第08話 致命的な欠陥

 簡単なことが原因だった。


 時の流れを早めた途端に起きた、記録層の障害のことである。

 やはり、時の流れを早送りしたことが直接の原因だった。

 宇宙空間そのものの内包記録、無限空間記憶層アカシツクレコードを記録媒体として利用する仕組みであるが故に、現実の時間の流れと同調させていないと動作が破綻してしまうのだ。

 情報伝達の緩衝領域であるバッファなどは理論上存在し得ない技術であるのに、バッファが絶対必要な運用をしてしまったために起きた、必然のトラブルであった。


 ある程度まで同期ずれが進んだところで、崩壊現象が生じるわけであるが、現実時間での千年という、機械には一瞬、人類には無限、という時の流れの性質柄、臨床テストで欠陥を見抜くことが出来なかったのだ。


 後のAIからすれば、作り手である人類が何故設計段階で気付かなかったか、というところであろうが。

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