第26話 午後の仕事と作戦会議
昼過ぎには、ようやく例の野郎が起きてきやがりました。
「おはよう、皆。あ、ナーノ…良く似合ってるよ?」
「ははは…アリガトウゴザイマスー。嬉シイデスー。」
え、えーと…見られてますな…。
これは、照れた感じで両手で顔面隠して身体をくねらせておいた方がいいのかな?
はい、くねくねー。
くねくねー。
「ははっ、ナーノは面白いな。」
いや、僕は真面目にやってんだよ!?
これでもさぁ!!
「『さ、コー君、ナーノちゃんに見とれるのも良いけど、お仕事のお時間です。』」
「う~、面倒くさい~。」
「『もぅ、コー君ったら、またそんな事言って…』」
そう言いながら、ミカティアさんは、優しくヤツの頭を自らの豊かな胸に埋めさせる。
すると、ヤツは当然のように彼女の胸を揉みしだき、顔をうずめてその弾力と温かさを堪能。
「ん~…やる気出た!」
「『コー君は幼馴染に甘えすぎです。』」
ぺちん、と可愛い音を立ててヤツの頭を小突くミカティアさん。
「てへっ」
「『続きは終わってから…ね?』」
…だれかー!
塩持って来てー!
塩ー!
この茶番を目の前で見せつけられる苦行!!
やべぇ…
すげぇ、すーん、とした埴輪のような表情しかできないよこんなの…!
「えーと、今日のお仕事は…?」
「『まずは外区の代表者の方から、減税のお願いですね…』」
「あー、はいはい。じゃ、さっさと謁見しちゃいましょう。」
執務室の隣、謁見室のような所には、すでにそこそこ身分のあるお爺さんのような人が畏まって平伏していた。
あ…あの、茶番の間、ずっとその姿勢で待ってたのかな…?
ご、ごめんね…?
「待たせたね、外区西部村長。」
「はは~、ウォーン・コリカン様にはご機嫌うるわしゅう…」
「あー、そういう堅苦しい挨拶は良いよ。また、減税の希望って聞いたけど…」
「左様でございます。」
そして語られる外区の厳しい現状。
そもそも、冒険者が減った事による宿泊施設の利用料等…外区でも見込める収入の激減。
魔物が増えすぎた為に迷宮性地震の頻発。
それによる農業用水路等の損傷…年度初めの作付け面積の四分の一が被害にあっていると言う惨状。
さらに、不思議な病を恐れて住人が別の町へ移動しており、労働力も減少。
…とてもではないが、例年と同じ税を納められない…と、切々と語る村長さん。
「苦しいのは私も十分承知している。」
「『コリカン様、本日付けで用水路補修部隊を現地に向かわせておりますわ。』」
「うん、ありがと、ミカティア。」
「ですが、今から修繕したとしても、すでに四分の一は…!」
「わかってるよ、だから、これを贈呈しよう。」
そう言ってコリカンのヤツが指を鳴らすと、一つの樽が2人のメイドさんの手によって運ばれてくる。
イメージ的にはワイン樽みたいなサイズだろうか。
ゴロゴロと力を合わせて荷台を押している様子から、中には何かがぎっしり詰まっているに違いない。
何だ?あれ…?
「こ…これは?」
「これは、ウィーリンが作ってくれた疲労回復薬さ。
これを2、3滴水に薄めて飲めば、疲れが吹っ飛んで、労働効率アップと労働時間が3倍になっても大丈夫だよ。」
つまり、1日8時間労働だったとすると24時間労働できるから、寝ないで頑張れ、と?
鬼かコイツ。
「そ…それは、その…」
「大丈夫、今はお金はいらないよ。収穫が上手くいったら、税収に追加させてもらうから。」
さらに追加徴税!!
「『流石コリカン、そのような薬を開発していたとは…素晴らしい知恵じゃ!』」
「『ふふふ、良かったですね、村長。』」
「いえ…あの…」
「さらに、簡単な病気なんかも治す効果があるし、依存症は無いから、安心して活用してくれ。」
「や…病にもですか…?」
村長さんが病にも効く、という一言に希望を見出す。
「うん、もちろん税についても秋になって収穫量見込みがハッキリしてから、本当に収穫量が激減するようなら、減税するなり、融通は利かせようと考えている。
あ、その場合はその薬の代金は要らないからね?」
「は、ははぁ、ありがとうございます!」
…融通を効かせようと考えているだけで、融通を利かせるとは言っていない。
とは言え、これ以上は譲歩を引き出せないと悟ったのか、老人はとぼとぼと退席し、それを追うように樽を台車に乗せたメイドさん達が村長の後に続いて退席する。
コイツ、本当にそれで解決になると思ってるのか?
