第2話~樹の異世界と出会い~
とある森の中に神官着姿のリーナはいた。
そこはまだ日が沈む前で辛うじて太陽の光が森の中に届いていた。
「ここはどこだろう?試験会場?」
リーナはとりあえず回りの状況を確認しようと調べてみたが何処を見ても高さ10m位の木しかなかった。
道も無く段々暗くなって行く状況に焦っていると雨が降り始め、リーナが雨宿りが出来る場所を探していると丁度人が腰を曲げた様な木がありその下に入り持ってきたタオルで顔を拭いながら。
「もう雨とか最悪・・卸したての神官着がビチョビチョ・・」
リーナはそう言って神官着を拭きそしてタオルを首に掛け顔を上げるとそこには腰を曲げた木の先がありそこには木の顔がリーナを見ていた。
リーナは慌てて木の下から出ると他の木の下に行き顔のあった木を見て気がついた
「あの木は人形?」
そこには木の人形が背を曲げて立っているとしか見えなかった。
リーナは恐る恐る雨の中顔のあった木に近づき、よく見ると人間と同じく手や足そして関節があった。
「人形にしては大き過ぎるし・・何だろう」
木を見上げながらそう思っていると木のお腹辺りに直径1m位の穴が開いているのを見つけリーナは木から少し離れてそこを見ると丁度人が入れそうな空洞が見えた。
「あそこに入って雨宿り出来そう」
リーナは荷物からロープとフックを取り出し穴の近くに掛けると滑らないように確認しながら木の人形を上り始めた。
リーナも冒険者としての最低限の技術は教わっていたので何とか滑らずに穴に辿り着き穴の中を覗くと調度卵を縦にした状態で人1人が入れる空間になっていた。
リーナは中に入ると明かりが欲しいとライトの魔法を唱えたが反応が無く何度か試したがライト以外の初歩魔法も神官魔法すら何の反応も無かった。
「あれ?魔法が発動しない?どうして?」
リーナは魔法を諦め荷物からランタンを取り出し火を点けると中は丁度座れる様に蔓が伸びていて左右に肘掛けがありまるで椅子の様になっていた。
リーナは蔓の椅子に腰掛けると木の穴から見える木とやまない雨を眺めながら考えた。
「初級の時は案内役の精霊が現れてクエストの内容やフォローをしてくれたけど・・今回はないのかな?それともクエストの内容も分からないまま全部自分でやれって事なのかな?それと・・『笑っちゃう級』とか意味分からないし・・やっぱりクエスト終わらないと帰るゲートも開かないのかな・・その前にクエスト自体が見つからなかったらどうしよう・・」
未開の地で雨の降る夜に何が起こるか分からなかったので、リーナは明日の朝までここで休む事にした。
翌日、リーナは眩しい朝日を顔に浴びて目が覚めた。
「もう朝?あ、雨が上がってる」
リーナは木の穴から顔を出すと辺りを見渡し、自分がいた元いた世界とは違う場所にいる事を再確認すると荷物を纏めて地上に降りた。
「もしここが試験会場ならどこかに人がいるはず」
そう思いながらまず太陽に向かって移動をする事にした。
リーナは太陽が頭上に来ると目印を頼りに引き返し日が沈む頃に元の場所に戻った。
「明日は逆の方角に行こう・・」
そして木の人形の中で明かりを点けて中級用にしか用意してなかった少ない食料を少しだけ食べて眠ろうとした時に男の低い声が聞こえた。
「そこの枯れた
リーナは「かれたじゅしんへい?」と思いながらゆっくり穴から顔を出すと革鎧に武器を構えた大男が1人立っていた。
リーナは慌てて顔を隠すと目を瞑り母親から貰ったネックレスをぎゅーっと掴み神に祈りを始めた。
「どうしたベルンハルト何かいたのか?」
声を掛けたのは身長160cm、茶髪で笑顔の似合いそうな若い男だった。
「レアン王子あそこを」
答えたのは身長180cm、黒髪短髪で顎鬚を生やし笑顔の似合わない賊っぽい顔をしていた。
ベルンハルトが指を指しレアンがその方向を見ると
「枯れた樹神兵の
レアンがそう言うとリーナは慌ててランタンの火を消そうとしてランタンを落とし事もあろうか狭いこの場所で火災を発生させてしまった。
「キャーやばいやばいどうしようどうしようー火が消えないよー」
リーナはそう叫んだ後に荷物を片手に穴から飛び出し、今度は「キャー落ちるー」と叫びながら手をバタバタさせ自由落下して行った。
それを傍観していたレアンとベルンハルトは樹操房から飛び出し自分達に落ちてきた少女を無意識に受け止めようとした。
身長の差で最初にベルンハルトに抱えたが勢いが収まらず腕を抜けその勢いでベルンハルトは転倒してしまい、その下にいたレアンが落としてたまるかと少女を抱えそのまま後ろに倒れてしまった。
リーナは「いたたた」と言いながら腰を摩りながら目を開けると目の前に茶髪の男が倒れていた。
「え、あ、あのー大丈夫ですか?」
リーナがそう言うと男は目を開けて頭に手を当てながらリーナを見ると
「君の方こそ大丈夫か?」
「はい私は・・」
「そうか、それならどいてくれないか」
リーナは仰向けのレアンに跨って座っているのに気づくと顔を真赤にしながら慌てて立ち上がり。
「ご、ごめんなさい」
リーナが頭を下げていると、起き上がってきたベルンハルトが王子に近寄り。
「怪我はありませんか王子」
「ああ大丈夫だ、それよりお前の方は大丈夫か?」
「私の事など心配なさらず」
ベルンハルトはレアンを起こしながら言うと、リーナは自分を助けてくれた事に気付き、もう1度2人に頭を下げているとレアンが鎧の埃を払いながら。
