第01話 またまた転校生?

「いや、よくきてくれたねえ。大きくなったねえ」


 ずんぐりむっくリで、なんだか子熊に似ている、ぐちだいすけ校長、齢四十七、肘を置いて手を組んで、ニコニコ嬉しそうな顔である。


「はっ、関東なんかきたなかったけど、しゃあないやろ。おとんが恩のあるっちゅう、おっちゃんに声を掛けられたんじゃあ。面倒やけど、しゃあない」


 机越しに向き合い立っている、ショートカットの女子生徒は、そういうと、おでこに手を当てて気怠そうな顔で髪の毛を軽く掻き上げた。


 非常に整った可愛らしい顔立ちであるが、少しいやかなり気が強そうにも見える少女である。

 長い前髪を横に流しておでこを出しているところが、なおさらそうした雰囲気を強調させているだろうか。


 彼女の着ているのは、女子制服。

 ではあるが、フロックコートっぽい上着に、膝下丈の長いスカートなど、ここ天王台第三中学とはまったく違ったものである。


「うちちょっと雰囲気が緩いから、あの子たちこれでピシッとするといいんだけどなあ。一つ上の学年の魔法使いマギマイスターがいなかったせいで、現在三年生が一人もいなくて、ヴァイスタが出るたびにハラハラしてたんだよね」

「うーん、相変わらずのゴリラ顔やなあ」


 全然ひとのいうことを聞いていない女子生徒、腕組みしながら校長の顔に自分の渋い顔を寄せて、まじまじと見つめている。


「いまそんな話してないでしょお? キミが入ってピシッとするとか褒めていたのに、全然聞いてなくてやっぱゴリラ顔やーんとか、おかしくないかなあ?」

「動物園にも飽きてきたし、さっそく教室に行ってくるわ。ほいじゃっ」


 女子生徒は、ははっと笑いながらスカート翻し校長室を出ていった。

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