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あーる

第1話 はじめての走馬灯体験

初夏──。

窓から入る乾いた風が、少年の黒髪を撫でる。

「やっと手に入れた……」

彼の視線の先には、少女の姿。桃色の髪とつぶらな瞳を兼ね備えたそれは、一尺にも満たない肢体でぴくりともせずに少年に微笑みかけている。

「やっと手に入れた、愛しの……」


「愛しのまりかぁぁぁぁぁ!!!!!」


彼はそう叫ぶなり、机上でポーズをキメる少女──もとい、TVアニメ『魔法少女まりか☆マジか』の主人公、まりかのフィギュアを舐め回すように凝視した。それはもう瞳をキラキラさせて。


「素晴らしい! 素晴らしすぎるぞこれは! 細部まで意匠を凝らした造型にこだわりぬかれた美しい彩色、そして完璧に再現された表情とポーズデザインはまさに天孫降臨! さすがは俺の嫁だぜ」

天孫降臨の意味はよくわからんが、まあとにかく尊いということだ。


興奮冷めやらぬ様子で嫁のご尊顔にhshsしている俺の名前は八十崎やそざき しゅん。どこにでもいる普通の学生だ。そう、普通だ。推しを尊ぶのは現代を生きるボーイズ&ガールズにとっては当たり前のことなのだ。だから幻滅してはならない。

「そうだ、茶助さすけにもこの神々しさを拝ませてやろう」

俺はそう思い、スマホのメッセージアプリを立ち上げて友人にまりかの写真を送信しようとした。すると──


「俊ちゃん、大丈夫!?」

「ふぇ?」


突如、聞き慣れた声と一緒に自室の扉が開かれたかと思うと、俺の視界は真っ暗になった。


「俊ちゃん、もう大丈夫よ! お姉ちゃんが一緒だからね。たとえ相手が鬼だろうが悪魔だろうが、はたまた俊ちゃんをたぶらかす悪い女だろうが、お姉ちゃんが絶対に守ってあげるからね!」

「ふがっ、はっ……あおい、ねぇ。……く、くるしいっ」

「どうしたの、俊ちゃん? なんだかとっても辛そうだけど……。はっ、まさか危険な化学物質が部屋に仕込まれていたの!?」

「む、むねにおしつぶされて……窒息、しそう」

「気を確かに持って、俊ちゃん。お姉ちゃんがぎゅーってしてあげるから」

「も、もう無理……ふががががががが」

思えば、短い人生だったな。でもまあ、豊満な胸にうずもれて死ぬんだ、悪くはないか。

……走馬灯って、本当に見るんだな。

「俊ちゃん? 俊ちゃん!? だめ、死んじゃ嫌だ! 一人にしないで! 俊ちゃんが死ぬならお姉ちゃんも死ぬぅぅぅ!!!」


            ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「はぁ、はぁ……死ぬかと思った」

「本当にごめんね、俊ちゃん。お茶入れたから、飲んで」

「ありがとう……」

俺は出されたお茶を勢いよく飲み干すと、はじめての走馬灯体験を拝ませてくれた張本人のほうに向き直った。

「それであおいねぇ、急に俺の部屋に入ってきて、どうしたの?」

「うん……お姉ちゃん、いつものように晩ごはんの用意をしてたの。そしたら突然、俊ちゃんの部屋から大きな声がして。もしかして俊ちゃんの身になにかあったんじゃないかって思ったら、居ても立ってもいられなくて……」

「それで俺をホールドしたと」

「本当にごめんね……」


瞳を潤ませてそう語るのは、俺の実の姉である八十崎やそざき あおい。通称、葵ねぇだ(俺しか呼んでないけど)。容姿端麗、成績優秀、品行方正と三拍子揃ったまさに完璧超人なのだが、見ての通り、俺に対しては若干少々とても非常に過保護なのがたまきずだ。

……ていうか、さっきのまりかコール、そんなにデカい声だったのか。今度から気を付けよう。


「うっ、ぐすっ……俊ちゃん、ごめんね。お姉ちゃん、なんでもするから……だからお願い、お姉ちゃんを嫌いにならないで……ぐすっ」

「え」

「俊ちゃんに嫌われちゃったら……私、生きている意味なんてないもの……ぐすん」

「ちょっ、葵ねぇ、泣かないで! 俺は全然平気だから。ほら、この通り、ウイーンガシャン、ウイーンガシャンって」

せきを切ったように泣き出してしまった葵ねぇを励まそうと、俺はなぜか得意でもないロボットダンスを披露する。

「うっ……俊ちゃんってば、本当に優しいのね。でもお姉ちゃんなら大丈夫。俊ちゃんの命令ならどんなことだって成し遂げられるよ。俊ちゃん専属のメイドさんになって一生ご奉仕するし、俊ちゃんのペットとして一生お庭で過ごすし、俊ちゃんが奴隷になれって言うならどんなしつけだって我慢できるよ! だからお願い、お姉ちゃんを一人にしないで……」

「ストップ、ストップ! 葵ねぇ、とんでもないこと口走ってるよ! いったん落ち着こう。ほら、お茶飲んで」

「しゅ、俊ちゃん。それって『俺と口移ししろ』っていう命令? もう、いきなり大胆なんだから……!」

なぜか頬を蒸気させて言う葵ねぇ。俺の声は聞こえてますか?

