推理は続く

 「なっ!……………」


 ボンゴの顔色が変わった。


 いきなりの指摘で動揺を隠す暇など無かったようだ。


 ま、狙ってやったんだけどな。


 「な、なにを言うのですか?トーヤ様?」


 トーヤ…か。


 正しくはトウヤなのだが、まあ良い。


 「お嬢様に何という事を…もしやお前も盗賊の一味!」


 そう言ってボンゴ、もといニセ従者は短剣を取り出した。


 薄汚れた、使い込んだ短剣。


 ビンゴだな。


 「おかしいと思ったんだよな。


 なんでお前達は襲われたのか?ってな。」


 そこで俺は引っかかったのだ。


 「それは簡単だ。お嬢様を攫って人質とするためだ。」


 偽従者は短剣をこちらに向けて威嚇する。


 「それがおかしいんだ。こっそり連れ戻したのに何で居場所がバレてんだ?」


 さっき言っていた。こっそり連れ戻したのにバレた。


 その原因は隠密性に問題があったか、内通者が居たかのどちらかだ。


 「では、偶々私達の馬車を襲ったのでは?そこで偶然お嬢様を見つけた」


 「話が上手すぎんだろ?それ。」


 偶然馬車を襲って、偶然こっそり帰って来た要人に当たった。


 中々すぎな偶然だ。


 それに何より。


 「人数が多すぎる。馬車一台に20人て、多すぎだろ?それに……」




 『今まで少人数で単独で商いをする商人や旅人を襲って生計を立てていた盗人が集まって大規模な商人集団や貴族の馬車を襲うようになっていった』




 「徒党を組んで大きな仕事やるようになった連中が何で一台ぽっきりの馬車襲うんだ?


 絶対そこに何かが有る、または居るって知ってただろ?」


 「そんなの………偶々見つけたのだろぅ?我々を。だから人数が多かった。


 偶然だ!」


 必死な従者。お嬢様を背中に押し込める。


 真っ白で蝋のようになっちまった顔。


 あんまり見たかねぇな。


 「じゃぁ、決定的にお前が間抜けなのを教えてやろうか?それは…………」


 何より引っかかった事。


 馬車を運転していて従者が何故気付かなかったのか?


 そこが一番引っかかった。


 「なんであのならず者を見逃したんだ?」


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