第215話 やっぱり出てきたお邪魔虫

 説明だけで半時間以上はやったのではないだろうか。

 頼むから俺にそんなに色々質問しないでくれ。

 俺の知識は所詮日本の高校生に毛の生えた程度なんだ。

 あんまりしゃべるとボロが出る。

 まあ何とか無事に終わらせて解散。

 ただ残った中に見知っている顔が4人いたりする訳だ。

「いやあお疲れ様。大盛況だったね今の展示説明会」

 勿論今の台詞はホン・ド第一王子殿下。


「本当はここまで説明するつもりはなかったんですけれどね。仕方なく」

「でも分かりやすくて良かったです。あの燃料を手に入れられるならすぐにでも自作して試したい位です」

 これはジゴゼンさんだ。

「ジゴゼンがどうしても来るというからついでに連れて来た」

「熱気球とはまた別の空を飛ぶものを実演するとお聞きしましたので。でも予想以上の物でした」

 後ろでシャクさんとターカノさんがそう言って苦笑している。


「でも一般受けするのはおそらく今教室でやっているものですよ、きっと」

「勿論そっちも見に行くよ。でももう少しだけ今の飛行機について聞きたいな」

「でも今さっきまでので説明は全部ですよ」

 実際説明できる部分はほぼ全部説明した。

 あとは燃料さえあればそのうちエンジンは誰か作るだろう。

 元々それくらい簡単な代物なのだ。

 記述魔法部分と燃料の入手を除いては。


「なら聞くけれどさ。このままでは人間が乗れる飛行機は作れない。そう言っていたよね」

「ええ」

 パルスジェットでは振動が多いし出力も低い。

 連続運転可能なジェットエンジンには高熱に耐えるタービンが必要だ。

 でも今の材料ではエンジンの高熱に耐えられない。

 このパルスジェットエンジンが限界だ。

「ならばさ。例えば新たな材料があれば作ることは出来るかい。例えば普通の鉄以上に高温に強い材料とかさ」


 うわっ。何と言うことだ .

 殿下め、こっちの弱点をピンポイントで指摘しやがった。

 わかって言っているのだろうか。

 もしくは入れ知恵されたのだろうか。

「まあその辺の話はあとでゆっくりしよう。それ以外にも燃料の入手先とか色々聞いてみたい部分もあるしね。その辺は後程研究室で聞いた方がいいだろう」

 奴めこっちの弱点を的確についてきやがる。

「では教室での発表に行きましょうか」

「わかりました。先にどうぞ。俺はこちらを少し片づけてから行きますので」

 とりあえず模型飛行機を回収して総点検しなければならない。

 まあ工作系魔法と鑑定魔法があれば簡単だけれども。

 なお熱気球の方は俺が質問攻めにあっている間に撤収済みだ。

 薄情者と言いたいが仕方ない。

 

 アンカーに飛行機を乗せ、のんびり引っ張って教室へ。

「殿下が来てるわよ」

 展示室の店番をしているミド・リーが教えてくれる。

「知っている。飛行機の方にも来ていたし」

「今は一般客と一緒に向こうの発表を見ているわ」

 相変わらず緊張感や警戒心のなさそうな殿下一同だ。

「それで動く絵の方はどう」

「最初はあの場所にちょうどくらいの人数だったけれどね。何か評判になったらしくもう廊下側にずらっと並んじゃっている状態。今は2話連続でやってお客さんを入れ替えてまたすぐ上映って感じよ。中もぎっしり椅子を入れなおしたしね」

 そんなことになっていたのか。

 確かにあのアニメはいい出来だったけれど。


 展示室の方もそこそこ人がいる。

 自動ドアの実演は動きがあるから面白いらしい。

 常に誰かが試しているような状態だ。

 クッション等も結構試用されている。

 そして自転車は……あれ?

「自転車は2台ずつなかったっけ」

 3輪車2台、MTB2台を展示していた筈。

 でも1台ずつしか残っていない。

「1台は貸し出し用にしたんだって。これも返ってくると次に貸出という感じかな。整理券も無いしあるときに貸し出す感じだけれどね」

 無茶苦茶順調な様子だ。

 まあ初日だし安息日だし人が多いせいもあるけれどさ、きっと。


 板で区切った隣の区画が開いて人がどっと出てきた。

 上映が一区切り終わったようだ。

 思ったよりも人が入っていた模様。

 最初は20人分しか席を並べなかったのだが、その倍は入れている。

 しかも生徒学生だけでなく大人も結構入っている感じ。

 そして最後に殿下一行が出てきた。

「相変わらず反則だねここの展示は」

「特にわんこが出てくる方、あれ反則ですわ」

 おいおいターカノさん。

 一般客になりきらないでくれ。


「それにしても今回はずいぶん色々作ったんだね」

「人が多くなったので。色々やったらこんな感じになってしまいました」

「それで展示が終わるのは」

「今回は3時半過ぎまでこんな感じですね」

「なら4時過ぎにいつもの研究室でいいかな。色々聞きたいことがあるからさ」

 まあ仕方ない。

 一応スポンサー様だしこの国の第一王子殿下だ。

 それに4時過ぎなら何とか全員集まれるだろう。

「わかりました。全員に連絡しておきます」

 そう返事をしておく。

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