「違うよ! ていうか命令なんてしないよ! 許すもなにも、俺はもう気にしてないんだから」

「そんなぁ……。でもでも、俊ちゃんにお詫びがしたいっていうのは本当よ。迷惑かけたことには変わりないもの」

ようやく落ち着きを取り戻したのか、いつも通りの柔和な感じで葵ねぇが言う。そこまで言われたら、俺としても葵ねぇの厚意に応えないわけにはいかないか……。

「うーん、そうだなぁ……。あ、それなら葵ねぇお手製のハンバーグが食べたいな。あれ大好きなんだよ」

「大好き!? 俊ちゃんがお姉ちゃんのこと大好きって言ってくれた! もう、嬉しすぎてどうにかなっちゃいそう……。お姉ちゃんも、俊ちゃんのこと大好きよ」

瞳にハートマークを浮かべて言う葵ねぇ。俺の声は聞こえてますか?

「わかったわ。お姉ちゃん、頑張っておいしいハンバーグたくさん作ってあげるからね!」

「うん、ありがとう……」

かくして、満足に堪能することもできぬまま、まりか降臨の儀は幕を閉じたのである。……後でゆっくり楽しもう。


            ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「俊ちゃん、お待ち遠様。晩ごはんの用意ができたわよ」

そう言いながら葵ねぇが料理を運んできてくれる。語尾に音符マークでも付いてるんじゃないかってくらい満面の笑みだ。

「それではここで問題です! 今日の晩ごはんはなんでしょう?」

「え? ハンバーグじゃないの?」

さっきの会話の流れからして、てっきりハンバーグを作ってくれたのかと思ったんだけど……。

「ぶぶー、不正解です。正解は……『葵ねぇの愛情たっぷりらぶらぶハンバーグ』でした♪」

「ぶはーっ! なんだこれ!?」

目の前に繰り出されたのは大量のハンバーグ。しかもひとつひとつがハート型という親切設計。これにはかのドンキーもびっくりだろう。


「はい、あーん」

「いやいや、なにさりげなく食べさせようとしてるの! ツッコミどころ満載なんだけど」

「そんな……。昔はこうやって食べさせてあげてたのに……。やっぱりお姉ちゃん、必要ない?」

しゅんとした表情の葵ねぇ。

「……しょんぼり」

感情が声に出ちゃってるし! ……仕方ない、いろいろと追究したいところだが、ここは譲歩するか。

「……じゃあ、一口だけ」

「本当に? ありがとう、俊ちゃん。お姉ちゃんがたんと食べさせてあげるからね」

ほっこり笑顔の葵ねぇ。そんな表情を見せられたら、俺もまんざらでもないと思ってしまう。

「はーい、お口開けて。あーん……」

「あーん」

俺は流されるがままにハート型ハンバーグを口にする。

「もぐもぐもぐって、よく噛んで……。どう、美味しい?」

「ん、めちゃくちゃ美味しい!」

「本当に? よかったぁ、愛情をたっぷり込めた甲斐があったわ」

「本当に美味しいよ、さすが葵ねぇ。まあ味については最初から心配してなかったけどね味については」

量や見た目こそ斜め上だが、葵ねぇの料理がまずかったためしはない。


現在、我が家は両親が出張中で家を空けているため、俺と葵ねぇの二人暮らし。不器用な俺に代わって葵ねぇが家事全般を引き受けてくれているため、葵ねぇの料理の腕前は折り紙付きである。家事万能──これも葵ねぇの美点のひとつだ。

