ヘブンフラワーガーデンの花3

彼岸のヘブンフラワー花畑ガーデン


ここに咲く花はその香りを風に乗せて運ぶ。


遥か彼方の生き物の元へ。


その香りには毒があり、吸い込んだ者を香りの中毒状態にする。非常に強い依存をさせる。






賢者が『解毒』を使ったのはこの中毒状態を避けるためであった。


しかし、この香りには依存性こそ在るものの、人を死に至らしめる事は出来ない。


ただ虜にするだけ。


もっと強い香りを、肺一杯に吸い込んで幸福を満たしたいという衝動に駆らせるだけ。


遥か彼方にある花畑に、歩を進めさせるだけ。


思考の全てを蕩けさせ、その香りの奴隷となり、主人の望みを叶えるだけ。






一度香りを吸い込んだ者は周囲の声を聞かず、花畑へと向かう。






サクサクサクサクサク


土の感触が少し変わる。


金粉は相変わらず空を染め上げ続ける。


花は咲き乱れているだけ。






































花畑に着いた者はその思考を芳しい香りに支配され、花畑に足を踏み入れる。












次の瞬間、今の賢者が見ているような黄金の大空を見上げる。


金粉の正体は花粉。


『断絶の障壁』に阻まれて解らないが、その花粉にも香りがあり、今までの香りが比べものに成らない、天にも昇る香りだそうだ。






























香りの奴隷は、馳せ参じた褒美にその香りを与え。






























































対価に命を奪われる。








金粉の正体は猛毒。


吸い込んだ者を体の大きさに関わらずに一瞬で殺し、触れたものをドロドロに溶かす。








溶けた奴隷は主人の糧となり、更に美しい花と更に芳しい香りに変わる。








天にも昇る香り。それは比喩ではない。本当に天に昇らせてしまう。


彼岸の花畑ヘブンフラワーガーデン。足を踏み入れた者を彼岸へと送る死の入口の花畑。


だから『彼岸のヘブンフラワー花畑ガーデン』。












香りで引きずり込んで来た者を毒の花粉で殺して肥料にする。


そして更に香りを強く放ってまた誰か(肥料)を引きずり込む。




悪辣で悪趣味。


非道で残虐。




劇毒龍の霊廟やローズヒュドラとは違い、危険は見えない。どころか美しい。


香りを吸い込んだ時点で解毒と香りを遮断しなければ、如何に強かろうと抵抗も許さない。










賢者が危険視する理由としては十二分だ。












ザクザクカラカラカラ


足下の土が大きな音を立てる。


犠牲者の遺骨。




それを踏みしめる音に反応してこの花は毒を吐く。








この残虐な花の名は、




悪魔の花




『悪魔の《デーモン》フラワー』と呼ばれていた。






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