147 太陽と月夜、星矢と水里③

 勉強会が始まり、それなり時間は進む。

 星矢は水里さんに勉強を教え、月夜は僕に勉強に教えてくれる。


「本当に月夜ちゃん……1年生なの?」

「1年生だよ! でも授業でやってない所はさすがに分からないし、教えられないけどね」


 それでも満点取りそうだな。もし星矢と月夜が双子だったりしたらとんでもなかっただろう。

 下級生に教えてもらうってのはよくないかもしれないが、そう言ってもいられない。

 月夜に教えてもらいつつ、軽くボディタッチするのも忘れない。手を触れたり、頬ずりしたり、耳をかみ合ったりした。

 星矢と水里さんは頑なにこちらに触れないようにしている。向こうは向こうで勉強を続ける。


「星矢的に、水里さんはどうなの?」

「おまえよりは優秀だ」


 そりゃ前回5位の学力に勝てるわけないだろ。


「3位……金葉ちゃん以上は絶対無理だから頑張って4位を目指す感じだね。どうしてもケアレスミスは0にならないなぁ」


 弓崎さんも星矢や九土さんに勝つために物凄く勉強してるんだろうな。そのうっぷんが本に影響されてしまうのが困るが。


「太陽さん、そこ間違ってますよ」

「え、ほんと?」

「もう一度公式に当てはめてください」

「うん」


 星矢も水里さんもちらっとこちらを見る。

 っと、早く回答しないとな。


「ホントだ。えっと答えは10か」

「はい、チューです」

「んぐっ!」

「ブハッ!」「ブフッ!」


 月夜は僕の唇へ唇をくっつける。そうかもう1時間経っているから我慢できなかったんだな。

 僕も口が寂しかったし、ちょっとしっかり味合わせてもらおうとするか。

 少しだけ舌を絡めつつも……口づけをし合った。


 ふぅすっきり。


「意味の分からないタイミングでイチャつくのやめてくれる!?」

「妹が……どんどんおかしくなってく……」


 真っ赤な顔の水里さんと呆れる星矢に叱られる僕達だが……すでにこんなの日常茶飯事すぎて珍しくもない。


「ほんと2人ってバカ……過剰だよね。ケンカとかしないの?」


 付き合う前に結構いろいろあったから今更という所もある。

 元々お互い波長が合うというか、趣味も似ているし、言い争うことなんてまったくないよな。


「お互い好き合ってるというか、嫌いなんて言いそうにもないよね」


 僕は月夜を嫌うことなんてありえないな。月夜以上の女の子なんて存在しないんだし。

 月夜はごろんと僕の胸へ頭を預けた。


「私、今太陽さんへの愛情がいっぱいの状態なんです」

「俺にはぶっ壊れているように見えるがな」

「だから間違っても別れるとか嫌いとか言わないでくださいね。真剣に死を選ぶかもしれません」


「そんな未来はありえないさ。月夜、好きだよ」

「太陽さん!」


 僕は月夜を強く抱きしめた。


「星矢くん、親友と妹への教育がなってないんじゃない?」

「あのバレンタインデーでの応援は間違いだったかもしれんな」



 ◇◇◇


「そろそろ飯にするか」


 18時30分か。今日、僕は神凪家で泊まる予定だ。夜にもう少しだけ勉強を頑張りたい。

 水里さんと月夜が立ち上がった。


「水里ちゃん、一緒につくろ」

「今日は何しよっかな」


 ここは料理上手な月夜と水里さんの独壇場だ。

 時々、水里さんは家戻って食材や調味料を持って来て、2人仲良く会話しながらキッチンで調理をする。

 本当に仲良いなぁ。本当に姉妹のようだ。


「いいよなー」

「何がだ?」


 僕と星矢はテーブルでのんびり料理ができるのを待つ。

 手伝うべきなんだろうけど、狭い台所じゃかえって邪魔になってしまう。僕と星矢は待つしかなかった。


「かわいい女の子たちの手料理が食べられるんだぜ。僕達は幸せもんだよ」

「否定はしない」


 星矢も嬉しそうだ。

 適当に喋っていると料理が完成してテーブルの上に並べられる。

 ごはんに味噌汁、肉野菜炒め、サラダ、卵焼き。

 手早くたくさんの食べられるように大皿にも料理が置かれる。

 こりゃうまそうだ。


「いたただきま~す」


 4人仲良く箸で料理をつついた。

 やっぱ、うめぇ。月夜、水里さんも料理上手だから本当に食事が楽しいよ。

 でもこの量、運動しないとすぐ太りそうだな。


「うー、味噌汁は水里ちゃんの方が美味しい」

「ふっふーん、まだまだ負けないよ」


 僕には分からないが明確な差というものがあるらしい。

 美味しいのには変わらないが。


「星矢くん、どうかな?」

「ああ、うまい」


 短文ながらも優しげな言葉に水里さんも少し頬を紅く染め喜んだ。

 熟練の夫婦みたいなやり取りだな。

 隣の月夜が僕の袖を引っ張る。


「私の料理はどうですか?」

「すっごく美味しい。月夜は本当に料理が上手だね。素敵だよ、後でキスしよう」

「はぁい!」

「2人は完全に新婚カップルみたいだね……」

「飯の時にイチャつくんじゃない」


 食事は滞りなく進み、雑談にも花が咲く。

 4人いると……やっぱり会話が弾むなぁ。とてもいい雰囲気だ。


「ふふっ……」


 星矢が笑った。

 その姿に僕も月夜も水里さんも……そして星矢自身も驚く。


「今、俺は……笑っていたのか」

「そうだよ。いいことでもあったのか?」


 星矢は首に手をあて、ゆっくりと口を開いた。


「楽しいなと思ったんだ。俺と月夜だけだった空間に……太陽と水里が来てくれて本当に明るくなったと思う。家族というものこんな感じなんだろうか」


 水里さんはそんな星矢の言葉に1度頷く。


「私が地元から離れても寂しくないのは星矢くん達がいてくれたおかげかな」


 そこで隣にいた月夜が急に立ち上がった。


「じゃあ、本当に家族になればいいよ!」

「えっ」


 全員の言葉が重なる。


「私と太陽さんがこのまま結ばれて……、お兄ちゃんと水里ちゃんが付き合ったら……みんな完全な家族だよ!」


 戸籍上親戚になっちゃうよな。僕と月夜とこのまま付き合ったままいられるかどうかは分からないけど……。

 月夜の無茶な言葉に水里さんはもう! って顔を赤くして言葉を投げかけた。

 しかし、星矢は落ち着いていた。


「そうなったら……とても幸せな家族になるのだろうな。笑顔が絶えない。とても理想的だ」

「せ、星矢くん?」

「っ! お、俺は何を」


 それってもう……決まりじゃないの!?

 顔を真っ赤にする水里さんに……星矢もわけもわからないことを口走ったかのように混乱している。あと一押しか……? いや、ここからは当人の問題か。

 ただ1つ言えることは……。僕と月夜は顔を見合って、頷き、水里さんを見る。

 月夜と2人同時に同じ言葉を投げかけた。


「頑張ってね、水里お姉ちゃん」

「鳥肌立つからやめてぇ!」



 10年後……本当に家族となった僕達はこうやって食卓を並べる。

 10年前にこんなことがあったなと……4人で言い合うのだ。


 そんな未来が来ることを今の僕達は知らない。

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