act2 禍津波

鬱蒼うっそうと茂った森があった。

人の手が一切入らずに伸び伸びと育った生命の森。

それを


ドゴゴゴゴゴゴッッッッッッッ!!! と。


滝が流れ落ちるような轟音を立てながら『黒い波』が侵攻していた。

『黒い波』と表現しているが実態は赤目に黒い体の蛇の集まりで、それが幅500mに渡って展開され、蛇の数は優に10万を超えていた。

ソレは、腹が減っているんだと言わんばかりに動物を飲み込み、川を飲み込み、木を飲み込み、なおき足らない。


『対象は今も前進中……って加速&増殖してるんだけどコレ!五分もかからずに村に突っ込む!』


加速しているという事は当初想定していた迎撃計画からズレることを意味していた。新人にそんなアドリブをさせることに三鬼は若干申し訳なく思ったがしかし、他に迎撃できる人員がいないのだから仕方がない。

三鬼も今は地球から無線通信を繋いでいた。出来ることは強力なARTアンリアルツールの使用許可を出すことだけだった。


『まっずい、『黒い波』は森の生命力を燃料にしてる!早い内に叩かないと手が付けられなくなる!』


波が通った後には生命力を吸い取られた『食べかす』が残っていた。それはペンキをぶちまけた様なドス黒い色の木々や動物で、原型をかろうじて保っていたが一切動かない。死んでいるのだろう。


『初実戦で申し訳ないけど、アドリブでお願い。最初に教えた目標地点から1kmくらい先に設定すれば多分いける!大丈夫、当たるように神様に願ってるよ』

「はは、神はもう地球そっちにいないじゃないですか……大丈夫です。絶対に決めます」


三鬼の冗談に軽く――無理矢理だが――笑って、覚悟を決める。


そうしてツラヌイは、持っていた黒いアタッシュケースを空に放り投げた。



――No.12よりARTアンリアルツールへのアクセス許可要請。

――No.11より『グングニル』へのアクセスを許可。規約を遵守じゅんしゅし、正しく運用して下さい。




次の瞬間


極光きょっこうが、黒い波を吹き飛ばした。

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