インターミッション3 激闘!第24臨時編成艦隊
共和国軍のチャン・ユーリン提督が反乱を、リシャール公と同盟。
共和国のスズハル提督が順調に敵を撃破し、ついに帝国領にて共和国と帝国の同盟軍がチャン艦隊を捕捉……敗走したチャン艦隊はカヴァ宙域にまで追い詰められる。後にカヴァ宙域会戦と名付けられた戦闘の始まりだった――
帝国領であるカヴァ宙域に無数の艦艇が向かっていた。
ノートン大将とその参謀となったスズハル中将に率いられた直轄艦隊約10万隻だ。艦艇はそれぞれリアクト機関をふかし青白い光を放っていた。堂々とした進撃だ。
「ふわぁー……いよいよ出番かぁ」
オーズワースが大あくびをする。ぼさぼさの赤毛の男だ。中将の階級章をつけ、指揮官席に座っている。
「提督……さすがに欠伸はどうかと」
大佐の階級章をつけた黒髪の女性がたしなめた。
「いやあ……これまで帝国艦隊や味方がチャン・ユーリン提督を追い詰めていて、いまわれわれはその退路を遮断に成功しつつあるところなわけで……つまり今まで暇だったわけで……ファリン大佐」
「待機が長かったのは認めますけど」
「でしょ、ふわぁー……」
「ほらまた欠伸ぃ」
ファリンはため息をついた。
第24臨時編成艦隊は、スズハル中将が大統領エドワルドと連携して大増員した際にできた艦隊の1つだった。2割程度が現役の将兵で、残りは予備、退役軍人、程度の軽い傷病兵から成っていた。
艦艇も旧式艦艇や急造した廉価版の艦艇、なかには商船構造の武装商船紛いまでそろえられており、とにかく前に火力を投射できてある程度の戦闘ができればよく、艦隊行動時もあまり遅れずについていければ良い、という最低限の基準だった。
もしもこの第24艦隊が正規編成の艦隊とまともに戦ったら、正面から撃破されてしまうが、とにもかくも数だけは揃えて敵を叩き潰すのが目的の「その他大勢」艦隊の1つだ。現在はノートン大将の直轄艦隊に組み入れられている。
艦隊の提督はオーズワース臨時中将。
さっきから欠伸を連発している、ひょろりと背の高い30半ばの男だ。
彼を支えているのは首席幕僚のファリン大佐。彼女は29歳で宇宙軍大学を卒業した俊秀だ。
もっともこの世界では業務のかなりの部分をAIが支援できるため、出世したい者は若年でも階級はどんどんあがる。さらに死傷率が高いために早く人材の穴を埋めなければならないのも一因だ。
それでも今回の臨時の大増員では共和国でもかつてない規模の艦艇が現役復帰、新造、購入、改造されたため、人員も不足していた。オーズワース提督はついこの間まで戦闘艦隊ではなく輸送船団を率いていたし、ファリン大佐にいたっては確かに優秀だがキャリアのほとんどを士官学校で学生たちに授業を行うことで過ごしてきたため、実戦経験はほとんどない。
飄々としているオーズワースと違い、ファリンは内心かなりドキドキしていた。
ただ第24臨時編成艦隊はあくまで正規艦隊の補助だ。
チャン・ユーリンの反乱軍もだいぶ弱っているというし……と考え、何とか平静を保とうと考えていた。
「おっ……来たみたいだよ、ファリン大佐」
「え……」
メインモニタにはチャン艦隊の情報が映し出された。
もとは共和国の艦艇だが解放軍艦隊を名乗っている。塗装も異なっていた。
どの艦艇も戦闘の結果ぼろぼろだったが、整斉として退却してきたのか陣形に乱れは少なく、すごみがあった。
「3個艦隊も残ってるねぇ、ははは、凄いなあ10万隻以上の艦隊と戦ってきたのに」
「ちょっと提督……笑いごとでは……」
「いやぁあんまりにも凄くて笑えてきちゃったんだよね」
そうこうしている内にノートン大将からの指示がくだる。
第24臨時艦隊はその指示に従い、右翼側に展開した。
同時に右翼側を進むのは第25艦隊、同じく臨時編成艦隊だ。
「これぇ……変な方向から攻撃されたら私たちヤバくないです?」
「かもねぇ……」
とことんオーズワースは表情が読めない。楽しんでいるようにさえ見える。
ただふと何かに気付いたのかファリンに視線を向けた。
「もしかして、ちょっと怖かったりする?」
「だ、大丈夫ですよ! 実戦は全く初めてというわけでは……」
「あれ? そうだっけ? 君のキャリア上は……」
「き、気にしないで大丈夫です! さぁ敵ですよ!」
その間にノートンの指揮で全艦隊は前進を続け、チャン艦隊を飲み込んだ。
24艦隊はチャン艦隊を包むように機動し砲撃を叩きこんだ。
寄せ集めとはいえこれだけ数が揃うと相当な火力だ。
チャン艦隊も光線で応戦する。
しかしチャン艦隊は劣勢にも関わらず食い破ろうとこの期に及んで一糸乱れぬ機動を見せつけた。
「あっ!」
猛烈な戦闘中、隣を進んでいた第25臨時編成艦隊に猛烈な砲撃がつきささった。瞬時にメインモニタから生存を示す味方が消えていく。
「おっ」
オーズワースもメインモニタに釘付けになる。
「敵です! 我々からみて直上方向! これは……帝国系の艦艇ですが……分析中です」オペレーターが叫んだ。
「裏切りだったら嫌だよねぇ、ははは」
「しゃれになりませんよオーズワース提督……」
「これは……リシャール公の艦隊です! かなりの数です!」
チャン・ユーリンの救援に来たのはリシャール公だった。
32000隻もの艦隊を率いてやってきたのだった。
その中の8000隻ほどが明らかに次はこちらを狙っていた。
突如として第24臨時編成はかなり不利な体勢からリシャール公の艦隊と戦うことになってしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます