第239話 そして翌日へ

 肉祭りでもナカさんがちゃんとデザートを作っていてくれた。

 ちなみに今夜のデザートは餡蜜のずんだ豆バージョンだ。

「懐かしいよな。去年の夏だっけこれ作ったの」

「そうそう。あの時甘いものを探してこれになったんだよね」 

 でもそこまで食べると流石に全員が限界だ。

「動くのが辛い」

なんてフールイ先輩が言っている状態だし。

 フルエさんに至っては動くのが辛いではなく動けない状態だ。

 これは一度お腹いっぱいになった後、タカス君の『食べ過ぎ魔法』でお腹の中を整理し、そこに更に肉だのデザートだのを突っ込んだ結果。

 つまり自業自得という奴である。


「片付けは明日にしましょう。清拭魔法はかけておきます。では私は失礼します」

 ナカさんは清拭魔法でテーブル上を一応綺麗にした後、移動魔法で自分の部屋へと消えた。

 多分歩く余裕が無かったのだろう。

 他の皆さんも様子は似たり寄ったり。

 オマーチの3人も同様だ。

 なお俺自身は歩いて部屋に帰る程度は出来た。

 でもその程度なので当然夜はここで終了だ。


 翌朝。

 肉祭りの翌朝はいつもはつけ麺。

 でも此処の朝は寒いので暖かい麺を用意する。

 スープは塩&鶏出汁タイプと煎酒&牛骨出汁の2種類。

 トッピングは野菜各種からゆで卵、茹で鶏まで基本的にさっぱり系を用意。

 鶏唐揚げなんてものも欲しい人がいるだろうから用意。

 汁追加用にガーリックチップとか刻みタマネギとか酢とか唐辛子粉も。

 なお今回に限り麺はスパゲティ代用ではなく本気の中華麺。

 家から生麺を持ってきたのだ。

 ただ数量的に1回分がやっとの状態。

 即席麺や乾麺の開発が今後の課題だな。

 そんな用意をしていると匂いに釣られて皆さん起きてくる。

 例外はシンハ君とヨーコ先輩でこの2人は今朝もトレーニングをした模様。

 何というかタフな人達だ。

 身体強化組のもう1人フルエさんは起きられなかったようだけれど。


「この麺は初めてですね」

「肉祭りの後の朝はだいたいこれだよ。いつもは冷たい麺だけれど」

「でもいつもの麺とちょっと違う。それに暖かい」

「今回はスパゲティ代用ではなく本式のラーメン用の麺だ。あと此処は寒いから暖かいのにした」

「おかずは取り放題なのだ」

「でも回りをみて加減しろ」

 最後のはタカス君からフルエさん宛てだ。

 そんな感じで朝がスタートする。

「まずは吊しておいた鹿魔獣チデジカの解体だね」

「終わったら買い物に行って、そして夕方また魔獣狩りだな」

「今日の買い物は食品だけだから全員じゃなくてもいいね」

「その辺は適当に当番を作ろうか」

 確かにそれでもいいな。


 そこで俺はふと昨日聞き忘れた事を思い出した。

「そう言えば熊魔獣アナログマの内臓とかは幾らになったんですか」

「報奨金が小金貨1枚10万円、肉と皮、内臓含めてこれも小金貨1枚10万円だ」

 鹿魔獣チデジカは幾らだったっけ……

鹿魔獣チデジカは毛皮と報奨金で1頭正銀貨1枚1万円、肉が1頭分で正銀貨2枚2万円、内臓が1頭分で小銀貨1枚1000円だから6倍以上だな」

「そんなに高いんですか」

 キーンさんが驚いている。

「まあ熊魔獣アナログマは滅多に捕れないからな。罠をあちこちに仕掛けても年に2頭捕れるかどうからしい。私達も昨年は結構苦労したからな」

「まさかあんな狩りの方法があるとは思いませんでしたからね、昨年は」


 そこから昨年の熊魔獣対峙の話になる。

 何人も魔法杖を飛ばされたとか攻撃魔法を弾かれたとか。

 それだけ苦労しても報奨金だけだったとか。

「昨年は結構苦労されたのですね」

熊魔獣アナログマの時だけだけどな。まさか昨日のあんな方法があるとは思わなかったし」

「あの特別な魔法杖とアキナ先輩のおかげ」

「でも普通はあんな方法思いつかないと思います」

 確かに窒素ガスで窒息させるなんてこの世界の普通の発想じゃ無いよな。


「そういえば魔石は売っていないようですけれど何に使うんですか」

「魔法道具に使えるんだ。昨日は使わなかったけれどあの灯り用とか」

「昨年ここで取ったものはほとんど研究用で使ってしまいましたけれどね」

「今年のも研究用かな」

鹿魔獣チデジカの魔石は電気関係色々に使えるし、今年は風魔法の石もできるだけとっておきたいんだ。空を飛ぶ機械用につけて、万が一エンジンが止まった際の非常用に使うつもりだ」

「風魔法の魔石だけで空を飛ぶのは無理かな」

「出来ない事はないけれど魔石を相当使うと思うな」

「それはそうとしておかわりなのだ」

 そんな感じで朝食の時間が続く。

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