第23話 操作されるのはつらいよ!?


どうやら、状態異常回復が効果を発揮したようだ。


「あの、ラフィーラお姉さま…やっぱり、僕も、お風呂は行けません…」


「『?どうしたのじゃ?』」


「えーと…あの、さっき、珍しいものを食べ過ぎてしまって…お腹の調子が…」


「『ふむ…なるほど、そうか。…ではウィーリンに薬を出して貰うように言っておいてやろう。』」


「お、お兄ちゃんにも、僕は先に寝たとお伝えください。今日は疲れてしまって!!」


ちょっと早口になったけど大丈夫かな?


「『わかった、伝えておこう。厠はそこのメイドに聞くが良い。』」


「『あ、ラフィーラお姉さま…少し、ぼーっとしていたみたいで…もう大丈夫です。さ、お風呂に…』」


おっと、もう効果が切れやがった!

状態異常回復ッ!!

ふんはァッ!!


「…と、思ったんですけど、やはり腹痛に波があるみたいで…あいたたた!」


「『そうか?…おぬし…先ほどから尻が光っておるようだが…よもや…?』」


「漏らしては居ませんよ!?これは……僕の一族の体質なんです!!」


「『おぬし…髪も瞳もキラキラ輝いて…変わっていると思っておったが…さらに…?』」


「あはははは~、いや、まぁ、変わったマイナー一族なんです!」


変わった一族って言うのはある意味、本当だもんな。


「『わかった。腹は冷やすなよ?』」


いや、それ、僕が君に言いたい。


「はい。お兄ちゃんによろしく!」


何とか、ラフィーラ姫を見送ると…体が勝手に彼女を追って動き出そうとするので、またしても回復魔法を使う。

そんな事を何度か繰り返していたのだが、体の方がようやくあきらめたのか、扉のすぐ近くに控えていたメイドさんに対してこう声をかけた。


「『あの…お手洗いはどちらですか?』」


「『…こちらです、お嬢様。』」


そう言うと、メイドさんが先導して部屋から一番近くの厠に案内される。

ここも勇者トト印の清潔安全異次元トイレだ。


トイレを済ませると、メイドさんが水差しを持って待っていてくれる。

なんだこの至れり尽くせり…。


そして、部屋に案内されると、薄手の…ガウン?

いや、これもう、ランジェリーの一種じゃね?

と言う布を手渡され「『寝間着にお使いください』」との事。


それを受けて、僕の身体は大人しくそれに着替えて布団に入る。


「『おやすみなさいませ。』」




メイドさんが退席したのを見計らい、レイニーさんが人間の言葉で話しかけてきた。


「…ナガノ君、大丈夫ですか?」


大丈夫ですよ、と、声が出ない。

ええい、状態異常回復ッ!!ふんぬっ!!


「あ…あー、大丈夫です~…」


「ええと…あのぉ、ナガノ君って…器用デスよね…

回復魔法を脳天や鼻の孔やお尻から出す方…初めて見マシた…」


「貴方が腕以外からも出せるっておっしゃったんですよね!?」


あ、でも、あのキスされそうだった時は鼻の孔から出てたのね…

今更ながら、なかなか凄まじい絵ヅラだな。


「いえ…あの、指先からでも出せマスよ、って言おうとしてたんデスけど…。」


「あ…あぁ、なるほどぉ…指先…」


「あっ、でも、あの、意外性が高くて、良いと思いマスよ!?

魔法と言うより珍妙な生態を持つ生き物みたいデスし!」


翼をぴよぴよしつつ必死でフォローしてくれるレイニーさん。

……フォロー…だよな?


これ以上アホな会話をしていても勿体ないので、手短に僕の現状を説明する。


「なるほど、あの状態でも聴覚は通常通りなんデスね。

時間も無いので寝たままで聞いてくだサイ。」


「お願いします。」


「ワタシが【鑑定】した結果デスが、いくつか分かった事がありマス。」


その結果だが、どうやらあの野郎の祝福ギフトは【ハーレムの王】と言う能力らしい。

あ、この能力…あの女神のお姉さんがおすすめしてた中にあったなぁ…

うわ、詳細をもっと詳しくあの時に聞いておけばよかった…!

