夏。水鉄砲と少女のワンピース。

とらたぬ

夏。水鉄砲と少女のワンピース。

 びゅっーと噴いた水が、少女を濡らす。

 すかさず少女がぴゅぴゅぴゅと三連射。僕の顔に命中して、水が鼻の穴に入った。

 仕返しだ! 僕は再び水鉄砲を構えて、それの繰り返し。

 気がつくと、少女の髪からこぼれ落ちた水滴が、割れたアスファルトに水たまりを作っていた。

 道に出来た小さな池は、太陽の光を浴びて輝いている。

 そこに、青空と入道雲以外にも、何か白いものが映っていることに、僕は気づいた。

 風が止んで、水面が凪ぐ。

 それは、瑞々しい肌色に挟まれた三角。つまりパンツであった。

 途端に、僕の顔面は真っ赤に染まる。

 見てしまった、見てしまった! 一瞬で記憶に焼きついた純白の光景。

 どうにか振り払って顔を上げると、濡れた少女のワンピースが目に入る。

 そしてまたもや赤面。火でも吹き出しそうなほどに赤く染まったその顔で、透けて見える肌は僕の目を捉えて離さない。

 僕はバカか──!

 どうして今まで気づかなかったのか。

 少女のワンピースは濡れ透けて、ぴたりとその白皙に張り付いている。

 下着のおかげで胸こそ見えないものの、くっきりと見えるへそや鼠蹊部が、純粋な中にアンバランスないやらしさを醸し出していた。

 ──って何を見てるんだ僕は!!

 突如火を吹いて自分を殴り始めた僕を、少女は首を傾げて見ている。

 その目が、僕の視線を追って、自らの惨状に気づいてしまった。

 少女は熟れたリンゴのような真っ赤な顔で、己の身体を隠す。

 僕は咄嗟に言い訳をしようとして、けれどそんな少女の姿をまたもや凝視してしまった。

 これは違うんだ、言おうとした言葉が口から出ない。

 端的に言って、恥じらう少女の姿は見惚れるほど美しかった。

 見た?

 少女が言ったから、僕はいいや見ていないよ、と答えようとして、気づくと正直に頷いていた。

 少女が迫る。拳を振りかぶる。

 ズドンと衝撃。

 一瞬遅れて、鈍い音が鳴る。

 地に倒れ伏した僕を尻目に、少女は家の中に入っていた。

 薄れゆく意識の中、それでも最後まで僕の視線は少女に釘付けだった。

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夏。水鉄砲と少女のワンピース。 とらたぬ @tora_ta_nuuun

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