第03話 どうすればゲームは終わる?

 どれくらい、経っただろうか。

 大爆発の激しさなどいつのことか、静寂が戻っていた。

 ただし、周囲は本当にすべてが消し飛んで、なくなっていた。

 床も、地下室も、すべてなくなって、地中がえぐれて、直径数十メートルもある蟻地獄が出来上がっている。

 建物の上階も、何層分も消失して大きな吹き抜けになっている。


 すべてが吹き飛んで、そのすり鉢状になった底には、薄く透けた球体が輝いており、中には二人の少女がいる。

 アサキが片手を天へとかざし、片腕でカズミの身体を強く抱いて引き寄せている。

 魔法障壁である。

 アサキは咄嗟に非詠唱魔法を使って、大爆発から自身とカズミとを守ったのだ。


 ぱらぱらと、まだ細かな欠片が落ちてくる中、張った障壁が溶けて消えた。

 アサキは息を切らせながら、カズミを抱えた腕を離すと顔を見て無事を確認した。


「カズミちゃん、大丈夫だった?」


 確認したけど声も掛ける。


「……あ、ああ。ありがとな。……でも、ヴァイスが……粉々に消し飛んじまった……」

「いや、無事だよ。ヴァイスちゃんは」


 なにが起こったのか、アサキは見逃していなかった。

 だからこそ、咄嗟に魔力障壁も張れたのだ。


 先ほどの大爆発は、単なる目くらまし。

 それと、ついでにアサキたちが死ねば有り難いというあわよくばだ。シュヴァルツの目的はヴァイスを連れ去ることだが、それを確実にするために。


 真っ白な光の中、ヴァイスを連れ去ろうとするシュヴァルツの姿はアサキにはっきり見えていたけれど、急に膨れ上がるエネルギーを感じて慌てて障壁を張って身を守るのが精一杯でなにも出来なかった。


「無事っつっても、どうかされちまうんだろ?」

「分からない……」


 隔離されるだけなのか。

 それとも……


「くそ、シュヴァルツの奴! 至垂のアホを取り込んで、さらにヴァイスまでがあいつのいいようにされたら、あっという間に宇宙が滅ぶぞ!」

「そうだね。ヴァイスちゃんに魔力糸を張ってあるから、すぐに追い掛けよう」

「はあ? お前、いつの間にそんな……」


 魔力糸とは、魔力で作った精神力の糸だ。

 ヴァイスが連れ去られるのを阻止は出来なかったが、魔法障壁を張る直前に魔力糸を投げ付け絡ませておいたのだ。


「行こう、カズミちゃん」


 宇宙が、世界が、という話も大切だけれど、それ以上に、友になれるかも知れない女の子を助けるために。


「おう」


 広い部屋の、深くえぐれて地中が覗く底辺で、二人は決意を固め、見上げ、駆け上がろうとした、その時である。


「そうは、いかない」


 不意にそんな、気味の悪い声が聞こえたのは。


 巨大な蟻地獄の傾斜の上に、ゆらゆら揺らめく透明な人影が見えた。

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