対外防衛砦 コアリス

「異常は無いか?」


 「はい、異常御座いません。交代お願いします。」


 早朝。砦の見張り台。その上で鎧兜に身を包んだ男たちが敬礼をしていた。




 対外要塞コアリス




ランデメンド王国の果て。アーマスとの国境付近にあるこの要塞はアーマスの生存競争から逃げて来た手負いの獣たちを食い止め、後ろの王国の無辜の民を守る為に存在していた。


 辺境の砦。


 『そこに居る人間は、他で何かをしでかして飛ばされて来た。』


 通常はそう考えるだろう。しかし、ここは違う。


 アーマスからやって来た猛獣。それらは、生存競争から逃げてきたとはいえ、逃げられるだけの力を持つ強さはある。


 それを食い止めるだけの力を持つ、それでいて無辜の民を守ろうという気高き精神の持ち主。


 それがここに居る人間の共通点だ。




 「見張り、お疲れ様です。」


 鎧兜の二人の後ろからやって来た男が居た。


 他二人より肉体を包む鎧は立派で、その容貌はいかにも心優しい正義感。といった顔だ。


 「「お疲れ様です!隊長!」」


 二人が男を見ると背筋を正していきなり敬礼をした。


 「あぁ、構わない。というか、お疲れ様は君達の方ですよ。」


 笑って敬礼を返す男。


 「とんでもございません。この砦の主として民の為、我々の為に粉骨砕身している隊長の心労。我々には計り知れません。」


 「隊長こそ、もう少しお休みしては?」


 二人の男たちから見て取れる感情。それは畏怖であり、尊敬であり、優しさと思い遣りであった。


 「いやいや、君達が見張ってくれているから僕は夜も早くから寝かせて貰いました。


十分寝たので絶好調ですよ。」




 対外防衛砦コアリス防衛責任者 アーノルド=デネブ


 32歳という若さにしてこの砦の防衛部隊を率いる隊長であり、人望の厚い高潔な男である。




 「……そう言えば、君は確か今度結婚するのでしたよね?」


 デネブが見張りの片方に声を掛ける。


 「はい。この前懇意にしていた方と結婚する運びとなりました。」


 「それはおめでとうございます………そう言えば、君は確か今年に入って休みを取っていませんでしたよね?


 今度私が許可するので親元に帰って報告してあげて下さい。」


 それを聞いた見張りは動揺した。


「いい、い、いけません隊長。皆が常在戦場の中、隊長も休んでおられないというのに私だけ腑抜けたことを……」


 「コラ、いけませんよ。浮かれるだなんて……、祝い、幸せになることの何が腑抜けなのでしょう?


 しっかりと祝い、家庭を手にすることも重要な事です。


 それが、あなたが家の守り手になるという覚悟に繋がる。


 延いてはこの砦を守る覚悟も一層強くなるのです。


 遠慮など要りません。行ってきなさい。」


 「………はい、有り難う御座います!!」


 「まぁ、結婚していない私が言うのも何なのですがね。」


 ハハと笑うデネブ。


 その時だった。








「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」






 凄まじい猛獣の咆哮が聞こえた。


 ジャングルの木々の合間から鳥が飛び立った。




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