第20話 見えないけれど、いつもそこに

都会で住み暮らしていると、野生の動物と出会う機会があまりありません。

そのせいか、日常の中で動物に出会うと、普通以上にギョッとしてしまう人が多いようです。

私の場合は、ウキウキしてしまうんですけれども……


職場が都心にあるのですが、帰宅途中でネズミに出くわしたと言う話をしているスタッフがいました。

気持ち悪い、ネズミが好きな人なんていない、と話しているところへ、

「えー、私ネズミ好きだけど……ドブネズミも好きだよ、外で出会っても触らないけどね。クマかわいいとか言うのと同じよ。」

と言ったら、ええーっ、と引かれてしまいました。

ドブネズミって、名前はひどいですが、見た目はかわいいと思うんですけど……色が良くないのかしら……


そんなやりとりがあったせいか、ふと思い出しました。

自分では覚えていないのですが、私が小さかった頃の話として、母から何度も聞かされたエピソードです。




幼少期、私は豪雪地帯のちょっとした田舎に住んでいました。


当時2歳くらいだった私は、ある日、母と一緒に家の前で、近所のおじさんと出会いました。

北国の春、雪解け水が小さな小川を作る頃のことです。

おじさんは、金属のカゴを持っていて、その中にはネズミが入っていました。


それを見て私は、

「わあーかわいいねー。おじちゃん、飼ってるの?」

と、いいなぁーうらやましい、といった雰囲気で言ったのだとか。


それを聞いて、母と近所のおじさんは、何も言えずに黙ってしまったそうです。


そう、そのネズミが入っていたのはネズミ捕りのカゴ。

おじさんは、家の前の小川にカゴを沈めに行こうとしているところだったのでした。




今でも生き物はなんでも好きですが、子供の頃と違って、生活空間に入り込んでくる生き物を駆除するのは当然だと思っています。

直接的な危害がない蜘蛛などが室内をウロついていても微笑ましく見守っていますが、もし、ネズミなどの大きめの動物が入り込んできたら、徹底排除することになるでしょう。

見た目はかわいいですが、確実に不潔ですし、バトルになったら、すばしこいあちらが有利でしょうし。

コウモリもモフモフでかわいくて大好きなんですが、戸袋などに入り込んできたら、やはり出て行ってもらうでしょう。

どんなにかわいい生き物でも、家に入ってくれば侵入者、仲良くはできません。

しかし、その逆もまた然り。

生活空間を侵されなければ、ただただ愛らしい隣人です。


と、思うんですけど、生き物の好き嫌いは理屈じゃないみたいですし、嫌いな人は嫌いな理由を説明できないこともあるようですね。

母はヘビが大嫌いで、見かけるとゾッとするらしいですが、何故かと聞かれると理由はない……というか見た目が気持ち悪い、ようです。

私は、危険かどうかという観点を除いて、ヘビが気持ち悪いという感覚がないので、経験によらない部分で人によって感覚が違うのが不思議だなーと思います。

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なんだかワクワクしたもので 四方山 英果 @yomoyama2019

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