第21話 代官の館は酒池肉林?
「ん…っつ~……。」
「『おぉ、気が付いたか?』」
瞼を開けると、そこは…なんか豪華な感じの白い部屋だった。
多少薄暗い、とは言え…普通の家や宿屋とは比べようも無い。
多くのたいまつのような灯りが壁に掲げられている。
あ痛たたたたた……
部屋の様子よりも何よりも、己の臓器が肋骨が首がみぞおちが。
一斉に悲鳴を上げている。
「…じ、自分の…この痛い傷、全部…なおる…ように…」
身体を抑えた腕から、じわじわと光があふれ出し、それと同時に痛みが徐々に引いてゆく。
あー…うん、楽になって来たわ~…
楽になって来ると、逆に魔力の操作の方に集中できるのか、さらに強い光が全身を包んでゆくのが感じ取れた。
「…ふぅ。」
あー、ようやく楽になった。
さて…あれから一体、何がどうなったんだ?
なんとなく、僕が状態異常回復の魔法を放つのと、隊長さんが僕のみぞおちに突きを放つのが同時だったような気がするんだけど…
そう思って体を起こすと、枕元から小さな黒い塊が飛びついて来た。
「ピ、チチチッ!」
「えっ!?えぇ??…れ、レイニーさん?まさか…?」
「『その小鳥は君の友人か?』」
「へっ!?」
ふと、瞳を横にずらすと、ベッドの脇で何やら本を手にこちらを眺めていたのは、あのクッコロ女騎士…
もとい、姫騎士リリィレナさんだ。
ええ!?いや、本当にどういう状況なの!?…コレ?
「『君が意識を失っている間、ずっとそばに付いていたんだ。その小鳥。』」
「あ、は、はい!この子は僕の大切な仲間で…その、あの…一体何がどうなって?」
「『ああ、実は…』」
リリィレナさんが言うには、僕は、どういう理由か分からないけれど、町のゴロツキに襲われていたので、内区の治安維持部隊であるリリィレナさんが保護した、との事。
いや、別に隊長さん達は町のゴロツキではないんだけど…
まぁ、彼女の目から見たらそういう風に見えるのか?
「え?あの、僕を襲っていた皆さんは…?」
たぶん、あの時、急におかしくなったのはリーリスさんと隊長さんとエルの3人のはずだ。
「『二人とも捕らえて地下牢に入れてある。』」
二人!?
「ぶ、無事なんですか?!あと、捕まってるのってどんな方です?!」
「『ああ、多少の怪我は仕方がないが、正当防衛の範疇で捕えている。
…人相の悪い黒髪の男と茶髪のエルフだ。
しかし、君も変わっているな、ゴロツキの心配をするなんて。』」
捕らえられたのは隊長さんとリーリスさんか…。
「あと、近くに大きなキーウィ…えーと、鳥さんが居ませんでしたか!?」
「『鳥?ああ、あれはモンスターか?
それとも騎獣か?
ゴロツキの中で一番小さいヤツを嘴に咥えて逃げてしまったから…よく分からんが…』」
そっか、オズヌさんとエルは無事…って事かな…?
まぁエルがおかしくなっていたとしても、オズヌさんなら止められるだろうし…
それに、もし戦闘中にでもエルが【狼】に変身してくれたら、あの異常も打ち消せるはずだ。
「そうですか…あの、それで、ここは?」
「『ここは、中央区、ウォーン・コリカン様の屋敷だ。』」
「ブッ!!げほっごほっ、げほっ」
「『大丈夫か?ふふ、心配するな。コリカン様は寛大なお方だ。今日はもう遅いから、泊まって行くと良い。…そうだ、空腹ではないか?ちょっと待っていろ?』」
そう言うと、リリィレナさんは部屋から颯爽と出て行った。
それを待っていたかのように、手のひらの中の小鳥から声が響いた。
「ナガノ君、大丈夫デスか?」
「!やっぱりレイニーさんだったんですね!一体、何がどうなっているんですか?」
「あまり時間が無いデス、あの後…」
レイニーさん曰く、さっきリリィレナさんが話した通り、隊長さんとリーリスさんが捕まっているらしい。
何でも、あのおかしな状態だと、女性と戦う際にのみ、アホみたいに弱くなるらしく、エル含め3人ともあのリリィレナさんにあっさり敗北。
3人の普段の実力を知っていると違和感しか無いくらい、無様で情けない負け方だったそうだ。
オズヌさんは、そんな皆を助けようとしたところ、魔物と思われたらしく、リリィレナさんの仲間と思われるメイド軍団がわらわら現れたため、一旦退却を選択。
その時点で、すでに僕とリーリスさんは相手方のメイド軍団が確保済。
そのため、変身による状態異常回復が見込めるエルを連れて外区で身を隠しているらしい。
なお、変身中で状態異常にもかかっておらず、さらには小さすぎて「敵」であるとリリィレナさん一行に認識されていないレイニーさんが、僕とオズヌさんの連絡要員として一緒に来てくれたようだ。
ありがとうございます…!