残念。


しかし、レイニーさんの【鑑定】結果と影響を受けている方々に付与されている状態異常の説明からの推察によると、その詳細は大きく分けて三つらしい。


ズバリ「弱体化」と「強化」と「操作」だ。


まず、同性に対してはあの男を中心に半径数キロに渡り「弱体化」の領域型状態異常が発生する。

基本的に、領域内に入った人間型の男性に対して【王の祝福:一般市民】もしくは【王の祝福:チンピラ】が自動的に付与される。


しかし、そのままでは特に何の効果も影響も無い。


その状態で、あの男本人に出会うか、それとも【王の祝福:僕の嫁】もしくは【王の祝福:ハーレム】の技能を持った女の子が一定距離以内に近づいた時に「弱体化」と「操作」の効果が牙を剥く。


【一般市民】については、あの男や女性に対して攻撃をできない、と言う程度の弱体化なのだが、

【チンピラ】の方はもう少しタチが悪く…

「あの男がイメージする雑魚敵としての行動をとる事しかできなくなる」のだ。

…しかも、本人の意思や持っている技能とは関係なく。


隊長さんとリーリスさんとエルが急におかしくなったのは、あの時リリィレナさんが近づいたからか…

ちなみに、この一定距離が「領域」らしい。


なお、【一般市民】は、基本的に攻撃能力が無い、もしくは低い男性に対して付与され、

【チンピラ】は攻撃能力の高い男性に対して付与されるようだ。


なるほどね…

それで、内区に入った時は僕とレイニーさんが【一般市民】で他の皆が【チンピラ】だった訳だ。


「…ナガノ君は、自分の知力が平均だった場合、自分自身の知力は全く上げずに『天才』になる方法が分かりマスか?」


「え?いや、分からないです…」


なにそれ、なぞかけ??


「答えは簡単デス。

『周りを全員、自分よりも知能を低くすればいい』んデス。

…つまり、あの男の能力は、男性に対しては…そう言う能力なのデスよ。」


うわ、タチ悪ッ!!

次に、異性に対して…だが、こちらはあの男の目で美人か否か認識できる程度の距離まで近づかない限り異常は発生しない。


しかし、その分「操作」や「強化」に関しては強い権限を持っているようだ。


【上級市民】に関しては、ヤツの命令および【俺の嫁】と【ハーレム】を持っている人間の言う事を聞かなければならないが、基礎能力全般がある程度向上する。


【ハーレム】に関しては、「あの男がイメージするとおりの女の子にならなければいけない」のである。


ただし、この状態異常を付けるには、対象の女性に自分の魔力をぶつけたうえで、触れなければならないらしい。


なお、レイニーさんが見ていた感じと、僕の体感から推察すると

「魔力をぶつけた段階」で言動や行動を「操作」でき、「触れた時点」で特殊能力の添付…つまり、「強化」ができる、と言う可能性が限りなく高い。


…触れるだけなら、別にキスでなくても良いんじゃないか…。


なお、そこに女性本人の意思は関係が無い。


「つまり、ナガノ君の今の状態異常が【ハーレム】デス。」


この、勝手に口や体が動いちゃう状態が、【ハーレム】の異常なんだね。


めっちゃ迷惑!

回復魔法も一瞬しか効き目が無いし…


「あのリリィレナさんと、先ほどのラフィーラ姫も同じ状況デス。」


この状態の女性は、あの男から仮初の【祝福】を一つ得ているそうだ。

仮初とは言え、本来の祝福ギフトとそれ程、差は無いらしく、女性陣は相当パワーアップしていると言えよう。


ちなみに、僕の場合は【獣使い】。

つまり、動物と会話ができる、と言うものだ。


ちょっと注意が必要なのは、男や他のメンバーから「何を話していたのか」と問われると、自動的に正直に答えざるを得ない点か。


…特に、レイニーさんとの会話は注意が必要っぽいな…


なお、リリィレナさんは【大剣技】、

ラフィーラ姫は【値切り】を習得…させられている、らしい。


「ただ…あの、他の女性達は全員【俺の嫁】デスから…

もしかすると、状態異常回復では効き目が無い可能性もありマスね。」


マジですか…うわ、気の毒…!

