Folge 64 デレ次女

 なんだか分からない厄をシャワーで流した。

 すっきり。

 せっかく良い期末を迎えたというのに酷い事の連発だったな。

 裕二にテストは圧勝――マジで焦りはしたけど。

 支援を受け、いつも通り以上の結果が出せた。

 別に勝負のつもりなんて無かったのに。

 オレが授業をまともに受けていないと気付いた裕二。

 テストで勝てると思ってしまったようだが、気の迷いというやつだな。

 裕二君、誰しもがやりがちなことだから気にするな。

 日頃からオレに勝ちたかったんだよな。

 何を負けていたんだろ。

 妹のことはシスコンだと散々言われている。

 美乃咲姉妹との関係は……オレからアクション起こしたわけじゃないし。

 オレを突くのはお門違いだ。

 テストは先生が授業中にどこが出るか言うから、そこを中心に見直しているだけ。

 あいつも同じことをすれば点は取れるはずだけど。


「……みんなオレより凄いのに」


 バスタオルで髪の毛をくしゃくしゃ。

 吸水力をアップした繊維とやらがサラサラとした髪の毛に戻す。

 首から下を拭こうと頭からタオルを下ろした。

 目の前にはとても可愛い次女が。


「びっくりするだろ!? 足音消して目の前に立つなよ」

「今度は私がサダメに甘えたくなったんだもん」

「足音消す必要あるか?」

「それはあ、びっくりさせるためだからあ、成功」


 ニコニコ、クスクス。

 なんという平和な微笑み――可愛いんだってば。


「びっくりしたけど可愛い子だったからまあ、よし」

「えへへ」


 手を後ろに組んで、ウリウリモゾモゾ。

 左右に揺れながら照れている。

 Tシャツにショートパンツというルームウェア。

 助かる。

 ノースリーブだと尚更良かったかな。


「んふ。んー、はー、へへ」


 前はツィスカがこのモードだったな。

 今回の甘えモードはカルラか。

 いつも家事全般の過半数をやってくれている子。

 加えて全員の癒しも担当となれば、甘えたくなる時もあるよな。

 両脚をピンと伸ばして揺れたままだから、構ってアピール過ぎて。

 これは新種の愛玩動物ですか? いくらでも構ってあげるよ。


「テストお疲れ様~。言ってなかったから」

「ありがと。おかげでいつも通りに終われたよ」

「サダメが出来ないわけないもん。初めから余裕だったでしょ?」

「余裕とまではいかないけど、進学校よりは緩い学校だからな」

「パパとママが傍にいないからって、あの学校にしたんだもんね」

「ああ。大変なことを少しでも減らそうってな」


 気持ちはありがたいんだけど、どこかズレている気がするんだよな。

 凄い仕事をこなしているみたいだし、良い環境を作ってくれている。

 たぶん、良い親なんだろうな。

 でもね、普段合いも話しもしない人たちって扱いになってきていてさ。

 良いか悪いか、どっちに捉えるかを問われると答えられないのが本音。


「はい、パンツ」


 そろそろ顔見せても良くないか?


「こっちに腕伸ばして」


 最近は電話すら無いな。


「順番に脚を通してくださ~い」


 声ぐらいこいつらに聞かせてやれよな。


「ズボンエレベーターが上がりまーす!」


 腰にゴムがパチンと当たる。

 服を着たようだ。


「今日はサダメのタオルで拭こうかな」

「やめなさい」

「なんで?」

「汚れたからシャワー浴びたんだぞ」

「洗った後だから綺麗でしょ?」

「あん? ああ、洗った後だな」

「じゃあ問題無し!」


 タオルに顔を埋めだした。


「いやいや! カルラが出る時には冷たくなっているぞ」


 よく分からない説得が始まってしまった。

 なんだこれ。


「ちゃんと乾いたタオルを使いなさい」

「は~い。兄の言うことを聞く良い妹です!」


 ははぁん、要するに構えということね。

 やれやれ。

 いつも構っているけど、カルラをメインにしますか。

 同時にオレも癒してもらえるから一石二鳥!

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