「『いつもながらほれぼれする名裁きじゃな、コリカン。』」
「『コー君が前から必要って言っていたお薬はこれだったのね。』」
「うん、まーね。」
「『これが先見の明と言うヤツか。あっぱれじゃ。』」
「ところでお兄ちゃん…迷宮は元気なのにどうして冒険者さんが減っているの?」
そこが根本原因だと思うんだけどなー。
言い換えれば、この男の
「ナーノ、それについては、今ギルドに調査を依頼しているんだ。」
「『コー君、そんな事までしてくれたの?』」
「『流石コリカンじゃ!』」
まさかの称賛の嵐。
「本当はオレが炎の迷宮の魔物退治をできれば良いんだけど…俺の能力は内政向きでね。」
などと言う血迷い事を口走ると「内政向き」と言う単語が怒りの涙を流しながら鉈持って襲い掛かって来るぞ。
「『コー君は私たちを強くしてくれるもの!ここに居てくれないと困るわ!』」
「『そうじゃ!!コリカンに万が一のことが有ったら…!』」
「『そうよ、迷宮の魔物退治と言えば、ナーノちゃんだって【獣使い】の能力を試してみたいって』」
おっと?ココでその話題か?
「う、うん。ミカティアお姉さまが使役獣を手に入れたら、行って良いって…ダメ?お兄ちゃん?」
よし、ここ、上目遣い、上目遣い…!
可能な限り、可愛い少女を演出するんだ…!
「おねがい、おにいちゃんっ!!」
「いや、でも…ナーノはまだ…」
「おねがいッ!!僕、どうしてもお兄ちゃんのお役に立ちたいのっ!」
ひしっとしゃがみ込んでヤツの右足に縋り付くような演出!
輝け顔面偏差値ッ!!
お前の仕事はココだぁぁぁ!!!
「うん、わかったよ。それは構わないけど…それじゃ、まずは使役獣を手に入れないと…」
「『ふふふ。コー君なら許可してくれると思って、午前中の内に商人ギルドに依頼しておいたわ。』」
「流石、ミカティア。」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「『良かったのぅ、ナーノ。』」
「はい、ラフィーラお姉さま!嬉しいです!!」
そう言いながらさっさと男の足元からラフィーラ姫の隣へ戻る。
うん、不自然じゃなく離れられたな。
「『あら、次の謁見は…ラブルー商会の若旦那だわ…いつものお酒を準備しないと…。』」
「ああ、オレが注文しておいた魔道具の件かな?」
「『多分、そうだと思うわ。ダリスの方で最近凄いアイテムがいくつも見つかったらしいから…』」
「ラフィーラ、ナーノ…二人はちょっと外してくれ。」
「『うん?どうしたのじゃ?』」
「どうして?お兄ちゃん?」
「『ふふふ…
あ…なんか察した。
「…行きましょうか、ラフィーラお姉さま。」
「『むぅ…ワシはもうすぐ12歳…この領では成人と呼べる年になるのじゃぞ…』」
「まぁ、まぁ…お兄ちゃんの邪魔したくないですから!…さっ!行きましょう!!」
「『それもそうじゃ、では、夕餉までゆるりと休むか。』」
「はい!」
ちなみに、部屋から出る時ちらりと見たラブルー商会の若旦那とやらは、かなりなよっとしたおっさんだった。
外見だけなら、いかがわしい感じは無いんだけど、運び込まれた箱に書かれた文字からは、奴隷販売・精力増強剤・媚薬から大人のおもちゃまで幅広く取り扱ってます!