と、同時に、頭の片隅で思ったのが、流石に10歳程度(仮に年を重ねていたとしても12歳くらい)にしか見えないラフィーラ姫が【俺の嫁】じゃなくて良かったよ…でした。


なお、【俺の嫁】になると【ハーレム】同様に操作され、さらに基礎能力の向上に加え、男から与えられた技能のレベルがかなり上昇するようだ。


清楚セーラーさんは【ヒーラー】と【銃火器】、

ハイレグエルフさんは【精霊魔法】、

無表情ラバースーツさんは【鎌】と【ゴーレム】、

R指定お姉さまは【毒薬】と【暗殺術】、

属性特盛妖狐ちゃんは【打撃】に対して相当なパワーアップが為されている模様。


なお、男自身については、この祝福ギフトを除くと、それ以外は、戦闘能力など大したことが無いのがせめてもの救いではある。


「はぁ…。それにしても、妙な能力に育ったものデスね…。

確かに、兄神様系は制約が緩い分、個人差が大きいデス。

…でも、記録によれば【ハーレムの王】は…もっと他者を尊重した能力になるはハズなんデスけど…」


レイニーさんがため息をつきつつ呟く。

…しかし、これ…


どうやってあの野郎を倒すんだ!?


一応、オズヌさんとエル(狼)は、状態異常が効かないが、それでも戦力差は大きい。


現状ですでに5人の少女達があの男の傍に侍っている。

その状態で彼女達の攻撃を掻い潜り、

あの野郎を倒すのは、オズヌさんとエルだけでは荷が重いだろう。


…しかも、厳密に言うとこの女の子たちも被害者だし…。


さらに言うと、この5人の他に、リリィレナさんやラフィーラ姫、

そして、僕自身もオズヌさん達の妨害要員となる可能性が高いのだ。


おまけに、一般のメイドさん軍団も居るし、あの全長2.5メートルはあるようなゴーレムさんも2体居る。


…もし、仮にオズヌさんやエルがその女性陣全員の隙をついて、ヤツを倒したとする。


そうなった場合でも、まだ問題点がある。


それが【ハーレムの王】を突然殺した場合、祝福ギフトの影響下にある女性陣に悪影響が及ぶ可能性が高い事だ。


レイニーさんが【鑑定】してくれた【ハーレム】と【俺の嫁】の状態異常の中に「王の命は我が命」と言う一文があった事を思い出す。


これ…「王の命令は私の命題である」…とも取れるけど、もしかすると、文字通り

「王の命と自分の命がイコール」。

つまり「ヤツが死んだら自動的に自分も死んでしまう」と言う可能性も否定できないのだ。


となると、エルの【簒奪】であの野郎の祝福ギフトを奪うしか方法は無いんだけど、

仮に、それを実行する場合、隊長さんの許可が無いとお話にならない。


そのなると、リーリスさんと隊長さんを事前に助け出す事は必須だ。


僕は、その懸念をレイニーさんに伝える。


「…そうなんデスよ。

ワタシは攻撃能力がほぼ無いデスし…

とりあえず、明日、この情報をオズヌさん達に伝えてみマス。」


この時間帯になってしまうと、レイニーさんの視力では外区まで無事に飛んで帰れないらしい。

僕達の会話…と言うか、割と一方的にレイニーさんが話してくれていた声が途切れた。


「ピピピッ!(誰か、来マシた!)」


レイニーさんが小鳥の声でつぶやくと、僕の枕元から鳥かごの上に飛び移り、寝たフリをする。

すると、すぐに扉が開いた。


かちゃっ…


「ナーノ…大丈夫?ウィーリンの薬を持ってきたけど…寝ているのかい?」


出た!!代官、ウォーン・コリカン!!!

くぅ~、この場にオズヌさんとエルを召喚出来たら、コイツを倒すチャンスなのに…!


「『ん?…お兄ちゃん…』」


「!ナーノ…その背中の傷は…?」


男がハッとした様子で、僕の背中を指差す。


背中の傷?

あの最初にぶつけた所の事か。


全然痛くも痒くも無いから、治すのを忘れてたよ。


でも、何でコイツ背中の傷なんて知って…

ああ、そっか。今はメイドさんが渡してくれた寝間着なんだっけ。


「『み、見ないで!見ないでくださいッ!!』」


僕の身体の方はそれを過剰なまでに反応する。


え?何…この茶番…?


