第09話 最後の超魔法

 もつれあい、倒れているアインスとドライ。

 一体どれほどの爆発が二人を襲ったのか。服の半分以上が消し飛んでおり、白い肌が見えている。いや、白かったというべきだろう、大半が焼け焦げてしまっているからだ。

 二人は、カズミを睨みながらゆっくりと立ち上がった。


 二人の横に、ふらりふらりとした足取りでツヴァイも並んだ。首から上を失って、胴体だけの状態で。


「雑魚と遊ぶのは、もう終わりだ」

「分かっている。早く追い付き、今度こそりようどうさきを始末せねばな」


 二人の小声の会話。追い付くとは、シュヴァルツの元へということだろう。


 アインスとドライ、首のないツヴァイ、三人は白い光の剣を構えてカズミへと一歩詰める。


 カズミは焦るでも怖じけ付くでもなく、ただぷっと吹き出した。


「その雑魚に、三匹で挑んで負ける奴は誰かなあ」


 いい終えるかのうち、茶色い髪の毛がなびいていた。

 身に纏う気が、一瞬にしてどんと膨れ上がっていた。

 ポニーテールを結ぶ紐がぷつり切れ、茶色い長髪が激しい上昇気流を受けたかのようにばさりばさり上へとたなびく。

 足元に光が浮き上がると、それは直径十メートルはある大きな五芒星魔法陣の形になっていた。

 戦いの中でこっそりと仕掛けておいた魔法陣を、時は今と発動させたのだ。

 カズミを中心に、アインス、ツヴァイ、ドライの身体も完全に五芒星の中に入っている。


「く」


 アインスが忌々しげに呻く。

 三人とも、動こうにも動くことが出来ずにいる。足がぴたり地面に張り付いているためだ。魔法陣によって呪縛されているためだ。

 だが、


「児戯に等しい!」


 アインスが、右手に握った白い光の剣をなにかを断ち切るように振り下ろすと、途端に魔法陣の輝きが鈍くなった。

 それはつまり呪縛が弱まった、ということなのだろう。三人は、白い光の剣を地へ、魔法陣へと叩き付けて、その勢いを使って大きく跳躍したし、呪縛陣の支配下からあっさりと逃れることに成功した。


「だろうな」


 通じないことは分かっている。

 だが、その一瞬の足止めでカズミには充分だった。充分もなにも、こうなるように仕向けたのだから。


 カズミは残る片足で強く地を蹴り、大きく飛んでいた。

 飛翔魔法も発動させて、大きく、高く、瞬きのうちにアインスたちを追い抜いた。

 白い光を輝き放つカズミの身体が、さらに白く、白く、白く、輝いていた。凝視に耐えないほどに、すべてを溶かすほどに、明るく、眩く。

 くるり身体を前転させながら軽く天を蹴ると急降下。超魔法の呪文を唱えながら、三人へと突っ込んでいった。


 直後に起きたこと、それは超新星をも凌ぐ激しい光の放出と、万物すべてを吹き飛ばすかのような大爆発であった。

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