『帰る家』🏠

やましん(テンパー)

 『帰る家』

 シューベルトさまの『さすらいびとが月に寄せて』は、素晴らしい孤独な歌曲である。


 帰る場所がないさすらいびとは、お月さまに向かって『あなたがいるところは、すべてあなたの家だ。』『どこへ行こうとも故郷の地を離れることのない者は幸せだ』と、歌う。


 旅人は、よそものとして、国から国をめぐる。


 故郷をしらず、旅人を知る他人もいない。


 ああ、ぼくは、故郷の『家』に帰ろうと思う。


 いまはもう、土地は人に渡り、家もない。


 探せば、昔の仲間や、家族が、まだいるだろうか。


 しかし、残り時間は、少ない。


 ああ、ぼくは、この地では、しあわ

せを得られなかった。


 家はあっても、故郷ではなく、幸福と呼ぶには根拠がない。


 『白い家』それこそが、ぼくのいえなのだ。


 幸福がぜんぶ、集合している場所。


 なにもない、仕事も、出世も、栄誉もない。


 でも、行き方がまったくわからない。


 川の底か、びるの冷たいタイルの上か、湖の深い深い湖底か?


 天よ、われに、道をください。


 夢の中にしか、行くべき道がないならば、すべてを、夢にしてしまおう。


夢の中には、課長はいらない。


部長も所長も、いたとしても、ただの景色にすぎない。意味のない存在。


むらさきや、ピンクの花だ。


ぼくを、包み込む、あるいは、ぼくを慰める花なのだ。

 

 





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『帰る家』🏠 やましん(テンパー) @yamashin-2

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