「まさか…だから、風呂に入るのを…?」


「『…う…うぅ…』」


唐突に、ぼたぼたと僕の眼球から汁が流れ出す。


うおおおお!?


こんな生理現象みたいなものまで操れるんだ!?

凄いというか、むしろキモいな!!!


「『ご、ごめんなさい…僕…僕、こんなの…ぐすっ、知られたら…』」


「これは…君はアルストーアの性奴隷だったのかい?」


それを聞いて、ビクリ、と震えるとしばらく固まっていた体が小さく頷く。

お?僕についてはそう言うキャラ設定か?


「酷い傷だ…これは誰に?」


そう言いながら僕の背中を撫でる男。


触り方がねっとりしててキモチ悪いよ!普通に触れ、普通に!!!


「『…ひっく、うぐっ…あの…地下牢に…入れられてる、ぐすっ…』」


ちょっ!?リーリスさんと隊長さんに濡れ衣とかふざけんなよ!?

処刑とかされちゃったらどうしてくれる!!


回復魔法ォ!仕事しろコラァ!!

輝け臀部っ!!


ピカァー…


「…地下牢に入れられている人たちは、全ッ然、これっぽっちも関係無いんですけどぉッ!!

その前に出会った別のモザイク三人衆にちょ~っと乱暴されましてッ!」


今まで儚げに泣き崩れていたところ、突然、ガバッと顔を上げて睨んじゃったから驚かれたかな?


「そ、そうなんだ?」


「ええ、はいそうなんです!

だからあの人たちは無関係なのでさっさと開放してあげてくださいねッ!!」


「あ、ああ…うん、そ、そうだね。」


ちょっと早口すぎたかもしれないけど、とりあえず言い切ったぞ。

その途端、また瞳の隅にじわじわと液体が溜まっていくのがわかった。


ちっ…状態異常回復効果の効き目…短いなー…


「『でも…っ…そんなの…お兄ちゃんに見られたら…もう、ぐす…ここに…は…うぅ…』」


「…居られない、と思ったのかい?」


こくり、と頷く僕の身体。


「『だって…お兄ちゃんも…こんな…ぐすっ…こんな…性奴隷だった汚い僕を…近くに置いていたら…きっと…周りの人達が…』」


「大丈夫、心配しないで。君は汚くなんてない。周りになんて、文句言うヤツはいないさ。」


「『…ぐすっ、…で、でも…』」


「大丈夫。…可哀想に…こんなに震えて…」


そっと僕を抱きしめる男。

ぞわわッ!

風呂上がりっぽい、しっとり、ほっこりした野郎の肉の温度に鳥肌が立つ。


「怖かったんだね?でも、もう心配しないで?オレが必ず守るから…!」


「『お、お兄ちゃん…うわああああぁぁぁんっ!!』」


号泣する僕の身体。


自分の号泣を別の感情で体験するってなかなかレアな経験だよね。

つーか、いつまで抱きしめてんだよ。


しかも、人の首筋をクンカクンカするな!!

鼻息が気持ち悪いし!


そして10歳児を抱きしめながら股間にテントを張るなァァァ!!!

回復魔法さァん!

出番、出番ですよっ!!


「せいァッ!!」


ごりょっ!


「ぎゃあああっ!!!」


ベッドの上で泣き崩れている僕を抱きしめる為に、ヤツもベッドの上に腰を掛け、ちょうど股間を押し付けるように足を回していた。

その急所の上に右手を乗せ、それに僕の全体重をかけるようにして、潰す。


うん。

ベッドの上とはいえ、あまりスプリングの効いていない大理石ベッドでよかった。

どうせなら敷布団も無い方がもっと効果的だったんだけど…


「…ちっ」


…二玉同時粉砕は叶わなかったか。

残念。


学生時代にクラスで流行ったアニメ忍術の真似事がこんな所で役立つとは…。

あーあ、体格が10歳児じゃ無ければなぁ…。


男は股間を両手で抑えベッドの上で悶絶する。


「アー…オ兄チャン、ゴメンナサイ、大丈夫?

僕、性奴隷ダッタカラ、男性ガ怖クテ、近ヅカレルト、ツイ…条件反射ガー…」


フォロー台詞…棒読みすぎになっちゃったかな?

