ゴーレムVS未来の  パーティー7

「ノワワワワワワワワワワワワワワ!!」


雷とゴーレムのダブル脅威に襲われて、俺は兎に角走っていた。脱兎のごとく。


兎に角、脱兎のごとく。


パニックのあまり意味の解らない言葉遊びが頭を巡り始めた。


「だーれーかー!!」


マリッシア達が何をしているのか解らない。見る余裕がない。


雨は激しさを増し、雷は頻度と見た感じの威力と、手に響く衝撃が増し、明らかに喰らったら死ぬ。


ゴーレムに当たったときはラッキーパンチだと思っていたが、いざ自分が雷の標的にされると生きた心地がしない。








『土の槍ランドランス』








マリッシアの声が聞こえる。




『啄木鳥』


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ


ジョゴローが何かを殴る音がする。




『回復ヒール』


テポン…黒焦げになったら回復は無意味だ。








ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・…………………………………………




後ろから迫るゴーレムの気配が無くなった。


あぁ、俺を囮に倒してくれたんだ。


有難い。が、俺はもう捨てられたんだ。






ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ




 闘技場の壁が降りる。


 逃げてくれよ。皆。


 足が止まりそうになる。




 「ブレイ!走って‼」


 マリッシアの声が雷鳴の中響いた。


 声の方を向くと指を指していた。


 「あっち!走って!」


 逃げては居なかった。


 俺は見捨てられてはいなかった。


 馬鹿な男だ。俺は!


 そうだよ!俺達はパーティー!


 俺が暴走した時も見捨てちゃくれなかったろ?


 馬鹿野郎が!皆を信じて走れなきゃ俺は前衛馬鹿失格だ!


 「ノォォォォォォォォォォォォォ!」


 マリッシアの指差す方に全力で走り出す。


 既に足は限界を越えた!


 口は乾き、喉は痛い、血の匂いがするし、肺の内側で何かが爪を突き立てている。


 体中が苦痛を帯びた倦怠感に襲われている。




 でも!


 俺は走る。


 もう迷わない!


 皆を信じて走る!


 「ウヲォォォォォォォォォ‼」


 ぬかるむ道を蹴り砕き、木々の合間を抜ける。


 雷が剣を捉えようとして途中の木々を焼き払う。


 わき目も降らず。走る!


 「コッチ!洞窟に!飛び込んで‼」


 前を走っていたマリッシアが洞窟に入っていく。


 ジョゴローとテポンも、もう既に中に居た。


 前に俺が暴走した後に避難した洞窟。


 あそこに飛び込めば…………………………イヤ、


 洞窟内は雨を防げても、雷は剣に引きずり込まれる。


 如何する?






 「大丈夫!信じて!」






 走る。地面を蹴って走る。




 ドカン!


 背後から雷が剣に吸い込まれ、巻き添えで木が焼け、倒れる。




 俺の方に‼






 メキメキメキメキメキ


 影が迫る。


 避けようとして、不味い!足がぬかるみにとられた。




 万事休す!




 地面が正面から迫って来る。そう思って絶望していたが、地面は近付かず、足が動いていないのに先へ進む。




 『土の槍ランドランス』




 マリッシアがやってくれた。


 洞窟に突入する。しかし、雷も迫って来る。






 『肉体強化パワーアップ‼』『啄木鳥!』


 テポンの強化によって破壊力を増したジョゴローの拳が洞窟の天井を打ち砕いた!




 ガラガラガラガラガラ!


 崩落が起き、電撃が遮られる。






 「早く!刀を納めて!」


 吹き飛んで洞窟の地面に擦り付けられた俺にマリッシアは強くそう言う。


 「マママ待って!」


 チン


 刀が鞘に納められた瞬間、空気が冷たくなった気がした。






 「ホォ、生きた心地がせんのぉ。」


 「良かったです。無事で。」


 「心配したのよ‼」






 地面に倒れたままの俺に駆け寄って来る。














 生きている。


 「ハハ………………………」


 「ホォホォホォホォホォホォ」


 「ハハハハハ」


 「あはははははははははは」










 「「「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ‼‼」」」」






 洞窟内に笑い声が木霊した。




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