エリスの冒険日記
風間 シンヤ
3月1日 晴れ 「日記始めました」
3月1日 晴れ
私、エリザベス・マグダエル改めエリスはこれからの自分の旅路を日記につける事にした。
というのも、私はかつてウィンドガル王国の公爵令嬢で、三大公爵家のマグダエル公爵家の1人娘だった。しかし、ウィンドガル王国の双子の王子様の誕生日パーティーの席で、カイン王子がとアリー・ステインローズ伯爵令嬢に惚れたのを感じ、このままだと用済みで私は公爵家から捨てられると感じた私は非常な手段を使ってしまい、それすら失敗に終わりますます焦った私はその負の感情をかつての災厄に利用され、気づいたら……5年もの歳月が流れていた……
その5年間の出来事を私は朧げにしか覚えていないけれど、私が、再びそのアリー・ステインローズ伯爵令嬢に牙をむき、その双子の姉であるアンナ・ステインローズ伯爵令嬢を刺したのはなんとなくだけど覚えていた……。
だから、私は全ての罪を受け入れて死罪を望んだけれど、様々な人達の温情もあって、私の死罪は免れ、国外追放処分になった。
本当に甘い処分だとは思う。ならば、せめて今後は間違いを犯さない為にも、私はこの日記をつける習慣を義務づけることにした。そうすれば、自分の過ちを何度も見返して気をつける事が出来るから……
そして、私は国外追放処分になり、ウィンドガル王国から出たのだけれど、やはり順風満帆という訳にはいかなかった。
「はぁ〜……やっぱり厳しいなぁ〜……」
私は、私の魔法で黒焦げになってる魔物を見つめ溜息をつき、魔力数値回復薬を飲んだ。
私はかつての災厄に取り憑かれた影響がまだ残っていて、以前よりも魔力は上がっているのだけど、魔力数値が大幅に減少し、100も満たない数字になっていた。
基本、魔法は威力が高いとそれ相応の数値を消費してしまう。故に、私はかなり加減したつもりでも、高い威力の魔法が出てしまうので、そうなると当然それに応じた数値を消費してしまい、すぐに魔力数値切れを起こして倒れそうになってしまうのだ。
「はぁ〜……こうなるなら、本当にお祖母様の言う通り、色んな事を学んでおくんだったわ……」
私は溜息をつきながらそう言った。
私の祖母で、私のお父様を産み育てた実績から、マグダエル公爵家でそれなりに発言力があったお祖母様。そのお祖母様が私によくこんな事を言っていた。
「いいかい。エリー。何でもいいから生きる為の手段を学んでおくんだよ。料理でもいいし、護身術でもいい。必ず学んだ事がお前を生かしてくれるはずだよ」
思えば、お祖母様はあのマグダエル家で長く生きた人だ。私がカイン王子に選ばれず、捨てられる事を考慮していたのかもしれない。だから、あんな事を言い続けたんだろう。料理を学んでいれば、食べる事に困らないし、護身術を学んでいたら、魔法以外で魔物を撃退する術を得られたかもしれない。
「ふっ……今更お祖母様の真意に気づいても……後の祭りね……」
思わず自嘲気味の笑みを浮かべてそう呟く私。そう。もう後悔したって遅い。お祖母様があれだけ言ってくださったのに、王妃教育に熱を入れてしまった私が悪いのだから……
私は再び近くにあるという町を目指して歩みを進める。すると……
「えっ!?人が倒れてる!!?」
私は急いで倒れている人の所に向かった。その人は、見た目は私と同い年ぐらいの、白髪の短めの髪に、雪のような白い肌をした美少女だった。
思わずその人間離れした美しさに見惚れてしまったが、この人は倒れていたんだという事実を思い出し、すぐに声をかける。
「あの……!?大丈夫ですか……!?」
私がそう声をかけると、少女は薄っすらとだが、目を開いた。その瞳の色は綺麗なルビー色だった。
「良かった〜……無事だったんですね……!」
「……お腹……空いた……」
どうやらこの少女は空腹で倒れていたみたいだ。何か食べる物はあったかしら?そう思い、私は自分の荷物を探っていると……
「だから……いただきます……」
「えっ?」
少女は突然起き上がり、私の首に手を回し、私が動揺している隙に、人間と思えない鋭い牙を二本、私の首筋につきたてた。
「ッ!!?たぁぁぁ〜ーーーーーーーーーーいッ!!?」
これが、後に「雷鳴剣」という異名で呼ばれる私の最初の出会い……
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