それに、怪しまれなければ、僕と一緒の方が代官のコリカンの情報を得られる可能性が高いと踏んだ、と言う事もポイントだ。
今のところ、その目論見は成功している。
ただし、レイニーさんが、ただの小鳥ではない…とバレそうになったら、即時撤退の予定である。
「デスので、ワタシと会話できるのは、二人だけの時のみデス。
ナガノ君の言葉をワタシは理解していマスが、ワタシからナガノ君に新たな情報は渡せないと思ってくだサイ。」
「わかりました。」
「それと、気をつけてくだサイ?今は、夜デス。」
あ、そうか。
「夜だと、レイニーさんは視力が落ちちゃうんでしたっけ。」
「違いマスよ?!
いや、確かにワタシも視力が落ちマスから、【鑑定】出来る範囲が狭まりマスけど、これだけ明るい室内なら、そこまで影響を受けないデスよ!
ワタシではないデス!」
「へ?」
「ワタシより、ナガノ君デスよ!今は女の子なんデスよね?!」
「あっ?!」
そうでした!!
我が股関にご立派様の気配が無い!!
いつもの夕方のタマヒュンが無いから忘れてたけど、寝てる間にマッタリモードの女の子の身体になっちゃってる…!
今のところは僕に状態異常は付いていないようだ。
どうやら、あの【一般市民】と【チンピラ】のように領域型で異常が発生するのは人型の男性限定らしい。
だが、むしろ…今までの情報を総合して考えると、女性の方がヤバイんじゃないか!?
「大丈夫デス。ナガノ君…!
魔法は慣れれば腕以外からも発動できるんデス!
だから、いつでも自分自身に状態異常回復を…!」
そこまでだった。
コツコツ、と廊下を歩くような足音を聞いたレイニーさんが、会話を切り上げて僕の肩へと移動する。
それと扉が開いたのが、ほぼ同時だった。
「『待たせたな、食堂はこっちだ、コリカン様もお待ちだ。行くぞ。』」
うわぁぁぁぁぁぁぁ…マジか~…
でも、まぁ、行かない訳にも行くまい。
「…は、はい!」
あ、そーだ、折角だしリリィレナさん…ひいては女性に回復魔法効くのか試しておこう。
「お、お願いしますッ!!」
「『はは、そんなに緊張する事はない。』」
そう言いながらリリィレナさんは僕を先導するべく、廊下の前方を進んでゆく。
キラーン!チャンスは今だ!!
レイニーさん曰く、魔法は腕以外からも出るって言ってた!
ならば、目からビームならぬ、目から回復魔法を喰らえッ!!!
おりゃあああああ!状態異常回復じゃあああああ!!
「フンッ!!」
思いっきり眼球あたりに力を籠めたら、確かに、光の環が出た!
あ、でも、場所が…
目じゃなくて、天使の環みたいな感じで頭上に…ま、いいか。
僕はそれを頭突きの要領で彼女にぶつける。
そりゃっ!
「はぅぅんッ!」
…このお姉さん、無駄に悲鳴が色っぽいんだよなぁ…
回復魔法を受けた彼女の足が止まる。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「あ…え?わたし…普通に話せる…体も…動くわ!…何で?」
おお?効き目があるっぽいな!
しかし、彼女の困惑した表情は一瞬で消え去り、また、すぐに廊下の案内を始める。
「『あ、ああ…失礼。ちょっと、ぼーっとしてしまったようだ。こっちだ。』」
だが、効果が発揮されたのはかなり短い時間のみのようだ。
もう一回、状態異常回復っ!!