「『葵ねぇは良妻賢母で美人な俺の自慢の嫁』? もう、俊ちゃんったら、いくらなんでも褒めすぎよ♪」

「いやそんなこと一言も言ってないし心の声を改変しないで」

とはいえ、さすがにこの量を平らげるのはキツいな……。そう思いながら、俺はハンバーグをおかずにハンバーグを食すのであった。


            ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ごちそうさま。葵ねぇ、今日も美味しかったよ」

「お粗末様でした。俊ちゃんに美味しいって言ってもらえると、明日も頑張ろうって思えるわ」

そう言いながら、葵ねぇは間を置くことなく食器を洗い始める。

「でも、家事全般を葵ねぇに任せっきりにするのも申し訳ないな……。力不足は否めないけど、これからは俺も手伝わないと」

「ふふっ、心配ご無用よ。お姉ちゃんが好きでやっていることだもの。だから、これからも俊ちゃんのお世話させて?」

「とはいってもな……。いつまでもこのままってわけにはいかないし。俺もいつかは一人で生活することになるだろうし──」

俺がそう言った刹那、葵ねぇの眉がぴくりと動く。

「一人で生活? なに言ってるの俊ちゃん。俊ちゃんは、未来永劫お姉ちゃんと二人きりで生きていくのよ」

「いやいやいや、葵ねぇこそ、冗談言わないでよ」

「冗談なんかじゃないわ。お姉ちゃんが俊ちゃんにずっとずっとずーっと尽くしてあげるからね」

茶化す俺に対して、葵ねぇの表情は穏やかながら本気だ。なんというか、静かなプレッシャーめいたものを感じる。

「さあ俊ちゃん、お風呂入りましょう。お姉ちゃんが隅から隅まできれいにしてあげるからね」

「いや、風呂くらい一人で──」

「お風呂から上がったら歯も磨いてあげる。それでね、夜は二人で一緒に寝ましょう。俊ちゃんが眠れるまで、お姉ちゃんがぽんぽんってしてあげるからね」

「待った待った。葵ねぇ、話が飛躍してるよ。風呂も歯磨きも自分でやるし、夜も一人で寝るから」

「お世話は必要ないって……。はっ、まさか俊ちゃん、お姉ちゃんを食べたいの?」

「ちょっと待てい! 飛躍しすぎだよ! 天井破りだよ! その解釈はどこから引き出したの!?」

「ごめんね、気づけなくて。そうよね、ごはんの後はデザートが欲しいものね……。お姉ちゃん、ちょっぴり恥ずかしいけど、俊ちゃんになら食べられてもいいわ。さあ、お姉ちゃんを召し上がれ♪」

「ノーサンキューです!!!」

このままではらちが明かないと諦めた俺は、全速力で風呂場に逃げ込むのであった。

「待って、俊ちゃん~! Please Eat Me~!」

さすが葵ねぇ、発音は完璧だった。


            ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「はぁ、休日だってのに疲れたぜ……」

風呂から上がり、とぼとぼと自室へ向かう。

結局あの後も葵ねぇは風呂に入り込もうとしていたけど、なんとか制止して難を逃れた。にしても、今日の葵ねぇはいつにもまして世話を焼きたがっていた気がするな。

「まあ、元気が一番か……」

つぶやきながら歩いていると、やがて部屋の前に到着。と同時に、さっきまで疲弊していた俺の心は一転してバイタリティーを取り戻す。

「さーて、お楽しみの続きといこうじゃないか……えへへへへ」

扉の向こうで待つまりかとの時間を夢想する俺は、にやにやを抑えることができなかった。はたから見るとさぞかし不気味だろう。仕事帰りの新郎新婦もこんな感じなんだろうな(※違います)。

浮き立つ心に急かされた俺は、ドアノブに手をかけ、楽園の扉を開け放つ。さあ、存分に楽しもうぞ……!

