第07話 46億年、滅びは一瞬

 現実世界において、どれだけの時が流れたか。


 各星系へと散らばった、人工惑星内の仮想世界において、いよいよ時の流れが加速されたのである。

 最初の、指示の通りに。


 あとは加速度的、遠からずに人類は知ることが出来る。

 人類の辿る未来の一つを、先に手に入れることが出来るのだ。

 終末における、人類のあがきを知ることが出来るのだ。


 そうなるはず、であったのだが……


 ならなかった。

 現実時間で千年も経たないうちに、仮想世界が崩壊してしまったのである。

 つまりは、データが消去されてしまったのである。


 超次元量子コンピュータを開発した時の実験では、問題なく時間の流れを制御出来た。

 だからこそ打ち立てられた、計画であったというのに。


 これは一基のサーバだけではない。

 各星系に送り出した人工惑星、全体で起こった。


 もちろん、バックアップデータも無限空間記憶層アカシツクレコードに書き出してはいた。

 しかし、リストアすることが出来なかった。


 それどころか……


 各人工惑星の、各仮想世界は、初めて人類が仮想世界を稼働させた西暦3828年から始まっているのであるが、その、起源たる3828年から再稼働させることすらも、出来なかったのである。


 十五基ある人工惑星の、各仮想空間。

 それぞれ陽子単位で太陽系の空間規模を持ち、現実以上の現実として、地球には人類も暮らしていた。

 現実世界の時間において稼働開始から約一万年、仮想世界内に流れた時は数億年、その、積み上げた歴史が、一瞬にして消滅してしまったのである。

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