第50話 契約の条件
あの日はあの後、ミド・リーの家の治療院に八木アンテナを設置した。
設置場所は2階のミド・リーの部屋で壁に下を向けて固定。
更に魔法伝達用の銅線を下の治療室ベッドの真横まで伸ばしてある。
下でミド・リーの両親のどちらかが
① 治療室ベッドの横の踏み台を踏み、
② 利き手で銅線につながっている小型魔法杖を持つと、
③ 治療用ベッド上が八木アンテナの正面になり、魔法を使える。
というシステムだ。
最初はこの八木アンテナの効果を疑問視していたミド・リーの両親も、実際に試用してみて意見が180度変わった。
やはりアンテナの長さはそのままでも大丈夫だった模様。
なお杖の試用で使ったのは俺自身の身体だ。
結果今までの患部が治っていることが確認出来た。
今度から治療が難しい患者には積極的にこれを使ってみるとのこと。
なおこのアンテナの件は秘密にしてくれる事も約束してくれた。
これの危険性はこの世界に住む住人ならすぐ理解してくれるようだ。
なおミド・リーの部屋にある八木アンテナは板材と本棚で隠してある。
見てもそこに八木アンテナがあるとは誰も気づかないように。
その辺はシモンさんの腕というか魔法だ。
アンテナなしでもシモンさんの魔法はやっぱりチート。
アンテナが長すぎるためミド・リーの部屋の天井まで加工している。
でも注意して見てもその痕跡がわからない状態だ。
さて八木アンテナを作った2日後。
本日も授業が終了し放課後となる。
アキナ先輩とヨーコ先輩の両巨頭が教室脇に来ているのは残念ながらいつも通り。
でも今日は他にシモンさん、ナカさん、更に通常は単独行動派のフールイ先輩までもいたりする。
これだけきれいどころが揃ってしまうといつも以上に目立つ。
目には優しいけれど俺の心臓(治療済)にはとっても悪い。
何だよ一体!
「本日は皆様にお話がありますの。それで集まっていただこうと思いまして」
「いつもの部屋では駄目なんですか」
「学校内でお話をした方が都合がいいのですわ。詳しくは準備室でお話することにしましょう」
そんな訳で久しぶりに実験準備室へと足を運ぶ。
中は錬金術研究会で使っていた頃のままだ。
なお本日は奥の正面にアキナ先輩とヨーコ先輩が座る。
どうやらこの2人から何か説明があるらしい。
「まず最初に。新型魔法杖は軍で取り扱う事に決定しましたわ。国王庁の方でも了解が取れた模様です」
「仲の悪い親父共が相談の結果、その方向で行こうという合意が出来たそうだ。近日中にその辺の体制は整えるらしい」
なるほど、今日の集合はその件だったか。
でもそれならいつものシンハ宅別館でやってもいいような気がするけれど。
「条件もだいたい私達の考えた通りになりましたわ。
① 基本的には軍が一括して取り扱う
② 私達は自由に使用してもかまわない
③ 構造そのほかの秘密はそれぞれ厳守する
という感じです。なおその報酬として
一気に空気がざわっとする。
大金貨100枚とはこれまたとんでもない金額だ。
とんでもなさ過ぎて実感がわかない。
8人で均等に割ったとしても
「他に研究奨励金として月当たり
おい何だよその好待遇。
何かもう危険なくらいだぞ。
「その代わりと言っては何だけれど、条件がついた」
ヨーコ先輩の台詞が俺達を一気に現実に引き戻す。
どんな条件だそれは。
今までの説明が好条件過ぎただけに非常に怖い。
「いままではシンハ君の家の別館で色々研究したり作ったりしていたのですが、その件について物言いがついたのです。蒸気船とか新型魔法杖とか国防を左右するような重要技術を街中のそんな処で安易に開発して欲しくない。もっと秘密維持に適した場所でやって欲しいと言うことです」
「具体的に言うと、学内に場所を用意するからそこで研究活動をやってくれ。その代わり今のシンハ君宅別館は引き払ってくれ。そういう話だ。
代わりの場所はもう準備が出来ている。もし良ければこれから見に行くつもりだ。それで昼休みにアキナ先輩と相談して、ここで皆に説明しようという事になった」
なるほど、それで学校内で説明した訳か。
「それじゃスキンケア製品の生産はどうするんだ?」
「まずは用意したという場所を見てから考えようよ」
「そうですね」
「同意」
「俺もまず場所を見てみたい」
そんな訳でヨーコ先輩の先導でその用意されたという場所を見に行く事になった。
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