「ふんぬっ!」
今度はさっきよりもっと強くをイメージして魔法を込めてみた。
「…!やっぱり!自由に…!!」
リリィレナさんの表情が変わる。
「ああ、お願い、わたし、今度、いつ自由に動けるか分からないの!
だから、ルークスに伝えて!
あの日から、わたしの意思じゃないの!!
勝手に、口も…身体も動くのよ!!
でも、信じて、わたしは、あんな男じゃなくて、ルークスを…」
必死に、捲し立てる。
ちょっと混乱しているのか、情報が要領を得ない部分もある。
しかし…どうやら彼女…普段は操られているっぽい、と言う事は推察できた。
だが、潤んだ瞳から涙がこぼれる前に、また…案内をしてくれていたような冷静なカオに戻る。
「『ああ、失礼。ちょっと、ぼーっとしてしまったようだ。こっちだ。』」
…後でレイニーさんに確認しなきゃ完全には分からないけど、どうやら女性に対しては本当に一瞬だけ状態異常を打ち消す程度の効果しか無いようだ。
2回目の方は、かなり全力で魔法を放ったのになぁ…
あんなに短い一瞬だと、一緒に逃げ出す事も、こちらの事情を説明する事も出来ないなぁ…
「『…どうかしたのか?』」
「あ、いえ…その…必ず、伝えます。」
「『何がだ?』」
「いえ、こちらの話です。」
「『さ、ここだ。』」
そう言うと、リリィレナさんは、かなり豪華な扉を何のためらいも無く開いた。
わきゃわきゃと、少女達の嬌声が響きわたっている。
そこは…まさに、ハーレムだった。
マハラジャのような、豪華な椅子に、ゆったりと腰掛ける10代後半の男。
取り囲むように、様々な魅力の女の子たち…
それも「絶世の」が頭にくっつくような美少女が6人。
その後には、全体のボディーガードなのか、2体のゴーレムが、ゆっくりと、手にしている大きなうちわを扇いでいる。
「『お帰りなさい、リリィレナ。』」
微笑みながら、そう声をかけるのは
…長い黒髪ストレートに黒い瞳の美少女。どことなく、日本人を思わせる顔だち。
いや、日本人の中でもとびっきりの美少女だ。
ぱっちりとした大きな瞳を長いまつげが愛らしく縁取り上品且つ清楚で柔和な表情が彼女の魅力を引き出している。
…その衣装もセーラー服を基調にした感じの紺ベースの…
つーか、あれ、そのまま、ガチでセーラー服じゃね?
違いというと、背中や太ももに装備している機械アームから伸びる銃火器??のような…
まるで、戦闘用ヘリや戦艦にでも装備されていそうなゴツイ火器とおぼしき物が、彼女の身体に装着されている点か。
え?これ、重力の影響とかどうなってんの…??
しかし、彼女の衣装に誰もツッコミを入れない。
「『うふふ、リリィレナ。遅かったじゃなァい?ねぇ、コリカン様、あーん。』」
中央に座る男の右隣でプリン(?)を彼の口に入れようとしている超絶セクシーなお姉さまは、本当に全身透けるような半透明の前掛けに、乳首と股間だけ、辛うじて隠しているような水着姿…
…いや、誤解を恐れず言うなら「紐」を巻き付けただけの…
18禁に挑戦するような恰好をしている。
モザイク三人衆とは別の意味でモザイクが必要そうな御仁だ。
こぼれんばかりのダブル・マウンテンおよびグランドキャニオン。
いやぁ、目の毒!目の毒ですよ、ごちそうさまです!!
緩くウェーブした、紫色の髪には、金色の小さな鈴がたくさん付いており、彼女が動くたびに、リリン、リリンと涼し気な音色を響かせている。
「『あー!ウィーリンばかりずるいのじゃ!!
コリカン!ワシの作ったぷりん、とやらを先に食べるのじゃ!』」
「『もぅ、ラフィーラ、今日の食事当番は、ア・タ・シ、よ。貴方は昨日たっぷり楽しんだでしょぉ?』」
「『ぐ…ぐぬぬ…』」
そのR指定セクシーさんと、男に「あ~ん合戦」を繰り広げているのは、銀髪ツインテールの少女だ。
ほぼ、
あ、何で「一見上品」なのかというと、背中からお尻にかけて、大きく布が切り取られており…
前から見ると上品なんだけど、後ろから見ると童貞を殺してください、と言わんばかりのシルエットに変貌するからだ。
この中の女性陣ではダントツに幼く…
今の僕のボティと同じくらい…10歳とか11歳…小学校の高学年、そのくらいに見える。
…しかし、そんな子供が、こんな色っぽい系の衣装?
