第06話 十年前の出来事

 犯人は、当時の主であるおおとりむねひこ

 おおとりせいの、実の父親だ。


 二階にある洋室の一つで、事件は起きた。

 きっかけは、妻に不倫をされた、と宗彦が勝手に思い込んだこと。


 妻であるふうを、その洋室で問い詰めているうちに、宗彦が激高。

 たまたまなのか、用意していたのか、近くに置いてあったハンマーを手に取り、頭部を横殴りに一撃し、殺害。


 その時、部屋には、口論している夫婦を仲裁しようとしていた、二人の娘もいた。


 長女であるえいは、妹である正香を守ろうとして殺された。

 守るために宗彦をナイフで刺そうとして、返り討ちにあったのだ。


 そこで我に返った宗彦は、ショックを受け、後悔し、永羅の持っていたナイフを使って自害。


 現場にいた者の中で、生き残ったのは、一番幼い正香だけであった。


 それから一時間ほどして、一緒に暮らしている叔父夫婦が外出から戻って、事件が発覚した。


 脳が崩壊しないための防衛反応だったのか、それともそれを形見だと思えばこそなのか、正香は、その洋室の床にぺたんと座って、母親のリストフォンを両手に持ち、ぶつぶつ意味不明な言葉を呟きながらいじっていたらしい。


 これが、十年前の出来事である。

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