みたいな宣伝文句が踊っている。
…やれやれ。想像通りの商談だ。
なお、村長さんとの対話は本当に数分で終わったのに…
この商人さんとはひたすら…何をそんなに話しているのか。
あの野郎とミカティアさんが謁見の間から出て来る事は無かったのであった。
「…と、今日はこんな感じでした。」
夕方、僕の部屋に戻るとレイニーさんも戻っていたので、僕は今日の出来事を伝える。
僕の格好に最初はびっくりしていたレイニーさんだが、他の女の子達もアイツの好みの格好をしている可能性しか無い事を伝えると、めっちゃ頭を抱えてました。
…小鳥モードだと、こういう仕草まで可愛いなぁ。
なごむわ~。
…でも、まぁ、長々とほっこりする訳にはいかない。
実はあの後、属性特盛妖狐ちゃんを探してみたものの…
どうやら他のハイレグエルフさんや無表情ラバースーツさんと一緒にお昼寝らしく、単体で居る所を捕まえる事はできなかった。
代わりにラフィーラ姫からの情報と城の見取り図みたいなものを貸して貰えたので、それを机の上に広げる。
レイニーさんはその見取り図の上をちょん、ちょん、と歩きながら見て回りながら今日の話を反芻しているらしい。
「ふんふん…使役獣、デスね。」
「…どうでしょう?オズヌさんとエルには【変身】してもらって、レイニーさんには、その商人役としてあの野郎に謁見してもらうんです。」
「確かに。それなら、オズヌさんとエル君をこの城に入れる事が出来そうデスね。」
「それに、使役獣を手に入れたら迷宮の大掃除に行っても良いって言われてるので、そこでリーリスさんと隊長さんもどさくさ紛れに助け出しましょう。」
「なるほど…いい案デスね。…でも、問題が一つありマス。」
ん?何か問題あるのかな…?
僕が首を傾げると、レイニーさんはぷしゅ、と空気が抜けるように羽を縮め気まずそうにキョロキョロしだす。
どうしたんだろう?
「どんな問題なんですか?」
暫くぴるぴるしていたレイニーさんがその重いくちばしを開いた。
「…ワタシ…大勢の前で発言…苦手デス…」
ふぁっ!?
「商人役として、あのお代官様に謁見するの…こわいデス…」
そこ!?
問題ってそこなの!?
「いや、でも、レイニーさん、アドリブとか効かせるの上手いですよね?!」
「へ?…そんなことないデスよ。
むしろ、演技とか発表とか…知らない大人の前で発言するのはホントだめデス。」
「だって、昨日僕が操られてた時にとっさに小鳥の鳴き声で『眠いデス』って…」
「あ…スイマセン…あの時は…急に注目されて…ちょっとパニックになってしまって…」
目を泳がせるレイニーさん。
あの一言はパニック状態だったのかよ!?
てっきり、機転を利かせたのかと思ったよ。
「うぅ~…ナガノ君に話すのは初めてデスけど…
実は、ワタシ…オズヌさんに助けてもらう前は、とある貴族の奴隷だったんデスよ…」
え?あ、そうだったの?
突然のカミングアウトに目が丸くなってしまった。
いや、でも、今はごく普通だから全然気づかなかったよ?
「で、その頃、月に一度…あんな感じでたくさん人が居る所で謁見みたいな事をさせられてて、
その月に出された課題みたいなものをクリアしていないと、めちゃくちゃ怒られたんデスよ…」
そう言いながら、小さな体をぷるぷる、ぴるぴる震わせる。
なので、ああ言う広くて豪華な部屋で発言を強制されるのが軽くトラウマなんだとか。
「でも、他に頼める人もいないですし…」
「うぅ~…」
どうしたもんかな?
レイニーさんがどうしても嫌なら別の【一般市民】の男性に頼んだ方が良いのかな?
「…どのみち、あの野郎を倒さないと、エリシエリさんを助けられないですもんね…」
ぽつり、と呟いたセリフが微振動していた小鳥の動きを止める。
「わかりました!やりまショウ!」
「おお!?」
エリシエリさんの名前を出した途端、シャキンとして羽毛を膨らませるレイニーさん。
気が変わるの早いな!
いや、よかったよ、この人の思考回路が「エリシエリさん>トラウマ」で。
「エリシエリ様の為なら…!」
ふわわわっ!
ただでさえマルもっふの身体が、さらにふこふこに…!
くっ…なごむ…!!
撫で回したいそのボディ…!
あー、でもこの思考回路って、セクハラかな?
僕もあの野郎と同じ目をしてる?
ごめんなさい、エリシエリさん!
貴女の旦那様を変な目で見てしまいました…ッ!!
オズヌさんみたいな大きなもふもふも大変魅力的なんだけど、
手のひらサイズの小さいもふもふも大変魅力的なんだよね…!
自重しろ、僕…!
僕の葛藤など知らないレイニーさんは独り言のように「大丈夫デス、たぶん」と繰り返している。
ま、大丈夫でしょう、たぶん。
なお、オズヌさんとエルは夜にこの城に忍び込む作戦を考えていたらしいが、それだと、やはりリスクが高く迷っていたらしく、二人は同意してくれそう、との事だ。
「あ、そうデス。そう言えば、外から料理人を雇うんですよね?
