059 学園祭1日目①

 恒宙こうちゅう学園祭が始まった。

 今年は生徒会が力を入れたおかげで例年に比べて規模も大きいものになっている。

 生徒会メンバーが相当頑張ったんだろうな~。外部のお客さんも噂を聞きつけたのか結構な数が校内に入ってきている。


 1日目、2日目で演目するクラスと観覧が中心のクラスが変わる。

 僕達のクラスは1日目に演目を担当するようになった美少年執事・美少女メイド喫茶店だ。

 とにかく人を集めなければならない。呼び込み担当のメンバーは生徒及び外部のお客様にとにかく宣伝し続けた。


 特にホールメンバーは顔がいいメンバーを集中させてしまったため人数が少なく、かなり大変だろう。

 僕は呼び込みをした後、本来の担当である料理班の手伝いをするため移動を開始する。


 今回の役割は料理の受け渡しだ。料理メンバーが作った料理をホールメンバーに渡すということだ。

 喫茶店となっている教室の前は長蛇の列となっている。口コミ効果もあったようで、教室の中はすごいことになってそうだな。

 料理を手渡す準備室へ待機し、料理が運ばれてくるのを待つ。その後どこのお客に渡すか番号札をつける。間違えるとホールメンバーが怒られるから責任重大だ。

 喫茶店の教室と準備室は中で繋がっている。


 まず1人目が準備室に入ってきた。執事が運ぶ用の料理を用意して番号札を振り分ける。

 1人目は執事の恰好をした遊佐ゆさあまつ。1年生の助っ人だ。観覧もしたかっただろうに本当に申し訳ない。

 幼いながらその端正な顔立ちにお姉さま方も本望だろう。


「先輩、お疲れ様です」

「どう? 中は大丈夫か」


 天は頷いた。


「執事が3人しかいないんですが、星矢先輩がすごいんで何とかなってますね。メイドの方が大変かもしれません」


 そうか、喫茶店から黄色い悲鳴が聞こえるもんな。本当に大変そうだ。天も苦情言わず手伝ってくれている。ありがてぇ。

 天に料理を渡して教室へ戻らせた。次にやってきたのは現役アイドルひーちゃんこと天野日和あまのひよりだ。

 長く伸びた金髪にヘッドドレスを付けてフリフリのメイド服を着ている。さすが現役アイドルだけあって人への見せ方を知っている。


「あ、や~まだ! 何でこんな忙しいの!? 超絶カワイイアイドルのひーちゃんはニコニコしてりゃいいって話だったけど」

「状況が変わったからね~」

「まー、学校休んで手伝えてなかったから仕方ないけど。はい、料理渡して!」


 僕はひーちゃんのオムライスセットを渡した。

 ひーちゃんはもう一度僕の方を見る。


「ひーちゃんの可愛さに惚れちゃってもいいのよ」

「ははは、僕の推しのみーちゃんだったらよかったのにと思うことはあるよ」

「あの子彼氏いるわよ」

「やめて!! 現実を聞かせないで!?」


 次に入ってきたのは執事服の北条火澄ほうじょうかすみさん、メイド服の弓崎金葉ゆみさきかなはさんだ。

 北条さんはやはり身長が高いこともあって、超男前です。執事服の隙間に漏れる女らしさがやはりセクシー、いい感じだ。

 弓崎さんのメイド服もすんごいよく似合ってる。普段こうやって表に出ることがないので隠れた美女という扱いだったかもしれない。

 前を切りそろえた黒髪は真面目さを表し、初々しさが前面に出ている。そして何より外からでも分かる。胸部のふくらみが実に素晴らしい。

 こんなの言えないけど。


「北条さん、弓崎さん、お疲れ様。大丈夫?」


 北条さんが近くに立てかけられたタオルで汗を拭い、飲み物を飲む。


「こっちは何とか。神凪が3人分くらい動いてるよ。メモ無しでメニュー覚えるなんてね。飲食店バイトはやっぱりすごいな」

「星矢がちょっとおかしいだけもしれないよ。弓崎さんは……きつそうだね」

「はい、こういうのは慣れないですね。ただ、大学生になったらバイトもしたいですし、いい練習と思うことにします」


 2人に持って行ってもらうやきそばセットを用意した。あとはドリンクを何点か置く。


「2人とも頑張って!」


 北条さんと弓崎さんが教室に入ったと同時に料理を準備室へ運ぶためのドアが開いた。


「大盛況のようだね」

「九土さん!」


 生徒会長、九土原彩花くどばらさいかさん。特注のメイド服を着ており、ヘッドドレスに白のエプロンが他と形状がちょっと違う。

 しかし…‥何というか色気がすごい。これぞメイド長という感じの風格だ。


「ふふ、太陽くん見惚れている場合じゃないよ」

「た、確かにその通りだね。それより生徒会長も忙しいんでしょう? 大丈夫なの」

「1時間ぐらいが山だな。麗しの私のメイドたちと戯れてこようじゃないか」

「接客してね」


 超人の九土さんが入ることでだいぶ楽になるだろう。何人かその間に休憩に行ってもらいたいな。

 そんなことを考えていると九土さんが何かのケースを渡してきた。


「なにこれ」

「この中にカメラが入ってる。私の命令といえば自由に撮らせてくれるだろう」

「あはは、さすがだね」

「月夜君のデータは君に渡してやってもいいぞ」


 それは是非とも頂きたい。個人的には全員欲しいんだけどね。


「あとで火澄くんと服を交換するか。彼女のメイド姿も目に焼き付けておかねば」


 それはいい考えだ。

 九土さんはそれだけ言って教室の中へ入っていった。


「お疲れ様! って太陽くん」


 次に外から準備室に入ってきたのは加賀谷水里かがやすいりさんと世良海香せらうみかさんだ。さきほどまで休憩で抜けてもらっていた。


「まだ休憩時間あるよ」

「そうなんだけど、大変そうだからね。よぉーし、がんばるよ!」


 水里さんはやっぱり長い亜麻色の髪がすごい似合っている。ミスコン出場にノミネートされるだけあって正統派美少女メイドだな。

今回クラスの中心人物として働いてばかりだ。夕方からミスコンもあるからあんまり負担はかけられない。


「先輩みてみて~。超かわいいでしょ!」


 世良さんはひらりと回って見せた、確かにカワイイ。さすが体育科で運動が得意だけあって彼女は身軽だ。ほいほい料理を持っていく。

 1年生で月夜と双璧を張る人気な女の子だけはあるなぁと思うよ。


「あ、二人とも写真撮るからちょっと並んで」

「えぇ?」「は?」

「死ぬほど嫌そうな顔をするのやめてよ。九土さんに渡されて頼まれたんだから僕は悪くない」


 普段天真爛漫な2人にそういう顔されるとすっげー傷つくのな。まだ瓜原さんとか弓崎さんだと傷つくより興奮の方が上回るけど。


「次の休憩は月夜だから呼んできて」

「はいはい~」


 文句言いつつもノリノリで撮らせてくれた2人に感謝。客が入り乱れる教室内に入っていった。

 それと入れ替わりに来たの兄貴の方、つまり神凪星矢かみなぎせいやだ。

 すっげー、超満面の笑顔。仮面の笑顔ってこうやるんだな。さすが接客業の鬼。


 僕を見て、星矢の表情はいつもの無愛想な顔になる。でも僕はこの顔の方が落ち着くからいいな。

 さてと後来る月夜も含めて神凪兄妹の相手をすることにしよう。

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