第280話 やっぱり食事は豪華です
「海中を散歩するだけで楽しいわよ。色々思っていたのと違って。魚もすごく多いし、色んな生き物がいるのが見えるし」
「大きいのが多いのは結構深い場所だから近づきにくかったな。でもずっと息が続くから色々狙えるしさ」
そんな事を話しながら昼食開始。
なお昼から食卓が豪勢だ。
ちょっとしたバイキング料理のテーブルに近い勢い。
小魚類は今回は素揚げと塩漬け。
貝類は焼いたものとスープ。
ある程度大きい魚はカルパッチョと焼き魚だ。
今回は魚も大物が多い。
潜水組、特に身体強化組の獲物が強烈だったおかげだ。
カツオというよりはマグロっぽい身質の丸々したのとかタイっぽいのとか。
魚が多すぎるのでフールイ先輩と捕えた魚は干物とか漬け物とかにしてある。
味噌っぽい調味料を買い出し組が見つけてきてくれたので西京漬け風も作った。
いまから出来が楽しみだ。
最近は海路での流通が良くなったためか食品をはじめとする商品の種類がどんどん増えてきている。
戦争が近いとか言っていたけれど民間の景気は絶好調だ。
「冬の合宿も豪勢でしたけれど、今回の合宿も食事が凄いですね」
「色々捕れるしね。料理上手も揃っているし」
上手じゃない人がそう説明。
俺も鯛や鮪のカルパッチョをソースごとパンに乗せてかぶりつく。
うん、これこそ海の合宿の醍醐味だ。
貝は焼いたのをそのまま食べるのが一番美味しい。
でもスープもなかなか捨てがたい。
なお今回も貝類の一番人気は焼き牡蠣の模様。
俺達が3人で50個近く剥がしたのにあっという間に全滅した。
「この不思議な形の貝が美味しいですね。レモン汁を少しつけて食べると最高です」
「これは探せば簡単に捕れるよ。この先の小さな川の河口部分にびっしりいたのをさっき確認したから。捕るのがたいへんだけれど」
そんな穴場を見つけたのか。
それは捕りにいかないとな。
俺は少ししか手が出せなかったがスパゲティも好評。
中でもあのアサリっぽい貝がたっぷり入ったスパゲティがもう最高。
タカス君が作ってくれたのだが文句なく美味しかった。
「故郷の味なのだ」
フルエさんが漫画盛りで取って食べている。
あれでは午後は動けないのではないだろうか。
まあそれも個人の自由だけれども。
そんなこんなで食べ終わったら午後の部突入。
今回は午前中潜水に挑戦しなかった俺達が潜水に挑戦。
俺は泳げないけれど大丈夫だろうか。
そう思ったのだけれどミド・リーに強引に勧められた。
「普通に泳ぐのと比べて息継ぎしなくていいから絶対楽よ。いいから思い切り楽しんできなさい」
そんな訳で潜水の準備にかかる。
ボンベに空気を入れて、ゴムボートの蓄電池を取り換えてと。
なお使った蓄電池はあの電気自動車に接続して充電しておく。
あらかじめ外部蓄電池も充電できるようにしてあるし、電池そのものは電気自動車用のものと共通だ。
「おすすめの場所はボートでちょい北に向かったところの入江かな。案外深さがあるし流れが少ないしね。それに色々な魚や貝がいたよ」
「獲物を入れる網と貝をはがす専用ナイフを各自で持って行った方がいいわよ。そのかわり水中銃は1つでいいから。さっきは牡蠣がいっぱいいたのにナイフが無くて悔しい思いをしたしね。何なら私が案内するわ」
そんな訳でミド・リーに案内してもらい、俺、フールイ先輩、キーンさんという午前中のメンバーと一緒に潜水へ。
電動ゴムボートは小走りくらいの速さで水上を走る。
「楽しいですねこれは」
「これだけでも楽しいけれどね、海の中はもっと楽しいわよ」
「期待」
確かにゴムボートで海上を動いているだけでも充分楽しい。
波で上下したりするのも愛嬌だ。
小さな川の河口部分に出来た入江の岩陰にアンカーを落としてボートを停める。
「それじゃ潜水準備ね。マスク部分はゴムで強めに顔につけて中にある息を吐く筒を口で咥える。そうしてゆっくり息を吐いて吸ってを繰り返すとマスク部分がしっかりくっつくから。最初少し空気が少ない気もするけれどすぐ慣れるわ」
この辺の半分は俺が設計したのだけれどな。
マスクの中の空気はちょっとだけ気圧低めにしてある。
つまり気圧でマスクをより密着させる構造だ。
なお水圧がかかると少しずつマスク内の気圧も上がるようになっている。
この辺は記述魔法様々という感じだ。
言われた通り全員が獲物用の網とオイスターナイフを装備。
あと軍手と脚フィンも装備。
水中銃はとりあえず俺が装備してエントリー。
水中散歩へと繰り出す。
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