[Ver.2]ブレイガーO -異世界で作られたスーパーロボット-

来賀 玲

第1章:異世界初!?驚愕のスーパーロボット誕生!!

プロローグ:空にそびえる鉄の城



 超古代竜邪巨神 ゴルザウルス



               登場










 その日、




 街は巨大な怪物に襲われていた。







 ズゥン、ズゥン……ズゥゥン!!


 巨大な足が、レンガで舗装された街を踏み潰し、建物を蹴り上げて破壊する。



 グルゥァァァァァァァァァッ!!



 巨大な怪物が、燃え盛る街で吠える。


 街は逃げ惑う人々や亜人達で溢れ、パニックと恐怖の奔流が支配する。



 ズガァァァァァンッ!!



 その時、怪物がその長大な尾を振るう。


 近くの川の真新しい鉄橋を吹き飛ばし、聖霊教会を叩き壊し、瓦礫を巻き上げ吹き飛ばす。


 そして、


 それは逃げ惑う人々へと襲いかかり、


 人々を飲み込む圧倒的な暴力となって襲いかかった。


 女子供もエルフもオークも関係なく、


 一瞬で、命が奪われようとしていた。
















『━━━爆発魔法推進拳ラケーテンファウストォォォォォォォッ!!」
















 その時、突如響く声。



 目をつぶり、死を覚悟した人々が見上げた空に、やってくる1つの




 いや、違う。




 アレは━━━空を飛ぶ『拳』だ!





 衝撃波で迫る瓦礫を吹き飛ばし、巨大な鉄橋を押し返し、


 ズガァァァァァンッ!!!


 巨大な怪物の竜種のような頭に、鋼鉄の拳が激突する。


 グルゥァァァァァァァァン!?


 倒れた先の建物を破壊し、悲鳴をあげながら大地が爆ぜる勢いで巨体が地面と激突する。


 唖然とした人々が、上空へUターンする拳を見ていた瞬間、


 ━━━ガシンッ!!


 逃げていた方向から音が聞こえ、地面が揺れる。


 ガシンッ!……ガシンッ!!


 一定に間隔で、音と衝撃は大きくなって迫ってくる。


 ガシンッ!!グググ……ガシンッ!!


 恐る恐る振り向いた視線の先、見えたものは……!



 ググググ、キュゥン……ガシンッ!!!



 長い脚は、黄色い金属光沢を持つ輝きを放ちながら、下の人間の隙間を縫って降ろされる。


 その足の上には、同じ色と所々青や黒の見える機械製の腰が、


 さらに上には、胸の中央に巨大な緑の魔法石の輝く、黄色い鎧のような胸が、


 そこから、広い肩と半ばからない右腕と、飛んで行った腕を反転させたようにそっくりな機械の左腕が、




 巨大なV字型の頭部が、緑に輝く二つの瞳が、あった。




 グルゥァァァァァァァァァ!!


 その巨人の視線の先で、巨大な怪物が怒りに震えて立ち上がる。


「逃げろォ━━━━━ッ!!」


 誰かが叫んだ。

 瞬間、再び人の波が辺り一面に広がっていく。


 黄色い装甲の巨人は、踏みつぶさないようにするためか動かない。



 グルルァァァッッ!!!



 しかし、巨大な怪物はそんな事情など関係はない。


 グルァァァァァァッッ!!!!!


 ━━━キィィィィィ……!!!


 怪物の竜のような口が開いた瞬間、その額に輝く水晶状の器官が光り、甲高い音が聞こえ始める。


 ブブブ、と近くの聖霊教会の鐘が小刻みに震え始め、ややあって綺麗なステンドグラスが砕け散る。




「あっ!!」


「おチビ!」


 この時、黄色い巨人の足元で逃げていたパン屋の少女のティオの、3番目の弟が転んだ。


「うぇぇぇぇぇぇっ!!ねえぢゃぁあん!!」


「しっかり立って!!男の子だろ!?」


 慌てて駆け寄ったその瞬間、





 グルァァァァァァァァァァッッ!!!




 一際、巨大な咆哮と共に、水晶器官から何かが放たれた。



「ああっ!?」


「伏せろチビ達!!!」



 逃げ遅れたティオ達小さな命に、触れるものすべてを砂塵に変え、あらゆる物質を破壊する怪光線が迫る。




『うわぁぁぁぁぁぁッッ!?』



 ズガァァァァァン!!!



 …………


「……?」



 未だ、攻撃の衝撃が響く中、

 ティオ達はまだ自分が生きていることに気付く。


 目を開けて、真上を見て初めて気づいた。




 一歩前に踏み出した巨人。

 その左手をかざした正面に、巨大な5つの魔法陣が回りながら攻撃を防いでいた。




「わぁ……!!」



 すべてを破壊する怪光線を防ぐ衝撃でできた光に照らされ、黄色い巨人の装甲がまるで陽光の様に煌めく。


 つい、今が危機的状況だということを忘れるほどそれは綺麗だった。



『━━━大丈夫、ティオちゃん?』



 ふと、巨人がこちらを向き、ティオには聞きなれた声が響いた。


「え!?パンツィア姉ちゃん!?」


『いつも通りの大声だ。元気そうでよかった』


 と、衝撃がひときわ大きくなり、ギギギ、と音を立てて巨人が一瞬膝を落とす。


『ッ、ごめん!!いつもみたいに話してたいけど、コレまだ試作品で……!!

 ちょっとこのまま防御し続けるのはキツイんだ!』


「分かった!!逃げるぞチビども!!

 いたらパンツィア姉ちゃんに迷惑だろ、ほら!」


「う、うん!」


「頑張れよパンツィアねえちゃーん!!」


「あいつ大っきいぞー!!小ちゃくたってがんばってー!!」


『聞こえてるからな悪ガキ君たち!!

 小ちゃいは余計!!』


 ズン、と再び強い衝撃がやってきて、バリィンと魔法陣がガラスの様に割れた。


「ヤバイ!!チビども走れー!!」


 ティオの言葉に一斉に子供達が駆け出す。


 さっきの衝撃であの怪光線は止んだようで、巨人も飛び跳ねる様に走り出す。


 グルルァァァァァァァァァッッ!!


 あの巨大な怪物が迫る中、巨人の背中に生えた傘を逆にした様な物━━━爆発魔法推進器ロケットブースターが点火し、ワイヴァーンのブレスよりも熱い炎が推進力を生む。


 ブゥンッ!


 街の建物よりなお大きなその巨体が飛び上がり、

 瓦礫の上を放物線を描いて怪物に迫る。


 ガキィンッ!!

 ズガァァァァァンッッ!!!!



 振り下ろされた拳が、トサカの様に鎧じみた体表が覆う怪物の脳天を捉える。


 伝わった衝撃波が地面を爆ぜさせ、瓦礫や砂塵を巻き上げる。





『来やがれ化け物!!

 この超越機械人スーパーロボット、ブレイガーOが相手になってやる!!』





 勇ましい言葉と共に振り上げられたアッパーが怪物の顎を捉え、後ろへ再び倒れた衝撃で、数十メートル先の大聖堂の鐘がゴォンと鳴り響く。




 今、戦いのゴングが鳴り響いた。




       ***

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