157 Last Episode あの花畑で月夜と共に⑩
かなりお願いしたおかげで今、月夜の白いふとももの上に頭を置かせてもらって寝そべっている。
月夜は頼まれるとNOと言えないタイプだな。まぁ僕もだけど。
このまま話を続けよう。
年を越して最初に会ったのは餅つきだったかな。
「月夜の紙芝居はすっごく上手だったよね」
「そうですか? 案外向いているのかもしれませんね」
あの時は餅を待つ子供達に向け紙芝居の読み聞かせをしていた。
月夜の声って本当に綺麗なんだよ。
「声優とか向いているんじゃない? いや駄目だ」
「え、何でですか」
「今の声優はアイドル的なのもあるし、月夜ならあっという間に人気になっちゃう」
「そんなことは……、でも兄にも言われましたね。家計に入れるからモデルとかのバイトをした方がいいかって聞いたんですけど絶対駄目って言われました」
「星矢も分かってたんだろうね。仕事だけなら問題ないけど、声優もモデルもきっと月夜の容姿だといろいろ呼び込んでしまうから」
月夜のすべすべの手のひらが僕の頬に触れる。やべっ、気持ちいい。
「ひーちゃんみたいにチヤホヤされるのが好きなら問題ないけど、きっと月夜の性格には合わないと思う」
「そうかもしれませんね。今はもうあなただけの月夜ですから」
ますます好きになっちゃうなぁ。この幸せがいつまでも続いて欲しいよ。
「次はやっぱり冬デートだよね」
「あの」
「ん?」
「あの時って2人でサイン会行って、2人でタピオカ飲んで、2人でスケート行って、2人で食事してましたよね」
「うん」
「今と変わらないですよね」
「そうだねー」
「何で付き合ってくれなかったんですか!」
「いたたたたた、ごめんなさい!」
月夜に思いっきりほっぺをつねられる。
とても痛い。今思えばもう普通に交際と変わらないよなぁ。何で僕はずっと月夜の好意から逃げてたんだろう。
このふとももだってもっと早く撫でられたというのに。
最後、ラーメン屋行った後の帰り道も今と変わらないムードがあったもんな。
でも……あの時は。
「ニンニクでそれどころじゃなかった気がする」
ニンニクラーメンのにおいがやばかったな。
それは交際してから最初に行った遊園地の帰りも同じかな。
「実はあの店で1番美味しいラーメンって豚骨醤油なんですよ」
「え!? そうなの? でもニンニクを勧めてたじゃないか」
「だって私が好きなんですもん」
「つまり……」
「私がニンニク食べて、太陽さんが食べなかったら、私だけクサイ女になるでしょ! そんなの絶対ヤダ!」
そんなことないと言いたいとこだが、アレは駄目だな。
さすがにアレ食った後にキスはできん。
「絶対私と行く時はニンニクラーメンにしてくださいね」
「はーい」
これは従っておこう。
この後は何があったっけ。
やっぱ気になるのは……。
「水里さんか」
「ふーん」
月夜さん爪を立てないでください。
「水里お姉さんと呼ぶべきか」
「うふふ、そうですね~」
よし、機嫌が直った。
その後の学校帰りで月夜と水里さんにファミレスで呼び出されたことを思い出す。
確かあの後星矢と水里さんはデートしたんだよな。その準備で僕と月夜が手伝った感じだ。
「ファミレスで月夜と水里さんと3人で話したじゃないか。あの後ってどうなったの?」
「太陽さんは兄から聞いてないんですか?」
「あいつ飯がうまかったとしか言わなかったぞ」
「ほんとアレはどうしようもないですね」
最近月夜の兄に対する扱いがマジでぞんざいである。
星矢のやつその内泣いちゃうんじゃないかな。まぁ、それが兄妹のコミュニケーションなのかもしれないけど。
「お弁当を2人で食べた後に水族館に行ったようですよ」
「水族館!」
それは初耳だった。
「無料チケットがあったそうですね。2人で仲良く見てまわったそうですよ。それで!」
月夜のテンションが上がる。
「お兄ちゃんがトイレに行ってる間に水里ちゃんが複数人の男子に囲まれたそうです」
「まぁ水里さんもモテるもんな。さすがミスコン1位」
「そうですよね。どうせミスコン2位の私よりミスコン1位の方が」
「月夜、話を戻そう! それでどうしたの!」
意外に月夜はミスコンが2位だったことを根を持っていた。
結構負けず嫌いなんだよなぁこの子。そこがかわいいんだけど。
僕にはしおらしい所を見せるけど、わりと同性には負けないように立ち回ることが多い。
「それをお兄ちゃんが助けたらしいですよ。【水里に触れるな!】 って言ったみたいです」
「おお~。その場面見て見たかったなぁ」
「そこで男性達と険悪になったんですけど、【水里は俺の女】だって言って切り抜けたみたいです。水里ちゃんはすっごく嬉しかったみたいです。いいなぁ」
水里さんのかわいらしい姿を思い出したのだろう、月夜はほっぺに手をあて軽く悶えた。
基本仲のよい2人だから恋路がうまくいくことを望んでいる。
だったら僕は……。
月夜とちょうど目が合う。
「月夜は僕の女だ」
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