魔法使いのなるはさんとせいかさん

     1

 天王台西公園、納涼漫才大会。


 そんなにぎゅうぎゅうでもないが、それなりに賑わっている。


 現在ステージに上がっているのは、モーニングを着てチャップリン髭を付けた男装の二人。大鳥正香と平家成葉である。


「なんかあ、わてら二人、どおーも影が薄いでんなあ」

「そうでございますでんなあ」

「ほならこう、なんかドカンと、でーっかいことやっちゃいまひょかーっ!」

「どのようなものでしょうかでんがな」

「(ゴエにゃん、でんがなの使い方おかしいよっ。こそっ)えっと、例えばあ……」


     2

「なか卯の牛丼、特盛で頼むとか」


 ぴっ、と人差し指を立てる成葉、の顔を、


「……」


 じーーーーーーーっ、正香がつめたーい視線で見下ろしている。


     3

「ちょ、超特盛っ、もちろんっ、しかも一週間連続っ! でーーかーーいーーぞーーーーっ!」


 あたふたあたふた。

 外してしまった恥ずかしさを、ペラペラ畳み掛けごまかそうとする成葉。だけど時遅く、周囲のお客さんたちもすっかり黙り込んじゃった。


     4

「まあ、影が薄いのがわたくしたちということで」


 フォローしつつ成葉の背中をぽんと叩く正香。

 初の冠4コマもアサキさんに乗っ取られましたし。はああ。などと小声でため息つきながら。


「うん……ナルハとゴエにゃん、地獄まで一緒だ」


 成葉はまだ羞恥に赤い顔に、ちょっと幸せそうな笑みを浮かべて、ぴたり正香に身を寄せた。


 まったくオチてないけどこの二人らしいからまあいいやあ、のなるはさんとせいかさん   ― 完 ―

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