お尻なんて上半分出てるし?その紐は見せるための下着か?
…色気うんぬんかんぬんの前に、なんか、お腹を冷やしそうで怖いのだが…
R指定セクシーさんから、「ラフィーラ」と呼ばれていたし、この、のじゃロリ娘が伯爵姫なのだろう。
「『あはは~、ティキも、ティキもあ~ん、するの!』」
「『……リリィレナ。帰還確認。損害率零。活動異常無。』」
「『な、何よ!今日のぷりんの材料はアタシが狩ってきたのよ!アタシに感謝しなさいよね!』」
あ、前に内区の入口で見た女の子たちだ。
スプーンと言うより、スコップに近いものを振り回している属性特盛妖狐メイドちゃんも居る。
ナポリタンの様な物を食べながらロボットのような事を言っているのが無表情ラバースーツさん。
そしてツンツンしてるのはハイレグエルフさんだ。
「あぁ、そうなんだ、ありがと。フルル。」
「『…べ、別に、コリカン、あんたの為じゃないんだからねっ!!
あ、アタシがぷりん好きだから獲って来たのよ!!』」
いや、違うな。
ハイレグエルフさんは、ツンツンじゃなくて、教科書の様に分かりやすいツンデレだ。
「プリンか…オレ、甘味はちょっと…苦手だから…」
「『あら…でも、私たちは皆、コー君が作り方を教えてくれた、このぷりんが大好きよ?』」
清楚系セーラーさんが微笑みながら手元のプリンを口に運ぶ。
もちろん、女の子達は甘味に目が無いのか…
真っ先にその甘いカスタードにスプーンをのばしている。
「『……ぷりん、補給優先順第一位。』」
「…みんな、いつも一番最初にプリン食べるけど、それ、本当はデザート枠だからな?」
そんな彼女達にかしずかれて鎮座している男はと言うと……
華々しい女の子たちと比較すると驚くくらい残念な感じだった。
いや……別に「デブ」って訳では無いんだけど…
なんか、締まりがなくて、だらしがない印象を受ける。
…そう、多分、コイツ、運動してないんだ。
皮膚が重力にあらがえていないとでも言うのだろうか。
元はソコソコイケメンの口だと思うのに…もったいない…
…大体、まだ10代後半だろ、今からそんな保存状態でどうするよ!?
この世界、元の世界に比べると、ダントツで肉体労働の比率が高い。
非戦闘員の代表みたいなレイニーさんでさえ、普段の移動は徒歩だし、庭でいろいろな食材を育てているし、最低限の筋トレは日常生活の中でこなさざるを得ない生活様式だ。
そのため、華奢なりにその体は健康的で引き締まっている。
隊長さんやオズヌさんなんて、タンクトップのモデルをやれそうだもんな…
男が見てもスゲーって思える筋肉の付き方してるし。
リーリスさんは口を開けば「残念」が香り立つけど、
細マッチョで足が長いエルフさんだから、多分、現代日本では一番女の子にモテる体形だ。
そんなメンバーを見ていたせいなのか…
それとも、ハーレムを築くような凄い能力者なのだから、もっとびっくりするような美形を僕が勝手に想像していたせいなのか…
「無残」と言う単語がハンパ無く似合う。
しっかし…10代後半には見えないなー。
多分、30代くらいに見えちゃうかもしれない。
いや、僕も人の事は言えない残念なモブ顔だけどさ…年代まで勘違いされるような事は無かったよ?
ふと見ると、テーブルの上に並ぶ料理は、日本でよく見かけたジャンクに近いものが並んでいる。
ハンバーガーにフライドポテト。
生地がしっかり厚めの特大サイズピッツァ。
別の皿には、唐揚げ、竜田揚げ、チキンナゲットのような油による高温調理の肉盛り合わせ。
鉄板の上でジュージュー音を立てているステーキとハンバーク。
そして、無表情ラバースーツの少女もモリモリ食べていたナポリタンにオムライスらしき卵料理。
野菜と言えばマヨネーズをたっぷり使っていそうなポテトサラダがどーんと鎮座。
スープは鳥白湯ラーメンのような香りを漂わせている。
さらに、少女達に大人気なのがプリン、と呼ばれていたもの…
見た目は確かに、日本に良くあるプリンそのものだ。
…異世界感の無い食卓だなー…しかも、炭水化物と肉類オンリー!
…まぁ…こんな感じのご飯ばっかり食べて、運動しなかったら、そりゃ…そーなるか。
むしろ、10代の身体だから、その程度で維持できていると言うべきか。
「『コリカン様』」
「おかえり、どうしたんだい、リリィレナ…その子は?」
「『はい、コリカン様…実は、本日、私の管理する自警団が町のゴロツキに襲われていたこの子を助けたのですが…』」
「『あらァ…?見慣れない子ねぇ…女の子かしらァ?』」
「あ、はい。僕、ナ…ノと…」
僕がR指定セクシのーお姉さまに返事を返した瞬間だった。
パァン!?
何か、ピンク色の魔力の塊のようなものが顔面にぶち当たった。
「チチッ!」
肩のレイニーさんが小さく鳴いた。
妙な違和感。
違和感の正体はすぐに分かった。声が出ないのだ。
「ナーノちゃんか…おぉ、いいね。」
いや、ナガノと言おうとしたんだけどな…?
あれ?
声どころか、体も…動かない?
僕の困惑をよそに、その男は「いいね」と言いながら舌なめずりをする。
…うわ…大概の女の子はドン引きするぞ?それ…。
「『コリカン様…彼女は村を焼かれ、帰る所も身内も無いそうなのです。唯一の仲間がこの小鳥だけだそうで…』」
え!?
何その設定??
僕、べつにそんな事は話してないけど?
リリィレナさんが、突然そんなことを語り始める。
「『…森を…いえ、村を焼かれたの?可哀そうに…』」
ハイレグエルフさんも、気の毒そうに眉根を寄せる。
「『ほえぇ~、ティキと一緒だ~!
ティキもね、妖狐の村が盗賊に襲われてね、ティキの村…もう無いの~…』」
元気印の能天気少女、といった雰囲気の属性特盛妖狐ちゃんも狐耳をしょんもりさせて落ち込む。
「『ティキさん…』」
清楚系セーラーさんが、優しく属性特盛妖狐ちゃんを抱きしめる。
さりげなーーーく、属性特盛妖狐ちゃんのその大きな胸の二つのふくらみを強調するような体勢でしばらくイチャつく美少女二人。
それ以外の全員は、一旦静かに一時停止。
え??何?これ…この美少女二人の鑑賞タイムなのかな…?
視線だけで確認すると、あのセルフ老化推進男が完全におっさんの顔で二人の様子をニヤニヤ眺めているのが視界の隅に映る。
なんだこれ…
心の奥にひやり、と冷たいものが走る。
そして、男が十分満足したのか、世界がまた動き出す。
「『!そうだっ!!
いーこと、思いついたっ!!
ね、ね、ウォーン様、この子もティキ達と一緒にここに置いてあげよーよ~!』」
「『えぇっ!?ちょっと、コリカン、あんた、また嫁を増やす気っ!?』」
えっ!?
嫁ですと!?
ちょっと待て、嫁って…あの【俺の嫁】ってヤツか??
僕が?あの男と??性交しろって事??
いやいやいやいや、そんなの絶対嫌だけど!!??
「『あらァ…フルルは嫌なの?』」
「『べ、別に…これ以上、嫁が増えると、アタシがコリカンと一緒にいられる時間が減る…
とか考えてる訳じゃないからねッ!!勘違いしないでよねっ!』」
「『え?…あの、でも…そんな、ご迷惑をお掛けする訳には…』」
!?
唐突に、僕自身が僕の意思とは無関係に勝手に言葉を紡ぐ。
え!?ちょ、なにこれ??
「『だが、帰る所が無いのだろう?』」
「『…それは…その…はい…』」
そう言って俯く僕の体。
はい、じゃないよ!?
帰って良いなら今すぐにでも外区に居るであろうオズヌさんの所に帰るよ!?
!!
これか!?
これが「おかしくなる」の正体か!!
他人の意思で操られる自分の身体。
本当の意味で【ハーレムの王】と言う
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