4-2-1 死に戻り

 夕食後、私はシリーを自室に呼び出した。


「シリー、ちょっと聞きたいことがあるの。二回目、ってなんだと思う」

「二回目、ですか。随分と漠然としていますね」


「今日枢機卿の孫のラン司祭から言われたの」

「神託ですか。ということは、ゲーム関係ですね」


「ゲームで、二回目。もしかすると。『鑑定』」


 私は、自分の過去を鑑定した。


「そういうことか」


「何かわかりましたかお嬢様」

「私が学院の入学式典に出席したのは、今日で二回目だわ」


「どういうことですか」

「一回目は学院入学後二日目にヒロインが死亡しているの。そしてその直後、時間が、学院の入学式典終了後に戻っているわ。所謂、死に戻りね」


「そんなことが起こっていたのですか」

「何か違和感のようなものを感じていたけど、そのせいね。一回目の記憶がなかったけれど、鑑定で記憶が確認できてよかったわ」


「そうですか、私は何も感じませんでしたが」

「シリー、あなた、仮にも女神なのですから、あなただけ記憶が残っていても不思議ではないのよ」


「そう言われましても。無いものは無いです」

 私は呆れて言葉も出ない。


「そうなると、ヒロインに記憶が残っているかが重要ね」


「直接、本人に聞いてみますか」

「聞かなくても、鑑定すればわかりそうな気もするけれども、今日の様子からみて、多分、記憶があるわね」


「様子が変でしたか」

「ええ、一回目と違う行動を取る前に考え込んでいたわ。取った行動は違ったのだけれども、結果としては大差なかったわ」


「そうなると、明日、またヒロインは死にますかね」

「それは、どうだろう。できれば阻止しないと、このまま同じ時間の繰り返しになってしまうわ」


「ちなみに、なぜヒロインは亡くなられたのですか」

「うーむ。トレス様が私を殺そうとして、巻き添えを食らって死んだ。みたい」


「トレス様がお嬢様を殺そうとしたのですか、どうしてですか」

「多分、ヒロインを虐めたから。それと、自分の秘密がバレないように」


「そうなると、今後も狙われ続けることになりそうですね」

「そうなるわね。何か良い解決法はないものかしら」


「直接話し合われてはどうでしょう」

「それもね、どうだろう。ヒロインを虐めている理由が、イベント強制力だと説明しても信じてもらえないわよね。きっと。それと、こちらが秘密を知っていると、確信しているようすでもなかったから、返って藪蛇になりかねないわ」


「そうですか」


「とりあえず明日はようすをみてみるわ。一回目はトレス様とヒロインが一緒に行動していたけれど、今日は別々に行動していたし。何か変わるかも。仮にヒロインが死んでも、多分また元の時間に戻るだろうから」


「死ぬのが自分じゃないといい加減ですね」

「仕方がないじゃないの。人は誰しも自分が一番なのだから」

「そんなことを言っていると、エンジンポイントが減りますよ」


 エンジンポイント。そんなものがあったっけ。すっかり忘れていたわ。


「わかったわ、できる限りヒロインが死なないように助けるわ」


 しかし厄介だ。近づけば虐める可能性があり。かといって、遠ざかれば死んでしまう可能性がある。

 兎に角、ヒロインが生きていなければ先に進めない。多少のことは諦めてもらうほかない。


 そうなると、いつトレス様に命を狙われるかわからない。あっちを立てれば、こっちが立たず。とはこのことである。


 そういえば、魔銃なんてものがあったのか。前回は突然のことで鑑定できなかったが、次は忘れずに鑑定して、魔術回路をコピーしよう。

 何か、毒物も使っていたから、それも鑑定しておかなければ。


 兎に角、面倒なことになったものである。

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