなく俺たちが出会った、あの盾で。

 なら、博士風の人もこの場合生きているのかもしれない。

 再び使う時は、完全に修理が必要みたいだけどもね。

 「!じゃあ、……約束、果たせたね?」

 「約束……?……!!」

 それならそれで、と盾を見付けたアビーが。

 盾に掛ける言葉は、約束を果たしたと、微笑みを添えた言葉であり。

 最初、何のことだか分からないでいたが、すぐに気付く。

 あの時、アビーが約束したのだ、見つけると。今その約束は果たされて。

 やっと見つけてもらえたと、微かに中央のスフィアが輝く。

 波しぶき舞う中、朧気な光返す盾に、天から光差し込んで、照らし。

 その光、俺たちを照らしていて。

 その中で俺たちは、光を放つような笑顔を見せていた。


 「えへへっ!お揃いだね!!ほら!!」

 「!……あはは。」

 光り輝く盾を、自らの腕に取り付けては、自慢げに言って、見せてくる。

 丁度それは、俺が腕に付けていた盾のようで、お揃いとこちらも笑み。

 だけじゃない、ここまでアビーらしいや、と。

 

 ……さて、ここで猫耳勇者の物語はおわるが、ここでの生活は、続く……。

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