はんらんのうた【連作短歌】【創作エッセイ】

袋緒花緒

連作短歌「英霊に捧げる短歌数多あり」

腹が減り喉が渇くは死の間際

死後の水は喉を通らぬ


空仰ぎ日差し眩しく手をかざす

敬礼に見えそっと下した


後ろから「かへりみはせじ」像あおぐ

像でなくともかえりみぬ者は


英霊も神さえここにはおりはせずただいるはぼく

そして偽善者


今ぼくが腹を空かせているとしてきっと彼らの飢餓には届かぬ


英霊になると決意し散るでなく英雄として生きる道なく


死者はただ黙するのみにて語らねば

勇を語らう生者いるのみ


英霊に捧げる短歌数多あり捧ぐ場所なく中空を舞う


「かへりみはせじ」の像が僕らを睨む

なぜ像ならぬ人たるお前たちはかえりみぬのか

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