それなら同時進行で進められる作戦が一つあるので、試してみたいと思いマス。」
「作戦ですか?」
「ええ。エリシエリ様から、色んな薬を借りてきて良かったデス。
…できれば、外からの料理人を早めに雇ってもらえるように働きかけて貰えませんか?」
「へ~…どんな作戦なんですか?」
「うーん…ちょっと成功するかどうかわからないデスし、成功したらご説明しマスね。」
「わかりました。とりあえずやってみます。
【俺の嫁】や【ハーレム】の女性陣はあの野郎を持ちあげる感じでお願いすると受け取って貰えそうですし…。」
「ふむ…持ち上げる感じデスか…わかりました。」
「わざとらしいくらいでちょうどいいと思いますよ。」
「分かりマシた。本当は、これで今日はこっちに居ようと思ったんデスけど…
使役獣の話もありマスし、ワタシはもう一度外区へ行きマスね。」
「もう夕方ですけど、大丈夫ですか?」
「ええ、このくらいの明るさなら平気デス。」
「わかりました、お気をつけて!」
「ナガノ君の方こそ、気を付けてくだサイね?」
「はい!」
僕は、今朝と同様、レイニーさんを窓から夕暮れの空へと放つ。
黒い小鳥は、小さく鳴くと、大急ぎで外区へ飛んで行く。
おお、朝見た時よりもかなり速い速度だ。
風の魔法でも使ってるのかな?
あっという間に見えなくなってしまった。
さてと…今日はどういう口実でお風呂断ろうかなぁ…
ほとんど沈んでしまった夕日を眺めてげっそり気分マシマシ。
あーあ、女の子になるとまた【ハーレム】の状態異常が発生するんだよなー。
…面倒くさーい。
いや、アイツの称賛はわざわざ考えなくても良くなるんだけど…
でも、あれも「お兄ちゃん、すごーい」「流石、お兄ちゃん」「こんなすごいのはじめてだよぉ!」とか、そこら辺の台詞をチョイスしておけば、ほぼ怪しまれない。
それよりも、気分が下がるのは、あの気色悪いセクハラ。
マジ勘弁して欲しいよ。
夕方、この衣装を見たレイニーさんは、明らかにドン引いてましたからね?
小鳥の状態で引いてるのが分かるくらい引かれるってある意味凄いよね。
さらに、憂鬱さを増しているもう一つの理由が、下手にあの野郎に操られて、元奴隷だから「〇〇が怖い」とか「実は〇〇しないと××出来ない」とか…
その手の設定が追加されるのも困るんだよね。
…昼間もその設定をある程度は、守らなければならないこっちの身になってくれ。
しかし、時間は停止しない。
最近慣れて来たタマヒュンの感覚を受けて、身体が女の子になった事を把握する。
うごごごご…しかし、ものは考え方次第!
回復魔法を尻から出す練習だと思えば、まぁ、やる気も出ると言うモノ。
あの野郎が近づいてきたら、すかさず、どつけるように頑張ろうじゃないか!!
うおおおお!
やったるでー!!
そんな訳で、メイドさんが呼びに来たと同時に、勝手に動き出す自分の身体。
どうやら【ハーレム】の異常が復活しているっぽい。
扉の向こうでは、本日、ほぼ一日中寝ていたはずの女の子達が勢ぞろいしている。
全てのメニューが揃っていないのか、メイドさんだけでなく、ゴーレムさん2体もお盆に乗せた食材を運んでいた。
僕は、末席にあたる席に着席する。
まだ、部屋に来ていないのはあの野郎とミカティアさんだけだ。
テーブルの上に並べられた料理は、昨日の夜とあまり変わり映えのしないメニュー。
…一人当たり、2個の計算でプリンがすでにセットされているし、ナポリタンが豚骨ラーメンみたいなものにかわっていたり、ピザの代わりに石焼きビビンバと思しき品が並んでいたりするが、他は昨日と同じメニューだ。
「『ぶー…ウォーン様、遅いー!ティキお腹すいたー!!』」
「『もぉ…どうしたのかしらァ…』」
「いや~…ごめん、ごめん。商談が長引いちゃって…」
女の子達がわきゃわきゃしていると、扉からあの野郎とミカティアさんが入って来る。
…この野郎、明らかに酒を飲みながら商談していたな?
赤ら顔…とまではいかなくても、酔っ払ってるみたいな火照った様子で中央の席に座る。
どうやら、ミカティアさんも同じくお酒を飲んでいるみたいで、少し他の皆に罪悪感があるのか、俯きつつ照れ笑いを浮かべている。
「『何よ、商談が長引くなら先に言いなさいよね!』」
「『……遅刻厳禁。』」
「いやぁ…実は皆にアクセサリーをプレゼントしようと思ってさ…」
それを聞いた女の子達が色めき立つ。
「『そ、それなら仕方ないわね!』」
「『そうじゃな…!そう言うことなら…』」
「さ、まずは食事にしようか。」
それを合図に、皆の目の前に並べられた盃にお酒…多分、ワイン的な果実酒が満たされる。
あとは、思い思いにあの野郎のメニューを称賛しつつ、食事をする。
皆がある程度食事を済ませたのを見計らって、メイドさんが、アクセサリーを乗せたお盆を持って来た。
「さすがに、皆に同じアクセサリー…って訳にはいかないんだけどさ…」
「『あらァ、コリカン様が選んでくださったなら、どんな物でも至高の品よォ…うふふ。』」
そんな訳で、ハイレグエルフちゃんにはピアス、R指定セクシーさんには腕輪、無表情ラバースーツさんと属性特盛妖狐ちゃんにはネックレス、ミカティアさんには指輪、リリィレナさんとラフィーラ姫と僕にはイヤリングを、それぞれ手渡す。
…い、要らねぇ…!
この辺りのアクセサリーって、あの宝箱で見たような気がするんだけど…気のせいかな…?
まぁ、そこら辺のアイテムは割と似たか寄ったかのデザインだし、特にインパクトも無かったから、はっきりとは言えないけど。
「『ね、ね、ティキ、これ、装備してみて良い~?』」
「『あらァ…コリカン様が装備させてくださらないのかしら?』」
「『…ウィーリン、名案。意見賛成。』」
「『で、でも…わ、わたしは…まだ…その…』」
こんな不吉なモン、装備なんて出来ないよ。
よし!
状態異常回復だ!!
ふんっ!!
「お兄ちゃん、ありがとう!
…でも、僕は10日後のラフィーラお姉さまの輿入れの時に使いますね!」
僕は、サクッとお礼を言って済ます。
「『なるほど…ふふふ、それもそうじゃな。』」
僕の台詞を受けて、ラフィーラ姫とリリィレナさんも、正式に嫁になったら装備しよう、と嬉しそうに微笑む。
「ごめんね…でも、もう少しでオレのレベルも上がるから…
【俺の嫁】を増やしてあげられるからね?」
マジか!?
やべぇな…
しかし、どういう基準でレベルアップするんだろう…?
こいつ、喰って寝て女の子とイチャイチャして
…しかしていないような気がするんだけど…?
「『うむ、楽しみに待っておるぞ?』」
「『コリカン様…!』」
「『わぁ…楽しみ!…でも、お兄ちゃん、どうやってレベルアップするの?』」
お?
珍しく僕の尋ねたい事を聞いてくれたぞ、ちょっとラッキー。
「『そうです!コリカン様、何か私たちにご協力できる事はございませんでしょうか!?』」
「ありがとう、リリィレナ。
前もお願いした通り、城下で困ったりしている可愛い女の子がいたら、助けてあげて欲しい。
もちろん、オレは拒まないから、この城に連れて来てくれて構わない。
それが、何よりもオレの力になるよ。
そうだなぁ、【家族】が、あと一人は欲しいかな。」
そう言って舌なめずりをする。
コイツの言う【家族】ってのは【ハーレム】の女の子って事だろ?
…もしかして、自分の周りに侍らせる【ハーレム】の女の子の数でレベルが上がるのかな…?
「『はい!頑張ります!!』」
リリィレナさんがキラキラした笑顔で答える。
それを微笑ましそうに眺めていた【俺の嫁】の女の子達だが、どうやら、あのいかがわしい感じの商人さんから手に入れたアイテムを早速使ってみたいらしく、寝室を強請り始める。
当然、入浴云々と言う話になったので…
結局、芸が無いんだけど状態異常回復を駆使し、
『お兄ちゃんの考えるメニューが美味しすぎるため食べ過ぎて腹が痛い…』言う事にして一人だけ後で入浴させてもらう事にしました。
しかし、あの野郎の方も本日購入したアイテムが気になるのか…
入浴もソコソコに【俺の嫁】の女の子達と寝室に消えて行ったので、まぁ、怪しまれずに済んで何より。
いや、今日、本当にあの商人さんが来ていてくれてよかったよ!!
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