まぁ、あわよくばもう一発、と考えていたんだけど、握りしめていた手から勝手に力が抜ける。

あ…また、回復魔法の効果が切れたな。


「『お兄ちゃん、お兄ちゃん…ッ、死なないで!お兄ちゃぁぁぁぁん!!』」


「だ、だいじょうぶ…だい…じょうぶ……」


悶絶する男に絶叫する僕。

まぁ、より正確に言うなれば、悶絶する男が股間から手を離したらもう一発お見舞いしようと、状態異常回復を行うべく虎視眈々と狙っている僕、な訳なんですけど。


そのどうしようもないカオスな状況を打破したのは、部屋の扉が乱暴に開かれる音だった。


ばったーん!!


「『ええい!もう、聞いておれんのじゃ!!』」


「『もぅ、コリカンったら情けないわね!それでもアンタ男なの?!』」


「『…ナーノ頭頂部摩擦実行。作戦名:なでなで。』」


「『大丈夫?コー君…?』」


「『あらァ…コリカン様にもお薬が必要だったかしら?

うふふ、何だったら、アタシがお口でお薬を塗ってさしあげますわァ…』」


「『もー、ナーノちゃん、心配しすぎ~!

ティキ達、元性奴隷だったか~、なんて、全然気にしないよっ☆』」


「『そうだぞ、ナーノ。奴隷商人が探しに来ても私たちが守ってやる。

第一、村を襲って無実の村人を奴隷にするなど、この国の法もコリカン様も許しはしない!』」


どやどやと、7人の美少女達が次々に部屋に入って来る。


「『え…あ、あの!?』」


そして、口々に僕を慰める美少女達。


「『…どうじゃ?安心したか?』」


「『…は、はい!ラフィーラお姉さま…それに皆様も…!』」


僕が落ち着いたのを見計らい、次に少女たちは悶える男を左右から抱えて立たせる。


「『じゃあ、コリカン様はお部屋で、しっかりとココの治療なさらないといけないわァ。』」


「う、うん…あたたたた…」


「『そうね、コー君。それじゃ、部屋に戻ったら回復魔法をかけるね?』」


「『…マスター、股間小破。…現状使用可否、要確認。』」


「『そ、そうね。

…べ、別に…したい訳じゃないけど、ちゃんと使えるかどうかは確認しないと…ダメよね!

アタシは別にしたい訳じゃないけどッ!!』」


「『ティキもー!ティキも!確認するー!』」


…あんたらのおつむの中身はどピンクかい。

一斉に股間のご立派様の心配をする美少女の群れにちょっと引く。


まぁ、これも【ハーレムの王】が操ってるんだろうけど…

逆にココまで直球だと萎えないもんなのかな?


「『リリィレナはどうするのかしらァ?』」


「『わ、わたしは…まだ…その…』」


あー、そっか。リリィレナさんは僕と同じ【ハーレム】なんだよね。

でも、どうしてなんだろう?単にヤツの好みの問題?

それとも、【俺の嫁】を増やすのに、何か条件が整っていないのかな?


「『え~?ティキ達と一緒にウォーン様のトコロ、行かないの~?なんでぇ??』」


「『うふふ…そうよね、最初は一人が良いわよねェ…

じゃ、今日はアタシ達5人だけでイきましょう。』」


「あ、あはははは…お手柔らかに…リリィレナは…」


「『わっ、わ、私は、まだ…その、城の警備がありますからーッ!!』」


そう言うと、耳まで真っ赤に染まったリリィレナさんは扉を殴り飛ばすように開け放ち、全速力でどこかへ駆けてゆく。


「『あらァ?からかいすぎちゃったかしらァ?』」


「『ダメよ。ウィーリンさん、リリィレナさんは真面目なんだから…』」


「じゃ、ナーノ、ラフィーラ、また明日ね。」


「『はい、お兄ちゃん、おやすみなさい。』」


「『うむ、ワシはこれで休むぞ。ナーノもゆるりと休むのじゃ。』」


「『はい!』」


わきゃわきゃと部屋から去ってゆく美少女5人とメイドさん達にかしずかれ、自室に戻るラフィーラ姫。

何か…げっそりと疲れが出るな…

美少女嵐が去った後、「…ピピィ(怖いデス…)」と言うレイニーさんの呟きが妙に大きく聞こえた。


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