158 Last Episode あの花畑で月夜と共に⑪

「月夜は僕の女だ」

「へっ……」

「うっ、やっぱ似合わないよな」


 自分で言ってて恥ずかしくなってきた。星矢みたいな男だから似合うんだよ。僕には無理だ。


「ふふふ、かっこよかったですよ」

「ありがと……」


 月夜は微笑んでくれる。この場で言っても仕方ないもんなぁ。


「今度学校の集会の時にでも言ってください」

「死ぬから」


 でも何とかしたいなぁ。

 僕が卒業する1年後まで放置すればすむ話だけど、そうやって見なかったことにしたせいで僕と月夜がこの関係になるまで時間がかかってしまった。

 だから卒業するまでの間に何とかしたい。

 学校でイチャイチャはどうかと思うけど、月夜と付き合っていることをどこかのタイミングで叫んでみたい。

 僕1人ではどうしようもないから、そこはグループの面々と相談しよう。幸い最強のメンバーが揃っている。


「そして誕生日か」

「結局みんなから怒られましたね」


 月夜と交際を始めて数日後改めて僕は自分の誕生日が月夜と同じ日だったことを話した。

 怒る人、呆れる人ばかりで気にもとめない人は一人もいなかった。

 僕も大事な友人なんだと認められた気がして嬉しかったよ。

 その後、ファミレスでささやかなパーティをしてくれた。

 プレゼントはネクタイ。月夜を中心に選んでくれたんだ。すごく嬉しかった。やっぱり何でも隠すことはよくないな……。


「雪山の月夜は演技派だったよなぁ」

「初めから滑れたわけじゃないですよ。太陽さんと2人きりでいるにはどうしたらいいかって考えたらあーなっただけです」


 嬉しいこと言ってくれる。

 スノボーで一緒にいた時、月夜はすぐに滑れるようになったのにずっと初心者のフリしてたんだよね。

 転ぶふりして僕に抱きついて……。

 月夜のふとももを堪能していた僕は起き上がった。


「ん? どうしたんですか」


 しゃがんだまま、膝を折って座る月夜の腕を引っ張って抱きしめた。


「月夜が抱きたくなった」

「仕方ないですねぇ」


 今はお昼の暑い時間だから月夜も僕も半袖で軽い格好だ。抱きしめると月夜の肉感と暖かさがわりとダイレクトに伝わる。

 ぎゅーっとわりと強めに抱く。やっぱり僕は月夜を抱くのが好きだ。


「あの時もこうやって抱きしめてあげたらよかったなぁ」

「ずっとドギマギしてましたもんね。まぁ……今みたいに抱きしめられたら私がドギマギしちゃいそうですけど」


「夏になったら旅行に行こう。受験前の最後の旅行だ」

「いいですよ。2人きりですからね」

「夏だから海に行きたいな。そしてあの時のようにお風呂に一緒に入ろう」

「もう太陽さんはほんとえっちです」


 誕生日の日も一緒に温泉に入ったのに、結局何もできなかったよなぁ。


「月夜のお背中流してあげる」

「絶対えっちなこと考えてる」

「そんなことはないよ。でも髪は洗ってみたいなぁ」

「でも家族風呂って結構高いんじゃ」


 そうだった。あの時は九土さんのご厚意だった。

 ただでさえ旅行で金が飛ぶのに……家族風呂代。よし、春休みバイトを増やそう。


「でも旅行は楽しみですね。夜は……あの星空の元で2人きりで過ごしたいです」

「誕生日の夜もすごく綺麗だったよなぁ」

「あの時、太陽さんにもらったマフラーは今年ずっとつけてましたよ」

「冬の間毎日付けてたもんね。月夜にもらった手袋といい、贈り物は本当に暖かいや」


 でも……一番暖かいのはやっぱり人肌だと思う。

 僕は月夜の髪をゆっくりと撫でて、そのまま、月夜の唇にキスをした。

 思い出はいよいよ最後となる。

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