第133話 新人会員への関門
風魔法用の装置はその日のうちに完成した。
元々電気魔法用である程度の見当がついていたからわりと簡単。
コイルの容量もコンデンサの容量も電気魔法用とそこまで違わなかったし。
あとは明日以降、計算で治療魔法用、熱魔法用、工作魔法用等の容量を求めて再び試作。
これらを回路に組み込み、最後に全ての出力に適したアンテナを作れば完成だ。
つまりまだまだ道は遠い。
そもそもこれら全部に対応できるようなアンテナなんて俺は憶えていないし。
ログペリあたりならいいのだろうけれど、アレの長さを計算する方法なんて俺は憶えていない。
結構面倒な数式だったような気もするし。
でもまあ今の段階ではまず、一通りの魔法のコイルとコンデンサ容量を調べる事を優先しよう。
鏡関係の片付けが終わった所で撤収。
また明日という訳だ。
取りあえず例の電撃専用魔法杖の事は外では話題にしないでおく。
アキナ先輩があれだけ反応するのは珍しい。
つまりそれだけ危険なものという訳だ。
俺達には今ひとつ実感は無いのだけれど。
さて、いつも通り3人で帰る途中。
「そう言えば1年でうちの研究会のことを調べている奴がいるらしいんだ」
シンハ君が意外な話題を口にした。
「何だそれ」
「ヨーコ先輩に聞いたんだが学園事務局から通知があったそうだ。昨年学園祭で最優秀賞をとったグループ研究実践についての情報開示請求が来ているとさ。
なお請求事由は『課外サークル選択の参考のため』だと」
そろそろ課外サークル活動を決める時期だものなと俺は思う。
「ヨーコ先輩が気になってまわりに聞いてみたところ、剣術研究会にもそれらしい奴が来たらしい。ヨーコ先輩や俺が放課後に何処にいるかとか、色々聞かれたと言っていた。そう言えばちょい前に俺について色々聞かれたと言っている奴がいてさ、この件かと俺も気づいた訳だ」
「つまりヨーコ先輩とシンハが会員だという事を知っている訳か」
「情報開示には全員の名前は出ていないが、学園祭の表彰式に出た人の名前は記載があったらしいんだ。つまり俺とヨーコ先輩は存在がバレているらしい」
なるほど。
「調べているのが誰かはわからないのか」
「1年生としか開示してくれなかったそうだ。ただどうも複数らしい。俺の事を聞いたのは女子だったと言っていたし、ヨーコ先輩について聞いたのは男子だったらしいんだ」
最低2人か、それとも変身魔法持ちか。
「去年の学園祭の件があるしね。学校の公認課外活動一覧に出ていなくても、うちに来たいという新入生がいておかしくないよね」
「でもどうする。公に受け付ける訳にはいかないだろ」
俺は頷く。
何せうちの活動、機密事項が多すぎる。
「一応自分の実力でうちの研究会までたどり着けたら。そう先輩達は言っていたけれどさ。それって研究室の前で待っているとかそんな感じなのか? まさか壁抜け魔法とかで研究室内に入り込めばOKって訳じゃないだろ」
「そうね。実際は活動拠点の研究室前までたどり着いて私達に声をかけたら、でいいと思うわ。勿論その後国王庁の審査があるけれど」
それが妥当かなと俺も思う。
そもそもあの場所、研究院の研究棟には関係者以外は入ることが出来ない。
関係者以外が入るには、
① 学校側に理由を記載した通行許可証を申請する。
② 学校側は理由を妥当であると判断した場合、許可証を発行する。
③ 許可証を受け取ってゲートを通過する。
という手順が必要だ。
なお研究院の研究棟は移動魔法防御の魔法陣が展開されている。
だから移動魔法で侵入する事は出来ない。
管理魔法も常時複数が展開されているので、窓や通風口等から侵入することも不可能だ。
ただ勿論全く不可能かと言えばそんな事は無い。
例えば実験支援施設の使用という理由で許可を取る方法がある。
研究院には学校内共通利用の実験支援施設がある。
第3研究棟102号室、つまりこの部屋の隣だ。
そこを使う事に説得力がある生徒なら、指導教官の名前で許可を出して貰えるだろう。
例えばかつて初等部時代に研究で賞を取った生徒等だ。
他にも考えられる方法がある。
4月の最終週には研究院で魔法学会が開かれる。
そこへ出席するとなれば当然許可証も出るわけだ。
学会そのものは第1研究棟の大教室で行われるが、通行許可証そのものはどの研究棟も共通。
だから学会員として登録していれば許可証も出る。
例えばミド・リーは初等部時代から魔法学会生物魔法分科会の会員。
そういう立場なら入ることも可能なわけだ。
他にも方法はいくつか存在する。
問題はそれを調べて実行する程の能力や行動力があるかだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます