デルロ=マレンドック=ヴァーミリア=ノムシュムマンの小冒険

 青い光が強く光り、眼を瞑った。

 体が浮かぶような、空を飛ぶような、沈むような、落ちるような、平衡感覚が狂う感覚に襲われ、立つことも出来なくなった。

 目が回り、ぐるぐると不快な感覚が頭をかき乱す。


 ドサ!


 急に痛みが体に走った。

 体が何かに叩き付けられた。

 しかし、同時に襲って来る不快な感覚が無くなり、頭に残った不快の余韻が退いていく。

 「こ…………こは?」

 体を起こす。

 まだ不快感が少し残ってはいるが、視界が歪むような酷さではない。

 ふらふらな足取りで辺りを見る。

 森の中。

 何だか異様な雰囲気を持ってはいるが、何の変哲も無い森であった。

 一箇所を除いて。

 「これは……………」

 それは彼の後ろに有った。

 石、レンガ?はたまた金属?

 材質の分からない外見の、塔がそこにはそびえたっていた。

 「先代は言った。

 『行くべき場所にお前を連れて行く。』と。」

 行くべき場所。それは解っている。

 ここが何処なのか、周囲の気配と建物の異様さから察しは付いた。

 建物に向かう。

 目の前に有る扉を開け、声の限り叫ぶ。

 「ランディス特別区より参った!領主のデルロ=マレンドック=ヴァーミリア=ノムシュムマンである!

 ここは、我が国最高の知恵者。大賢者、タツミン=ユースティコルン=デロンド=オールノウズ殿の御所で相違ないか?」

 私の行くべき場所。

 周囲の異様さとその中に建つ建造物。

 その二つから考えられるのは大賢者の塔意外に考えられぬ。

 「……………ス…………………」

 「させ…………………………イム‼」



 塔の中には何もない。

何もない空間が有るだけ。

しかし、声が聞こえてくる。


 「や…………ね。な…………………………‼い………………………ム!」

 「な……………………………オ………………………!」

 「だっ………………………?」

 「……………………。…………‼」

 「……………♪」

 「………‼」


 僅かだが二人分。一人は男。もう一人は女だ。

 男が何かを怒鳴り、女がそれをものともせずにいる。という感じだ。

 「どこだ?」

 周囲を見渡す。

 この私を待たせるなど。賢者と言えど許されるものではないぞ?





怒りが少し頭をもたげた。次の瞬間だった。





 「……………………………………………!!!!!!!!!」

 「!」





ドガァァァァァァァァ‼





 到底日常や、例え魔物退治をしていても起こり得ない巨大な爆音と振動が塔全体を揺らした。




 「‼上か!」

 上を見上げると空洞がそのまま続き、上の方は暗い、真っ黒な空間となっていた。

 おそらく、賢者は上に居るのだろう。

 しかし、同時に爆音の音源も上に有る。



 『浮上フロート



 躊躇いは無かった。

 彼は利益を優先する。合理的である。

 例え危険が有ったとしても、このままここで待っていて事態が好転する事はおそらく無い。

 ならば昇るのが最適。

 そう考えていた。










 実際、それは正解であった。

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