第21章 やはり迷惑なあの御方

第189話 夏合宿の忘れ物(上)

 色々あった合宿の前半。

 それと比べると合宿の後半は極めて平和に過ぎていった。

 買い物をしたり色々食べたり湖で泳いだり。

 極めて普通かつ健全なリゾートだ。

 取りあえず俺は湖でも泳げない事も判明した。

 むしろ湖の方が海より身体が沈みやすいような気がする。

 海水の方が比重が重いせいだろうか。

 まあ例によってボディボードで浮かんでいたけれど。


 強制トレーニングもあの後2度あった。

 ただ同じコースだったので先がわかる分楽だった。

 そして合宿最終日前日夜に悲しいお知らせ。

 測定結果、半数以上の方々の自重が増量してしまった事が発覚した。

 強制トレーニングや湖で泳いだりしたのにも関わらずだ。

 あれだけ毎食食べてジャンクフードまで加わったのだから当然かもしれない。

 俺はむしろ増量したいくらいだから別にいい。

 でも女性陣が悩んでいるようだ。

 フルエさんとヨーコ先輩は大丈夫だったようだが他はもう……

「ウージナに帰ったらダイエットするんだ」

「皆で歩く会でもやりましょうか」

「俺は参加しないぞ」

「でも一番トレーニングが必要なのはミタキだよね」

 そんな何処かで聞いたような会話が繰り返される。


 そして最終日の朝。

「何やかんやあったけれど楽しかったね」

「涼しいし一通り何でも出来るのはいいよな」

「でも微妙に物価が高いです」

「山の上だし仕方無いのだ」

 そんな事を言いながら車に色々詰め込む。

 何気に色々荷物が多い。

 皆さんがブランド商店街で色々買いあさったせいである。

 洋服だのバッグだの色々と私物が増えているのだ。

 そういう意味ではこの場所、お金を落とす場所として色々良く出来ている。

 感心せざるを得ない。


 そんな訳で途中シンコ・イバシに1泊、エビゾ・ノに1泊して帰ってきた。

 途中西海岸でしか購入出来ない色々を買ってこれて俺は満足だ。

 例えば米各種だとか米粉だとか。

 更に途中で魔法銀ミスリルも追加で4半重1.5kg購入してきた。

 値段はターケダと同じで正金貨2枚100万円

 本当はもっと欲しかったのだけれども、ナカさん曰く。

「今回の旅行では使いすぎました」

とのことだ。

 思い当たる節は色々あるので仕方無い。

 ウージナの研究室に着いたのは午後4時過ぎ。


「やっぱり遠いよね。エビゾ・ノとかシンコ・イバシとか」

「でもこの程度で行けるというのはやっぱり便利ですわ。馬車だと4日から5日は最低かかりますから」

「実家から此処に出てくる時は6日かけたのだ」

「でもこの蒸気自動車や蒸気ボートで慣れてしまいましたからね」

 この時代としては便利すぎる道具も慣れると当たり前になってしまう。


「まあ無事に終わって良かったね」

「そうそう。楽しかったですしね」

 そうなのだがなぜか俺はすっとしない。

 何か忘れているような気がするのだ。

「それじゃ明日も8時集合ね」

「そうだね」

 合宿が終わっても結局集まることには変わり無い。

 シモンさんは新型の車を作る予定だし、俺も手伝うつもりだ。

 アキナ先輩用万能杖の改良も製作許可が下りた。

 肩掛けも出来るハンドバッグ形になる予定だ。

 夏は暑いけれどまだまだやる事はある。

 女性陣の一部はダイエットを開始するらしいけれど。


 そして翌朝。

 俺達は何を忘れていたのかに気づくのだった。

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