「君はここで何をしていた?見た事の無い服装だがファーシェの者ではないな」
「ファーシェ?わ、私は神官昇格試験で間違ってここに転送されて・・」
リーナが真面目に答えているとベルハルトが少し怒鳴り気味に
「もしやグレバルトの者か?そうなら正直に答えろ」
「グレバルト?私はここでクエストを終わらせて元の世界に・・」
リーナが答えていると別の兵士が現れ
「レアン王子、ベルンハルト様、急がないと時間が有りません」
そう言われた2人は当初の予定を思い出し。
「王子、急がねば集合時間に遅れます、それとこの娘はいかがしましょう?」
「そうだな・・私は他を連れて移動する・・この娘はベルンハルトに任すから後で合流だ」
レアンがベルンハルトに指示を出し行こうとした時にリーナが
「リーナ、私はリーナ・カートラインです」
「そうか、申し訳ないがリーナ、ベルンハルトの指示に従ってくれ」
レアン笑顔でそう言うと2人を残して兵士といなくなってしまった。
残されたリーナはベルンハルトに手を拘束され荷物を押収された。
「すまんな、素性が分からない以上こうさせてもらう・・手は痛くないか?」
「大丈夫です」
「では着いて来い」
そう言うとベルンハルトはレアン王子の向かった方へ無言で歩き始めリーナもここにいるより着いて行った方がいいと判断し後を着いて行った。
夜空には沢山の星の中に三日月があり2人は森の中を歩く事2時間、ベルンハルトが止まるとリーナを近くの木に拘束すると
「ここで待っていてもらう、作戦が終わったら迎えにきてやるから安心しろ」
リーナが頷くとベルンハルトは夜空の星を見ながら方角を確認するとリーナの荷物を置き森の中に消えて行ってしまった。
リーナは少ししてから木から脱出を試みるとあっさりと抜けてしまい、荷物から果物ナイフを取り出し手のロープを切り落とした。
リーナは荷物を背負うとベルンハルトの行った方に小走りで追い駆けた。
10分ほど行くと人的な明かりと言うより何かが燃えている様な明かりが見え、近づくにつれて木が焦げるような匂いと共に争う声が聞こえてきた。
リーナが更に近づくと数軒の家がありその1軒が燃えていて少し離れた場所でレアンとその仲間が賊の様な人と戦っていた。
リーナは近くの木に隠れ様子を伺った。
「賊は1人たりとも絶対に逃がすな・・拉致された住民は見つけたか?」
レアン王子がそう叫ぶと兵士が慌てた様に
「燃えている家以外は確認しましたがいませんでした」
「賊め、やり方が汚い」
レアンが対峙していた賊を倒すと燃え盛る家に向かったが炎の勢いに入り口前で足止めをしてしまった。
リーナは燃える家を見ながら『中に人が?』と思いながらレアンのいる家の反対側を見ると火の手がまだ少ないドアを見つけた。
「あそこからなら入れるかも」
そう言うとレアンに見えないように移動しドアの近くまで来た。
「ここでも結構熱い・・」
リーナは荷物を下ろし中から飲み水を出すと蓋を開け頭から被った。
「無いよりマシ程度だけど・・」
そう言うとドアに体当たりして燃える家の中に侵入すると態勢を低くし辺りを見渡し炎の向こうに猿轡と手足を束縛され炎に怯える数人を発見した。
「まだ助けられる」
リーナは意を決すると両手を顔の前でクロスさせながら炎の中に突っ込み途中何かに躓きながらも束縛された人の所に辿り着くとそこには4人の女性がいた。
「大丈夫ですか?今助けますから」
リーナが笑顔で声を掛けると安心したのか涙を流し始めた。
リーナは足のロープを切ろうとして気づいた「あ、ナイフ忘れた・・」と、今から戻ってる時間がないと周りに代わる物を探していると床に転がっているガラスの破片を見つけた。
リーナは「主よ私を守りたまえ」と心で祈ると破片を掴み4人に「足が自由になったら姿勢を低くして裏のドアから逃げてください」と自分が来た方を指差しロープを切リ始めた。
そして最後の1人が終わると肩を貸し一緒に出口に向かいドアまで後数mの所で女性が躓きリーナも巻き込まれて転んでしまい急いでリーナは女性を起してドアに向かおうとした時に天上が崩れ落ちてきた、リーナは天上に押しつぶされると目を瞑ってしまったが一向に何も落ちてこなかったのでゆっくり目を開けると目の前に大きな手が天上を支えていた。
「早く出るんだ」
天上の上から女性の声が聞こえるとリーナは女性を担ぎドアから脱出し安全な場所まで行くと女性を下ろし、そして振り向くとそこには木の人形が天上を支えていている姿があった。
「それで最後だカルラ、逃げた賊がいるからベルンハルトを追ってくれ」
レアンと兵士が走ってリーナに近づいて来るとレアンはそう叫び、木の人形は「了解した」と言い天上を離しゆっくり走り出し行ってしまった。
「兵士は住民の手当てを・・大丈夫かリーナ?・・手を怪我してるじゃないか」
レアンは兵士に指示を出すとリーナの近くに寄り血がでている手を見つけた。
「へへへ、ナイフ忘れちゃって」
「ちょっと待ってろ」
レアンはそう言うと腕の装備を外しシャツの袖を強引に破るとリーナの手に巻きながら。
「ありがとう、これで血は止まる」
「大丈夫です、これくらいなら魔法で治っちゃいますから」
リーナは回復の魔法を何度か唱えたが効果が無かった。
「あ、あれ?魔法が効かない・・なんで?」
そう言い終わると同時に気を失ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます