第12話 古傷や肩に染み入る治癒の技

何でも、アルストーア自由騎士団とは、異邦人

…と呼ばれる特殊な祝福ギフトを持つ者たちを警戒するのが主な任務らしい。


ほらぁ!女神様ぁ!!

転生者達は現地の方々に警戒されちゃってるじゃないですかー!


それ専用の組織まで有るなんて…ね~…。


死者蘇生なんてアリアリ、めっちゃ普通よ~ん、みたいな感覚で話してたけど、

やっぱり、神様と人間では感覚が違うじゃん!


ちなみに、エルヴァーン君の持つ【簒奪】はどんなに階位が低くても警戒対象なのだそうだ。

と、なると…僕もアルストーア皇国に管理されちゃうのかな?

それがこの世界の治安維持の一環なら仕方ないかもしれないけど…

でも、この隊長さんに管理されるのは嫌だな~。


だって、いきなり何の罪もない一般市民に斬りかかるような人だよ!?

正直、分かり合えるとは思えない。


…この人に管理されたら、僕なんかは、生き生きと拷問する隊長さんの横で被験者に対してひたすら回復魔法を使うはめになりそうなんだもん。


僕は、時折、隊長さんからチラチラ投げかけられる視線をさりげなく無視し、大人しく説明に聞き入る。


オズヌさんがさりげなく確認してくれたけど、一応【鑑定】や【回復魔法】は、今回の任務で必要とされる可能性は高いものの、特段管理対象ではないらしいと聞いてちょっと安心した。


ただ、確か女神のお姉さんが言っていた【回復魔法】のコンプリートボーナス。


…他人の強制ギアスを打ち消せるって話を出したら目の色が変わりそうだ。


だって、隊長さんが管理してるはずのエルヴァーン君の強制ギアスだって消そうと思えば消せる可能性が高いもんね。


…うん、秘密にしとこう。

超秘密。


さて、それよりターゲットとなる異邦人だが、彼らは大体3つの行動パターンに分かれるらしく…


第一が積極的にこの世界と関わりを持つが、比較的こちらの世界の常識をわきまえた善良なタイプ、

第二が隠れ里のような所に引き籠り、身内と認定した者に危害を加えない限り何もしてこない世捨て人タイプ、

そして、第三が珍しいうえに強力な祝福ギフトを笠にやりたい放題タイプ、とのこと。


特にタチの悪いヤツは、此方の文化や国家などを乗っ取りから始まり、

人的・魔法的・資源的資材を搾取するような事もあるらしい。


そう言えば、女神のお姉さんもかなり軽いノリだったけど、祝福を渡し過ぎたら魔王みたいになっちゃって討伐された人もいた、とか話してたな…。


そして、今回、予言のお姫様が心配している相手はこの第三のタイプ。


どうやら魅了系の祝福ギフトを持っているらしく、フォルス伯爵領の重要人物はほとんどソイツの言いなり状態らしい。


「…【魅了】か…

しかし…【魅了】は種族が違うと普通はそんなに効かないもんなんだがなぁ?」


「へー?そうなんですか?」


「例えば、ここに芋虫が2匹居るとする。

ナガノは、このどっちが男前でどっちが不細工か分かるか?」


「…多分、わからないです。」


多分って言ったけど、むしろ絶対わからないよ!?

今まで人生の中で、そこまで芋虫さんの顔立ちに注目した事無いもん!


「…だろ?で、男前芋虫は、その種族としては物凄く魅力的だったとする。

別種族のナガノが惚れると思うか?」


「あ、なるほど。ハードルが高い事はわかりました。」


「確かに、重要人物が軒並み言いなりなんて異常デスよね…本当に【魅了】なんデスかね?」


「他にも複数の祝福ギフトを所持している可能性が高い。

むしろ【魅了】自体はあまり問題が無いと考えている。」


「何故デスか?」


「ヤツは異性…つまり、女しか操れない。

よって、我々が【魅了】される事は無いだろう。だが…」


「だが?」


「【魅了】した女たちを強力にパワーアップする事が出来る能力も同時に所持していると思われる。」


「でも、女性ですよね?」


「ヤツの側近に、ただの人間でありながら片手で鋼の槍を握り潰せる女騎士が居るそうだ。」


いや、槍をに斬りつぶせる女性を『ただの人間』とは言いませんがな。

パワフルゴリラ族とかなのかな?その女性の方…


「そのため、まずは相手の持つ特殊技能を丸裸にしたい。

…恐らく、そのための『神の目』だ。」


「…となると、現地である程度偵察しないとこれ以上の情報は無い、と言う事か。」


「その通りだ。」


「分かった。じゃ、今日の所はこれでお開きだな。」


「了解だ。では、出発は明日とする。」


「いや、一週間後だ。」


「…ほう?」


「お前さん達は良いかもしれないが、俺たちにはそれなりに相応の準備が必要だ。

…特に今回は非戦闘員を二人も連れて行く訳だからな。」


あ、僕とレイニーさんは非戦闘員枠なんだ…

いや、まぁ、その通りですけどね。


「それと、このメンバー以外にも、パーティーに同行者を加えても構わないか?」


「ふむ…貴殿等三名が参加するのであれば、1,2名の追加要員については問題ない。

ただし、追加要員が1名増える場合は一人当たりの報酬額を6ハルク、

2名増える場合は5ハルクとさせて貰う。

なお、祝福ギフトの件は人数が何人に増えても『1件』だけだ。」


「ああ、分かった。」


「では、一週間後…だな。

もし、それより前に出発する気になるのなら『月兎の星待ち亭』に宿を取っているから尋ねて来たまえ。」


「ああ。」


「これが契約書だ。署名は一週間後で構わない。全員で目を通しておくといい。」


「…流石に自由騎士団様…こう言うところはキッチリしてやがるな…」


隊長さんは、なにやら項目が複数書かれた奇麗な用紙をオズヌさんに手渡す。

妙に小奇麗な装飾が施されていて、知らなければパッと見、結婚式の招待状みたいだ。


「…では、帰るぞ、エルヴァーン・ジョウ」


そう言うと、隊長さんはすでに僕たちは興味の対象ではないのか、さっさと部屋から出て行く。


「た、隊長!」


「あ!ちょっと待って!」


僕は、隊長さんを追って駆け出そうとするエルヴァーン君を呼び止めると、雑に治療された顔面に回復魔法を投げかける。


「…ほい、回復!」


一重の光の環が吸い込まれると、青あざになっていた顔が奇麗な元の美少年フェイスに戻る。


「あ、ありが……ふ、フンっ!れ、礼は言わないからなっ!!!」


いや、言えよ。

つーか、言いかけていただろ。

何気に耳まで真っ赤なんですけど?


「……ツンデレが可愛いのは二次元までだと思うんだよね。」


「やかましい!!」


「それより、このまま帰る気?」


「…何が言いたい?」


びっ!


僕はエルヴァーン君の袖をつかんだまま、左手で床を指差す。

この血まみれの床の掃除を手伝って行けと言いたい。


レイニーさん本体や衣類に飛んだ血液については、例の回復魔法の光を浴びた際にどういう理屈か分からないけど、奇麗さっぱり消え去っている。


だが、一度流れ出てしまった血については…

まだベットリと部屋の床にこびりついている。


「バケツと布巾と雑巾、受付のお姉さんから借りてきてよ。」


「…っち…ちょっと待ってろ。」


そんな訳で、4人で一通り部屋を掃除してから受付コーナーを後にした。

借りた会場の原状復帰は社会人の常識なのですよ。

次に使う人が困るじゃろ?


ちなみに、僕としては意外だったのは、オズヌさんとレイニーさんもわざわざこの受付コーナーを掃除する事に対して驚いていた事だ。


どうやら、これが自分や知人の家ならまだしも、そうでない場合はわざわざ公共の場所を掃除したりしないらしい。


一応、公共の場所が汚れた場合は掃除専用のクエストを出して、それを受けた人に片付けて貰う方が一般的なんだとか。


「だが、本来こういうのは自分たちで片付けるようにした方が良いんだよな。」


「そうデスね。結局清掃系のクエストは汚れの状況よりも一度掃除してからの期間で定期的に出されマスから…

清掃直前になると、こう言うところは大分汚れてしまいマスし。」


「ああ、稀に、閉口する時があるよな。」


まぁ、そう言いながらも二人とも手伝ってくださった訳ですが。


「…ナガノ君はこれから水魔法を覚えると良いかもしれないデスね~。」


レイニーさんがしみじみと呟いた。


聞けば、水魔法は別名「生活魔法」とも言われており、この手の掃除・洗濯そして飲料水確保に便利なのだとか。


回復魔法とも相性が良いし、エリシエリさんも使えるそうなので、今度教えてもらうのも良いかもしれない。


「それより貴様等は何処で寝泊まりしてるんだよ!?」


「えー?…どこだろう?オズヌさん…」


「一応、『リシスの薬屋・鑑定屋』の斜め向かいが俺の家だぞ。」


あ、オズヌさんのお家ってレイニーさんの家とそんなに近くだったんですね。

そりゃ、勝手知ったる感じにもなるわ…


「えっ!?寝る所が有るのか…?」


「…お前さん、冒険者の事を何だと思ってるんだ?

一応、俺はこのダリスを拠点にしてるからな。」


「いや、そうか…うん。有るなら、別に…」


あれ?何でそんなにがっかりしてるんだろう?


「どうしたんデスか?」


「な、なんでもないっ!!

俺様は、単に宿が無ければ、安く泊まれる宿を知っていただけだ!

…じゃあなっ!!」


ばたばたばた…


それだけ言い捨てると彼は隊長さんの後を追って駆け出してゆく。

恐らく隊長さんが泊っていると言っていた『月兎の星待ち亭』に向かっているのだろう。


「さて、じゃあ、俺たちも戻るか。」


「そうデスね…今日は、ちょっと…色んな事ががあり過ぎて疲れたのデスよ…。」


レイニーさんが眼鏡を外して目頭をぎゅっと抑えている。

その意見にはこちらも完全に同意せざるを得ない。


「【鑑定】で見える内容が急に増えたせいデスかねぇ…」


ああ、レイニーさんの場合、そっちの疲労もあるのか。


「ま、エリシエリの作った美味いメシを食えば疲労も取れるさ。」


「そうデスね!!」


おい、お前、さっきまでのその疲労は何処へ行った?

と聞きたくなるような生き生きとした返事を返すレイニーさん。


ついさっき命の危機を乗り切った男とは思えないな…。


「エリシエリ様の作るゴハンは最高デス!!」


外に出ると、すでに空は紅に染まっていた。

それを認識した途端に、猛烈に腹の虫がその存在を主張し始める。


そうだよね。


ちょうどお昼時にエリシエリさんの着せ替えフィーバータイムが始まっちゃったから、お昼はきっちり食べられなかったんだよね。


広場では、威勢の良い屋台や出店は、そのほとんどが姿を消し、定食屋や飲み屋のような店舗に明かりが灯りだす。


本当は、今日のうちに買い物まで済ませたかったけど…まぁ、仕方がないでしょう。


これは、エリシエリさんの所に戻る頃にはちょうど身体が女の子になっていそうな時間だな。

まぁ、帰宅するにはちょうど良い頃合いかも。






僕たちが、エリシエリさんの待つ『リシスの薬屋・鑑定屋』に戻る頃にはすっかり日は暮れていた。


「ただいま戻りマシた~。」


「あっ、レイニーの坊や、お帰りっス~。」


と、聞きなれない声が響いた。

何やら、串焼きのお肉のようなものをモグモグしながら、その串を持った左手を振る男性。


「リー兄ちゃん、もう『坊や』は止めてって何度も言ってマスよ!

来ていたんデスか?」


それは、あの町の出入り口で出会ったエルフの兵士さんだった。


「よ、リーリス!」


「へ?あ、どーもっス?

…なぁ、レイニー…こちらの兄貴の若い頃にめっちゃ似た兄さん誰っス?」


「おま…門の前では普通に俺だって気づいただろ!?」


「へ?…え?」


そんな訳で、ひとしきり、エルフの兵士さんの驚愕の喧騒が響き渡ったのだった。





「へ~、そんな事があったんスか~。」


レイニーさんとエリシエリさんが夕ご飯の準備をしてくれている間、オズヌさんが、僕と出会うまでのアレコレについてざっとエルフ兵士さんに説明する。


そのたびに驚いたり、笑ったり、心配したりと百面相が忙しい模様。


一通り話が終わると、彼は人懐っこそうな笑みを浮かべて、僕の事を興味深そうに見つめてくる。


「えーと、ナガノちゃん?

オレは一応、エルフ族のリーリス・リンって言うんスよ~。よろしくっス!」


何か、この人…

マジで、かもし出す雰囲気が好奇心旺盛な大型犬の子犬っぽいんだよね。

わっふる、わっふる!って鳴く感じの。

この人には魔法や弓矢よりも「わんこ尻尾」の方が絶対似合うと思う!


「はいっす、よろしくお願いしますっす!」


おっと…リーリスさんの口調…感染力が強いな…


「にゃははっ!兄貴~!この子面白いっスね~!

おー、髪柔らかくて奇麗っスね~!」


「わっ、わっ…!?」


この、雑にわふわふわふっと撫でてくるのも大型犬がじゃれてるような感じというか…


テンション高い人だな~。

うん、一回、落ち着こうか?


「ところでナガノ…モノは相談なんだが、こいつ…リーリスの古傷って治せるか?」


「どんな傷なんですか?」


オズヌさんの話を聞くと、10年以上前に右肩を毒を持ったモンスターに傷付けられてしまったらしい。


その傷はかなり深く、無事に一命を取り留めたものの、右半身に軽い麻痺として残ってしまっているとの事。


日常生活に支障はない程度なのだが、戦闘力や瞬発力については、冒険者を続けるには厳しい程低下してしまったようだ。


なお、このように冒険者が大きな傷を負って引退せざるを得ない場合、生活が厳しくなってしまうのが普通なのだが、彼の場合は、このコミュニケーション能力の高さと人の顔を覚えるのが得意と言う特技を生かして門番の兵士に転職できたんだとか。


生活力高いなぁ…。


「俺は、昔リーリスと組んで冒険してたんだ。」


おお、正式な元パーティーメンバーって事か!


「にゃははは、ナガノちゃん、兄貴あんな事言ってるっスけど、もう全然痛みとかは無いから、無理しなくてもいいっスよ~」


リーリスさんは左手で僕の頭をぽふぽふする。


「古傷は治したことが無いので…ちょっと試してみますね。

傷口とか、見せてもらえますか?」


「もぉ~、ちょっとだけよ~ん。」


ちょっとふざけた調子で羽織っていた上着を脱ぐ。

その際に、彼は左手を器用に使いササっと脱いでいたが、確かに右腕の動きが悪いのが分かる。

特に注意して見れば、傷等は無いものの右手の指先はほとんど動いていなかった。


そして、そのまま背を僕に向けて椅子に腰かける。


見れば、肩のあたりに大きめな傷跡が残っていた。

うむ、とりあえずやってみようじゃないか!


「リーリスさんの古傷の一度途切れた神経がまたつながる感じで!

10年以上前の身体に戻すように治して!」


呪文…と言う訳ではないけど、何となく「こうなって欲しい」と言う理想を宣言すると魔法の発動がしやすい気がする。


僕は、両手の間に現れた七重の光の環でリーリスさんを包み込む。


「あ~…マジで効くっすね~…そこそこ…あ~…」


良質なマッサージでも受けてるみたいに「おほぉ~」とか「ん~」とか言いながら恍惚の表情を浮かべるリーリスさん。


あれ?おかしいな…

エルフってもっとこう…クールビューティな生き物じゃ…

…いや、僕がエルフに夢見すぎかな…?


お兄さん、それ、どう見ても銭湯のマッサージチェアでくつろぐおっさんの表情です。

口を閉じようぜ、その緩み切った口を。


暫く傷口で留まった光の環が融けきった後には、肩の傷も完全に消えていた。


「どうですか?」


一瞬前までは人様の前に晒せないような顔で蕩けていたリーリスさんが一転。


「…えっ?」


滅茶苦茶真剣な顔で右手を握ったり、開いたり…


それをどんどん高速で繰り返している。

回復魔法前のほとんど動きが無かった右手を考えれば、恐らく無事完治した

…と、言えるのではなかろうか?


すると、リーリスさんが叫ぶようにオズヌさんに尋ねた。


「あ、兄貴、弓とか有るっスか!?」


「ああ。」


時空袋から取り出したのか、かなり使い込まれた感じの弓矢一式がオズヌさんの手に握られている。

それを受け取ったリーリスさんは、躊躇なくそれを引き絞る。


その真剣な顔つきにすっと伸びた姿勢は、先ほどソファの上で蕩けてた人とは思えない凛々しさだ。


と、そのまま矢を放つ。


えっ!?ここ、室内!?


しかし、ヒョウ、と放たれた矢は、窓に貼ってある薄い布を通り抜け、庭の木の枝に突き刺さり、タァンと言う小気味よい音を響かせる。


そして、流れるような動作でさらにもう一度矢を放つ。


放たれた矢は前に刺さった矢を打ち抜く形で寸分たがわぬ位置へと突き刺さった。


「…マジっスか…」


いや、それ、こっちの台詞ですけど!?


呆然と呟くリーリスさんを後目にオズヌさんがいたずらっ子のような笑みを浮かべている。


「凄いっス!凄いっスね!!ナガノちゃん!!

まるで神殿の巫女様みたいっス!!

…いや、巫女様だって、ここまで祝福されている方は滅多に居ないっすよ!!

ありがとーっス~!!!」


「わ、わ!?ちょ…リーリスさんッ!?」


相当嬉しかったのか、リーリスさんは突然僕を抱え上げると、高い高いでもするように抱きかかえてぐるぐる回り始める。


テンション高ぇ!!


いくら10歳児程度の少女の身体になっている…とはいえ、僕は保育園児じゃないんだから!?

びっくりしたよ!


高い高いなんて…本当…何年ぶりにやって貰ったんだろう?

小学校低学年の頃以来かな。


…ちょっと楽しかったのは秘密だ。


中身は良い大人なのに…!


「おっと、ゴメン、ゴメンっス。

でも、兄貴…この弓…まだ持っててくれたんスね…」


「まぁ…元々、お前の物だしな。」


「アニキ~、愛してるっス~!!」


僕を床に下ろし、オズヌさんに抱きつこうとするリーリスさんをぺっ、ぺっと慣れた手つきで躱す。


「はいはい、お前の愛はいらんから、今度の俺の仕事を手伝え。」


「もちろんっスよ!」


「あらあら、どうしたの?大騒ぎして~」


そのタイミングでエリシエリさんが大きなお鍋を両手に持って部屋に入って来た。


「あ、あれっ??エリシエリさん??」


何か…老けてませんか?


いや、女性にそんな事言うのは失礼だとわかってるんだけど…

昼間見た時の彼女は20代にしか見えなかったのだが、今料理を持って来てくれた彼女の頬にはくっきりとほうれい線が刻まれ、全体的に肌もくすみ、髪の艶も一段くらい落ちている。


割と奇麗な年の取り方をしているとは思うものの、40代後半くらいになったように見えるのだ。


「うふふ…そうなのよ、驚いたかしら~?

私の祝福ギフトはね、昼は若い姿を保てるんだけど、夜になるとこんな風におばちゃんになっちゃうのよ~。」


おお、僕と同じく昼夜で身体に変化のあるタイプの方だったんだ!


微笑む目じりにはカラスの足跡。

でも、可愛い人ってどんなにお年を召されても上品に可愛い雰囲気を醸し出せるんだな、と納得の笑顔。


「何を言っているんデスか。エリシエリ様は24時間365日どの瞬間も最高に奇麗デスよ!」


なお、旦那様は相変わらずメロメロのご様子。


ただ、レイニーさんの言っている事はちょっと分かる気もする。


若い姿がキラキラ眩しい美しさだとしたら、お年を召した姿はいぶし銀的な穏やかな美しさとでも言うのだろうか。

こういう風に年を取れる人って男女を問わず、ちょっと憧れるなぁ。


…ちなみに、こっちの世界も元の世界と同じ24時間365日なんだね…


「さ、冷めないうちに食べマスか?」


「そうね。皆、ご飯できたわよ~」


「やったっスー!!」


「難しいお話はあとにして、先にご飯を食べちゃいましょうね~。」


わーい!お待ちしておりました!!

…と、言うか、実はちょっと回復魔法を使う前から、いい匂いはしていたんだよね。


異世界家庭料理楽しみです!!


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