3章 2学期

039 下級生とプール①

 9月となり、2学期が始まっても何かが変わるわけでもない。

 相変わらず特進科の勉強は難しいし、神凪星矢かみなぎせいやが女の子と何かをやってて呼び出しされたけど逃げたし、外に出ても何か暑いし……。


 せっかくの日曜日もこのままだと図書館行って本読んで終わりそうだ。

 ベッドに寝そべり……たぶんひどいツラなんだろう、借りてきた本を読んでいた。


「ん?」


 机の上に置いてあるスマホが振動する。

 ベッドから手を伸ばして取る。誰かの着信。……はっ!


「はい、もしもし!」

「あ、月夜です。今大丈夫ですか?」


 神凪月夜かみなぎつきよからの着信だ。

 なんて耳心地の良い声なんだ。金曜日に一緒に下校して、何もない土曜日を過ごし、この日曜日だ。まさに天使の呼び声と言ってもおかしくない。

 月夜に会えない日を何だか寂しく感じるのは……やっぱり何というか。口にできないな。


「大丈夫だよ」

「実は……」


 その内容を聞いて僕はどうするかを考える。正直今までの僕であれば恐らく理由を作って断っていただろう。

 いや、それは今でも変わらない。他でもない月夜の頼みでなければだ。彼女と過ごした夏休みが……僕にはとてもとても大きかった。

 出来る限り……そのお願いを聞いてあげたい。


「いいよ。昼1に現地集合だね」





 モール街の近くにあるウォータパーク。9月になったというのにまだまだ人はいっぱいだ。

 残暑が厳しすぎるよ。今日も真夏日だしね。

 やってきた僕に手を振る女の子が3人。

 電話をくれた月夜と同じ学年の幼なじみである世良海香せらうみかさんと瓜原うりはら木乃莉きのりさんがそこにはいた。仲良し3人組だ。


「太陽さん、ありがとうございます」

「先輩ちっす!」

「こんにちは」


「3人ともよろしくー」


 僕が呼ばれたわけはとどのつまり男避けだ。特に月夜と世良さんは目立つためよく声をかけられるらしい。

 頼める時は兄、星矢に頼んでいたそうだが、今日はバイトでいないとか。


 このウォータパークも毎年行ってたんだけど……今年は入院もあって行かなかったからなぁ。まさか9月になってから行くことになるなんてね。

 入場券を払って中に入る。更衣があるため1度3人と別れて僕は更衣室へと入った。

 しかし女子高生3人とか……夏休み前の僕だったら絶対行かないケースだな。水着にさっと着替えて、待ち合わせ場所へ到着。

 仮デートにこの前の夏祭り。今回は水着かぁ。さすがにここでの撮影はまずいのでカメラは持ってきていない。

 スマホで頑張って撮ってみるか? 無理かな。


「お~またせ~」


 ヒュー!

 黒のビキニの水泳少女、世良さんのほどよく鍛えた体は見事といっていい。水着に慣れてるから照れもなさそうだ。

 世良さんが所属している水泳チームはいつもこの体を堪能しているというのか羨ましいねぇ。

 後ろから月夜と瓜原さんもやってきた。2人はやはりパーカーで体を隠している。このパーカーから解放された時がまた素晴らしいのだ。


「おー山田先輩もいい体してるじゃん! えいえい」

「つっつかないでくれよ……」

「月夜~。ほらっ先輩の魅力的な体だよ」

「わ、分かってるよ」


 月夜は顔を紅くして目を逸らしてしまった。言い方おかしいけど、男の体は見慣れてないのかな。

 僕は運動部ということもあり、それなりに鍛えてる方です。


 そして腰を降ろせる所にまで行ったわけだが……。


「ちょっと先輩」

「はい……」

「もう2回も声かけられたんだけど、先輩影薄すぎじゃない?」

「もう海ちゃん駄目だよ、そういうこと言っちゃ」


 月夜にフォローしてもらうがこればかりはほんと申し訳ない。

 そりゃ僕はこの3人に釣り合ってないとは思ってるけど、……これは地味にきつい。

 予想以上に群がってくるな。やっぱこの3人かわいいもんな。特に月夜は何度も振り向いてしまうほど目を惹く容姿だ。


「でも追い払らえているから先輩の効果はあると思います」

「そ、そうかな」


 瓜原さんにもフォローはしてもらえた。


「でも星矢さんが一緒だと絶対話しかけられないですよ」

「君はいつも星矢を上げてくるよね」


 星矢と比較されても仕方ない。瓜原さんは大層な星矢信者だ。僕も信者っぷりはそんな負けてないつもりだが。

 借りたブルーシートとパラソルを設営し、ここを休憩所とした。


「そ~れ~よ~り、いつまでパーカー着てんの!」

「ちょ、海ちゃん!」


 世良さんによって月夜のパーカーははぎ取られてしまう。

 月夜の水着の姿に僕は思わず息を飲んだ。

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