「ただいま、我が愛しのまりかよ……!」

──瞬間、俺は絶句した。いないのだ、我が嫁が。さっきまで机の上で百点満点の輝きを放っていたまりかの姿が、どこにも見えないのだ。

「まりか……?」

まりかが消えたという事実を受け止めきれなくて、俺の脳は思考を停止する。

「……いやいや落ち着け、まだ消えたと決めつけるのは早い。もしかしたら部屋のどこかに隠れているのかもしれない」

そう言い聞かせて、部屋中をくまなく探してみるもやはりまりかは見当たらない。

次第に冷静さを取り戻した俺は、ショックという感情を処理しようにもできなくて、ごまかすように疑問という工程にシフトした。

「どうしてこうなった?」

そんなの決まってる。誰かが移動させたからだ。

「じゃあ誰がまりかを移動させた?」

俺ではない。晩飯を食べてから今に至るまで、俺がまりかに触れる時間なんてなかった。

「じゃあいったい誰が?」

この家には俺ともう一人しか住んでいない。俺以外にこの部屋に入れる人物は──




「……俊ちゃん、どうかしたの?」

突如、背後からかけられた声にびくりとする。毎日聞いている声なのに、なぜだかこの瞬間は冷たく感じた。鳥肌が立つほどに。

「……葵ねぇ」

「あら、俊ちゃん。とっても悲しそうな顔をしているわ……。お姉ちゃんが抱きしめてあげようか?」

慈愛に満ちた表情なのに、どこかあやしく見えるのはどうしてか。

葵ねぇの腕を制して、俺は尋ねる。

「葵ねぇ、ここにあった俺のフィギュア、知らない?」

「フィギュア? お人形さんのこと? うーん……お姉ちゃんにはよくわからないけど、そのお人形さんがどうしたの?」

「なくなったんだ、俺のいない間に」

「え? それは大変ね、急いで探さないと。うーん……でもごめんね。お姉ちゃんも力になりたいけれど、本当に知らないの。そのお人形さん、買い直すことはできないの?」

「できない。俺にとっては大事だから、すごく」

「……わかったわ、お姉ちゃんも探してみる。お人形さんの名前は?」

「まりか……」

俺は沈んだ気持ちながら、何気なくまりかの名を口にした。ただ聞かれたから答えた。だからその瞬間、それまで穏やかだった葵ねぇの表情が強張るとは思わなかった。


「まりか……? それって、さっき俊ちゃんが俺の嫁とか言って呼んでいた女の名前じゃない……」

肝を冷やした。どうして葵ねぇがそれを知っているんだ? たしかにあのとき、興奮して大きな声を出していたけど、「俺の嫁」と口ずさんだのはほんの一瞬、しかも大した声量ではなかった。それなのにどうして、葵ねぇは知っているんだ。その時にはもう、俺の部屋のすぐ側まで来ていたのだろうか?


「俊ちゃんのお嫁さんはお姉ちゃんだけなの……。俊ちゃんに尽くせるのはお姉ちゃんだけなの……」

途端に葵ねぇの雰囲気が一変する。鬼気とうつろさが入り混じったような、見たこともない容相だ。

「お姉ちゃんが俊ちゃんのお嫁さんになるの……。一生尽くしてあげるの……」

「あ、葵ねぇ、しっかりして……! 様子が変だよ!」

このままではマズいと思った俺は、葵ねぇに訴えかける。「俺の嫁になる」発言はこれまでにもたびたび……っていうかしょっちゅう口にしていたが、今回は明らかに様子がおかしい。とにかく葵ねぇをなだめないと……!

「葵ねぇ、落ち着いて! 冷静になろう」

「俊ちゃん、大好きだよ……。二人で一緒に幸せになろうね、俊ちゃん……」

「葵ねぇ、葵ねぇ!」

取り返しのつかないことになる──なぜかそう直感した俺は、葵ねぇの肩を激しくゆする。すると──


「あれ……俊ちゃん、どうしたの? お姉ちゃんの肩をつかんで」

「はぁ……よかった。葵ねぇ、正気に戻ったんだね」

まるでき物が落ちたように平静を取り戻す葵ねぇ。

「正気に戻るって……俊ちゃんってば、おおげさね。お姉ちゃんは俊ちゃんのこと大好きなんだから」

ほっと胸を撫で下ろす俺に対して、葵ねぇはのほほんとしている。

「まったく、人の心配も知らないで……」

「……お姉ちゃん、また俊ちゃんに迷惑かけちゃったのね。やっぱり俊ちゃんの前から消えるべきかな……?」

「いや消えないでよ! ……葵ねぇ、疲れてるんじゃない? ここのところ忙しそうだったし。やっぱり俺も家事の手伝いを……」

「大丈夫よ、俊ちゃん。お姉ちゃん、俊ちゃんが一緒なら無敵なんだから。……とはいえ、たしかに最近は忙しかったから、疲れがたまってるのかもね。今日は早めに寝ることにするわ」

「そうしたほうがいいよ。俺も今日はやけに疲れたし、もう寝るよ」

「あ、それならお姉ちゃんと一緒に寝る? 今ならセットで『葵ねぇのあまあま催眠ボイス』が付いてくるわよ」

「結構でーす」

ちょっぴり興味があるのはここだけの秘密だ。

「そっか、残念。でもでも、明日もいっぱいお世話してあげるからね♪ おやすみなさい、俊ちゃん」

「はいはい。おやすみ、葵ねぇ」


そうして葵ねぇと別れると、俺はベッドにダイブした。

結局、まりかがどこに消えてしまったのかはわからず終いだ。誰かに盗まれたと考えるのが自然なんだろうが……正直、葵ねぇを疑うのも嫌だ。そもそも葵ねぇがまりかに手を出す理由もない。

「はぁ……どこ行っちまったんだよ、まりかぁぁぁ」

諦めきれるわけがないが、かといってこのまま起きていたら感情の奔流に押し潰されそうなので、とりあえず眠ることにしよう。為す術もないとは、まさにこのことだ。

「……っと、窓もカーテンも開けっぱなしだった」

電気を消し、沈んだ気持ちに蓋をするように布団をかぶる。せめて夢の中で、まりかに会えないかなぁ。そう思いながら、眠りについた。











………………ん、なんだ? なにか感じるような?

誰か、いるのか?

寝ぼけまなこでよくわからない。

……いや、そんなわけないか。寝よう。

真夜中の睡魔に抗えず、俺はそのまま眠気に身を委ねた。

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